第1話 人里
俺と穂波は人里へ行くために森を抜け、山を下り始めた。
そんな中で俺は穂波に問いかける。
「ちなみに穂波は最初からこの世界にいたのか?それとも俺のように他のとこから突然やってきたのか?」
まず俺が一番気になっていることを聞いた。すると彼女はこう答えた
「私もここに突然やってきたけど、元の世界の事は全然覚えてないの。覚えてるのはこの名前だけ。
もしかしたら、神代と同じ日本というところから来たのかもね。」
と彼女は答えた。なるほど、だから彼女は妙に日本人っぽいのに日本のことを知らないわけか。
自分の中で納得した。彼女は俺みたいに現代人のように見える。
そこから推測するに、この世界は地球と違って時間の進みが遅いのだろう。例えばこの世界での一日が元の世界での1時間とか。
そんなことを考えていると、彼女が突然思い出したかのようにこういった。
「あ~~!!私この世界の案内人なのに全然この世界の説明してなかった…」
そう落ち込む彼女に俺は「今からでも大丈夫だから」とフォローを入れた。
「そ、そうよね。では、改めて…」
「説明しよう!!この世界は美しい自然、美味しい食材、人の街などが揃っていて、天狗、妖怪、更には吸血鬼など、おとぎ話出でてくるような種族もいてすべてが非日常の体験!そんなこの世界を人々は "理想郷"
や "桃源郷"と呼ぶ…と、言った感じよ。」
と良い説明をしてくれた。"理想郷" "桃源郷" 確かにこの風景はここにしかない。
これを見たらそう思うかもなと考えていると、山を下り終え、少し先には人里のようなものが見えてきた。
「この世界には色々な里や町があるのだけれど、今から行くのは桃の街と呼ばれているところよ。」
"桃の街"どんなところなのだろうか、温泉があるといいなとか、ご飯はどんな感じだろうかとか、内心ワクワクしていると
「到着!ここが桃の街よ!」という彼女の目の前には思わず、うなってしまうような街の風景が広がっていた。
和風の家が立ち並び、江戸時代のような店が大通りに沿って立ち並んでいる。それなのに街灯にランプがあったりする。和と洋を組み合わせた街だった
思わず立ち尽くしていると「何突っ立てんの、早く行きましょ!」と俺の手を優しく掴んで再び歩き出す。
街の商店は色々ある。呉服屋、蕎麦屋、魚屋、八百屋など色々な店が立ち並んでおり、それなりにどの店も繁盛しているようだ。しばらく歩くとある旅館で歩みが止まった。
「ここが桃の街で私が一番気にいってる旅館なの。今日はだいぶ日も落ちてきているしここに止まりましょ。」
と彼女が言い、中に入り、彼女が料金の支払いなどを終えると、桃の間と書かれた札のついた鍵を渡してくれた。
「桃の間は廊下を右に曲がってすぐのところにあるから。私は二階の部屋だからも行くね、じゃあまた明日。」
といって彼女は二階に行ってしまった。俺も彼女に言われた通り進むと、桃の間と書かれた札のついた部屋についた。
鍵を開け部屋に入ると、部屋は普通の部屋だった。床の間には桃の花が生けてある。なるほどだから桃の間かと思った。
机の上には旅館についてと書かれた薄めの書物が置いてあった。書物には旅館についてや温泉の開放時間、食堂の開放時間についてかいてあった。温泉は24時間開放。食堂は朝6時から9時まで、正午から2時まで、夜18時から21時までと書いてあった。
時計を見ると、18時30分を指していた。とりあえず温泉に行って、食堂にでも行こうかと思ったが、知らない世界に来て、1日中歩き疲れたのだろうすごい睡魔が襲ってきた。
まぁ食事と風呂は明日の朝でもいいかと思い。布団を敷き、眠りについた。