第15話 居場所
「何で4人なのにクインテットにこだわったんだ?4人なら"カルテット"でよかっただろ?」
「……」
途端、沈黙が流れる。聞いちゃいけないことだったかな……とか考えていると春彦はいつもの調子で
「まっ、細かいことは気にせず今は遊ぼうぜ!」
と言ってきた。まぁ、遊ぶか!
しばらく春彦たちと遊んだが、一人一人ゲームがめちゃくちゃ上手い。普通に遊んで楽しんでいた俺ぐらいの力じゃ手も足もでなかった。
春彦は格ゲーが上手かった。10回やって全敗。プロでも通用しそうなプレイスキルだった。
次に夏目。夏目はレーシングゲームが上手かった。俺とのタイム差は2分以上の試合がほとんど。めっちゃ上手い。
次に秋吉。秋吉はクレーンゲームが上手かった。本人曰く「コツさえつかめば簡単だよ」とのこと。いや、そのコツをつかむのがムズいんだっての。
最後に冬瀬。冬瀬はメダルゲームが上手かった。彼女は"出る台"と"出ない台"を見極めていた。そして運が良かった。かなりの頻度で大当たりを出している。普通にすごい。
結構遊び、みんな満足したようすで店を立ち去る。久々に遊んで俺も結構楽しかった。それぞれ帰路に着く。
「あたしらはこっちのほうだから」
夏目、秋吉、冬瀬と別れる。春彦と俺は同じ方向だから必然的に二人きりになる。
「俺たちが5人にこだわる理由、知りたいか?」
「あ、ああ…出来るなら…」
「ははは、どのみちお前には知っておいてほしい話だしな」
「お前がここに来る1年ぐらい前、お前と同じように地球の、それも日本から来た奴がいた。」
「そいつともすぐに打ち解けて、一緒に遊ぶ仲間になっていた。そして5人で毎日のように居るよになるとある日街の人から『あんた達5人組の名前でも考えたら?』と言われた。そうして春夏秋冬クインテットができた」
「けど、潮目が変わったのが半年前。ある日たまたま地球とここを繋ぐ門が開いた。ただ、そいつには帰るつもりはなかった。そいつは『あの世界には夢がない』とたびたび言っていた。だから帰る気にならなかったんだろうな」
「閉門も近くなったある日、そいつは急に元の世界に帰ると言い出した。理由を聞いたんだよそしたらそいつは『見ちまった』と言ったんだ。そんとき、そいつは泣いてたよ。だって……」
「辛いなら全部話さなくてもいいんだぞ…」
「いや、気にしないでくれ」
「そいつはな、見ちまったんだよ。自分の両親が必死に自分を探している所を。だから泣いていたし、帰ると言い出した。ここの時間の流れは他と比べても遅いらしい。ここの半年が地球の2ヶ月ぐらいと言う話を聞いたことがある」
「けどな、2ヶ月も自分の大切な息子が居なくなったら両親も心配する。もちろん、そんな親ばかりではないというのも知っている。けど、そいつは親に恵まれた。そして、そんな必死な両親の姿を見て心が動いたと言っていた」
「そいつが居なくなるとき俺達はそいつと約束したんだ。『絆は永久不滅』だって。そして、そいつは最後に『俺と同じようにここに来た異世界人の居場所となり、そいつがまた来たときの居場所となること』という約束を出してきた。俺達はしっかりその約束を結んだ」
「俺達がカルテットと言い張り続けているのは、お前のように異世界人が来ても"5人目"としての居場所があるように。そして、また戻ってきてもいいように"5人目"としての居場所があるように俺達は"5人目"をわざと開けていたんだ」
「まぁ、5人目が異世界人で埋まって、他にも入りたい異世界人がいたらいれてたし、別の居場所のないやつをいれても良かったんだが、そんなやつはそうそういなくて、お前が二人目だ」
とか言いながらいつもの調子ではははと笑っている。
「俺は、神社とかここ以外にも居場所があるが良かったのか俺で?」
「まっ、居場所なんて多い方がいいだろ?」
「ふっ、確かにな」
やっぱり、春彦と友達で本当にほんっっっとうに良かったと思っている。こういうところがみんなに好かれる由縁なんだろうなと思っていると、春彦が手を差し出してくる。
「お前がもし、元の世界に帰っても、絆は永久不滅。もし、戻ってきてもここが居場所。約束な!」
「ああ、約束だ!」
俺達は熱い握手を交わす。今日は一生忘れることのない大切な日となった。




