バットエンド
乙女小説…
それは、未婚の女性と少女の夢の恋物語…
ハイスペックでしっかりとした男性とのラブロマンス…
それを私に行えと、ミスター・モリアーティは仰るのでしょうか?
「む、無理無理無理!私、結婚していますもの。ロマンスなんてそんな、そんな事、ジョンの他に出来るわけはありませんわ!」
思わず叫んでしまいました。
それを聞いてミスター・モリアーティは驚いた顔をして私を見て、忍び笑いを残りのミルクティで飲み干しましたの。
その時は呆れて、私も怒りが込み上げてきました。
少し怒った私の顔をモリアーティさんは、父親のような優しい笑顔で見つめて説明をしてくださいました。
「何か、誤解をさせたようだね?
確かに、貴女にロマンスの世話をして欲しいと、そう考えてはいましたが、それは貴女の話ではありません。」
落ち着いたモリアーティさんの説明に、急に恥ずかしさが込み上げてきました。
「では…私は何を?」
私は…顔が熱くなるのを感じました。
「とても大切な役割だよ。それは、ミセス・ワトソン、貴女にも関係してくる。」
「私にも…?」
事情が飲み込めず、私はただ、モリアーティさんを見つめました。
モリアーティさんは、はにかんだように笑って、紅茶のお代わりを頼みました。そして、それが来ると、私に飲むようにすすめ、話を始めました。
「そう、貴女にはある男性を幸せに…」と、ここで私に右の人差し指を向けて「勿論、貴女にロマンスの相手を頼んでいるわけではありません。」と、念を押してから、話の続きを始めたのです。
「幸せにしてほしい男。彼の名前はセバスチャン。彼は、ホームズくんの画策で数年後には全てを奪われ、賭け事で生活するしかなくなる人物なんだ。」
モリアーティさんは、まるで占い師のような口調で未来の事を私に話しました。
「セバスチャン…疫病の守護聖人…聖セバスティアヌス。」
思わず女学校の時代の日曜学校を思い出しました。
「そうかね?でも、彼は…セバスチャン・モランは、元軍人で、到底、誰かを守るような存在ではないよ。」モリアーティさんはそう言って、少し考えてから「いや、私の事は守ってくれていたか。」と、独り言のように呟きました。
「その…セバスチャンさんがどうしたのでしょうか?」
私はこの時、モリアーティさんが悪い組織の人だと思い返しました。そうして、その悪い組織の人物だとするなら、ミスター・モランもまた、悪人ではないかと不安になりました。




