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パスティーシュ  作者: ふりまじん
プロローグ
6/21

懐中時計

動揺する私の為に、モリアーティさんは、ブランデー入りのミルクティを頼んでくださいました。

ミルクをたっぷりと先入れにするように指示して…です。


それで、私、気絶したい気持ちを何とか保つ事が出来たのでございます。


ジョンは…急患の以来の為に行動を別にしなければいけない場面で、大切な時計をホームズ先生に預けたのです。

懐中時計を返しに来る約束をしたら、誠実なホームズ先生は、ジョンの約束を守るために無茶な行動はとらないと思ったようです。

ジョンも焦っていたのだと思いますわ。だって、こんな恥ずかしい落書きが書いてあることも忘れて渡してしまうのですから。

そして、その事は著作には書き記しておりません。

知っているのは…ホームズ先生と、失踪時にホームズ先生と対峙(たいじ)した人物だけだと想像できます。そうです。彼は…本物のモリアーティ。


「心を乱してすいませんが、滝に落ちてしまいましたので、オーバーホールをしました。とても…素敵な旦那様ですね。」

モリアーティさんは、少し寂しそうにテーブルに視線を落としました。


その時、ふと、短い筆跡で性格判断をするホームズ先生が思い浮かびました。

私との結婚に浮かれるジョンの誠実な愛を、この老紳士はあの短い文章に見たのかもしれないと思いました。そして…ホームズ先生も(///ー///)


なんだか、顔が火照って、いたたまれない気持ちになりました。が、次の瞬間、そんな事はどうでも良くなりました。

だって、滝に懐中時計が落ちたなら、それを持っていたホームズ先生も落ちてしまったに違いありません。あの…切り立った谷底に落ちたとしたら…生きてはいない…


嫌な予感が胸を駆け抜けて、悲しい気持ちになりなりました。

あんな滝に落ちたなら、いかにホームズ先生でも生きて戻ることは不可能です。

私は、ジョンと行ったライヘンバッハの滝を思い出し足がすくむ気持ちになりました。

そして、重い気持ちで前を見ると…全く別の回答が、そこでミルクティを飲んでいるのが見えたのです。

そう、この、目の前の老紳士がミスター・モリアーティ本人だとして、ジョンの懐中時計を手にしているなら、ライヘンバッハの滝から生還したに違いないのです。

失礼かもしれませんが、どう見ても、モリアーティさんはホームズ先生より年配で、体力もあるように見えません。

この老紳士が生きているなら、ホームズ先生だって生きてるに違いないのです。

私は、モリアーティさんに聞きました。

「それでは…ホームズ先生は、ホームズ先生も、生きていらっしゃるのですね!」


私の質問に、真剣な眼差しで彼は答えました。

「今のところは死んでいる。」と。


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