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パスティーシュ  作者: ふりまじん
新生活

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18/21

白鳥の騎士


混沌(こんとん)とする意識の中でホームズ先生がバイオリンを弾いていました。

スカボロフェア…


なぜ、この曲なのか…

物悲しい旋律に…何やら懐かしさが込み上げながら聴いていました。


小人が歌います。


恋人に会いたいかい?

パセリ、セージ、ローズマリーにタイム


その想いを歌にして、声を出さずに歌えたら

恋人は君のもの


小人が歌います。

(かたわ)らでホームズさんがバイオリンを弾いていました。


意識の(もや)がわいてきて…私は目を覚ました


「おはようございます。お嬢様。」


それは、ビオラのような上品な晴れやかな声で、寝ぼけていた私は、それは夢では無いかと思いました。

だって…ああ、ハドソン夫人、貴女も私の立場なら、きっと、夢じゃないかと目を擦るに違いありませんわ。

上半身をベットから起こした先に見えたのは、

ローエングリーン!ああ、まるでワーグナーの物語から抜け出てきたような美しい王子さまなのですから。


私、あまりの事に思わず布団をかぶって二度寝をしようとしましたの。


だって、その日の寝巻きは、あまり素敵な物ではありませんでしたし…夢でも恥ずかしかったのですから。


目を閉じましたわ。でも、夢のはずなのに眠れませんの。

ドキドキと心臓の音ばかりがして。


で、気がつくと、布団を結構、しっかり叩かれて、私、思いきって布団から起き上がる決心を決めましたわ。


モリアーティさんがなんと(おっしゃ)られても、私は、ジョンの妻なのですから。


思いきって立ち上がって、私、勇気を出して言いましたの。

「淑女の部屋に、勝手に入るのは無作法ではありませんか!」

と、そして、急いで、ベッドの手すりにかけておいたナイトガウンを着ましたわ。

女学校時代、一番センスの良かった友人が結婚祝いにジョンとペアでプレゼントしてくれたサセックス産の羊毛のガウンで、ピンクベージュの柔らかな色合いが、私の肌を美しく見せてくれる、と、ジョンが誉めてくれたものでしたわ。


それを羽織(はお)って、私、少しだけ自信を取り戻しましたの。


お笑いになられるかもしれませんけれど、あまりにも美しい男性を前にすると、ロマンス小説の主人公の様に恋に落ちる気持ちではなく、センスの良いライバルに出会ったような、変な対抗心が膨らんできますの。


ミセス・ハドソンも、そんな気持ちになる時がありますか?


それとも、私が変なのでしょうか…


何しろ、今まで見たこともない…

本当に、幻のように美しい男性だった事はご理解くださると嬉しいですわ。

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