第19話 雷鳴
「初級の技しか使えなくて、しかも師匠の言う才能の開花なんてとても………」
「大丈夫だよ。初級の技とは言え、魔王にも聞くはずだ。それにターニャに眠る才能だって戦ううちに開花するかもしれない」
「そ、そうですかね……」
「大丈夫。ラーニャに負担をかけるようなことには絶対に俺がさせない」
彼女を励ますと、少し気が晴れたような顔を見せた。
これなら大丈夫だろう。
「一つ重要なことを言ってませんでした。バートリー家は吸血鬼の一族です」
「能力は血を操ったり、コウモリを操ったりできます。気を付けてください」
「ちなみに弱点とかは?」
「日光等の弱点は克服しています。ただ、エクソシストの技や聖水は効きます。ラーニャは初級の技しか使えないようですが、かなりのダメージを与えられるはずです」
「では、そろそろいきましょうか」
俺達は店を出て、アリエルの案内で館へと向かう。
結構歩いて館へとたどり着いた。館は蓬莱山の麓の方にあった。
この辺はまだ来たことがないから新鮮な景色だ。
館はかなり大きく、でかい門がある。
胸に手を当て、深呼吸をする。
今回は苛烈な戦いになる。しっかり気を引き締めなければ。
「……………よし、行こう」
「では、門を開けます」
アリエルが大きな門を開く。
造りが古いのか金属音を立てている。
「開きました。2人ともこっちです」
再びアリエルの案内で館へと入っていく。
庭も結構広いな。噴水もある。
館の扉を開くと、入ってすぐの所に2階へ続く大きな階段が見える。
「兄様の部屋はこっちです」
「……待った、誰か来る」
どこからか人の気配がする。
どこだ?横か?後ろか?いや……
「上だ!」
俺はすぐに回避する。
俺目掛けて飛んできたナイフが床に刺さる。
幸い二人とも避けていたし、俺にだけ飛んできていた。
「上にいることによく気づきましたね、さすがです。八雲様」
!?さっきまで天井にいたのに今度は床から出てきたぞ!?
おそらく物をすり抜けたりする能力なのだろう。
だが、戦うとなったら相当に厄介だ……
「メリア、あなた一体なぜこんな事を!?あなたが居るってことはダリアも居るってことね。ダリアはどこ!」
「私ならここに」
アリエルの背後に少し歳をとった男が現れた。
彼もメリアと同じ能力があるようだ。
「申し遅れました。私、メイド長のメリアと申します」
「そして、私が執事長のダリアと申します」
「私達は兄様を助けに来たの邪魔しないで!」
「……申し訳ありません、お嬢様。私達はあなたのお兄様である、ハルナード様の命には逆らえないのです……」
「ですので、我々はここを引くことができません」
「くっ……」
どうやらやるしかないようだ。
俺は少し前へ出る。
「八雲くん……ごめんなさい、不甲斐なくて……」
「いいんだ。後は任せて」
俺は短剣を手に取り、そっと抜いた。
だが、迦具土のときとは違う感覚だ。
意識が遠のいていく
……迦具土の言っていた感覚と同じだな。久々の肉体とはいいものだ。
「八雲くん……?」
「八雲ではない。我は建御雷だ」
「二人は下がっていろ」
「噂は本当だったようですね、八雲様は神の力を使われると」
「こちらも手加減は致しませんよ!」
二人が一斉に向かってくる。
悪しき者に忠誠を誓う者共に我が雷の鉄槌を下さん。
我が雷で目を覚まさしてやる。
「ふん」
腕を振り下ろすと、空から天井を突き破り、二本の雷が降ってきた。
そしてそれは、メリアとダリアに直撃し、二人は気絶してしまった。




