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大本営設置

2000年3月14日ソビエト連邦首都モスクワ郊外の廃工場

午後3時


「……んっ……っ……」


強烈な頭痛と共にカナは目を覚ました。


「BIGMOTHER、お目覚めかしら?」

「……貴女は!?」


カナは目の前の人物に驚きの声を上げた。

そこにはカナが救出すべき人物である奥菜恵諜報員が、不敵な笑みを浮かべながら立っていた。


「何で貴女が……」

「本国では私がソビエトに捕まったと言われてるんでしょう?」

「……」

「そしてTTZS長官が九尾狐に救出を要請し、BIGMOTHER貴女が来たってわけ。」

「貴女の目的は?」


カナは奥菜諜報員に尋ねた。


「目的?そんなの簡単じゃない。」

「……」「貴女の命よ!!」


奥菜諜報員はそう言うと、カナを睨み付けた。


「何で私が。」

「忘れたとは言わせないわよ!!このメス豚!!」


奥菜諜報員はカナの頬を力強く殴った。後ろ手に拘束され椅子に固定されていたカナは、殴られた衝撃で床に倒れた。


「貴女に私の妹は殺されたのよ!!」

「妹?」

「5年前よ!!」


奥菜諜報員はそう言うとカナの頭を踏み付けた。


「5年前の1995年11月3日。貴女はサンフランシスコに潜入してたわね?」

「えぇ。」

「サンフランシスコでの貴女の目的は、アメリカ連邦が開発中の新型中距離弾道弾の破壊だったわね。」

「そうよ。」

「貴女はそこで弾道弾を破壊し、研究施設も爆破したわね。」

「……」

「気付いたみたいね。そうよ、妹は研究施設に居たの。TTZSの諜報員として研究員に成り済まして潜入調査中だったの!!」

「!?」


カナは衝撃を受けた。

カナが行った作戦は簡単な作戦であった。アメリカ連邦が開発中の中距離弾道弾を完全に破壊するのが目的であった。もしこの中距離弾道弾が完成すれば、ハワイから発射すればトラック鎮守府が射程距離に入ってしまう。そうならない為にも、中距離弾道弾の破壊は急務であった。そこで時の政府と九尾狐はBIGMOTHERであるカナの派遣を決定した。そしてカナは見事に研究施設への潜入に成功し、中距離弾道弾の破壊を成し遂げた。しかしカナはそこで作戦には無い行動を起こした。研究施設の爆破を行ったのである。確かにカナの行動は非難されるべきものでは無い。研究施設を爆破し研究員を殺害する事により、中距離弾道弾の開発を完全に頓挫させる事が出来るのである。カナの行動は帰還後に査問会議で議論されたが、行動は結果的に国益に沿う決断だったとされ不問とされた。TTZSは諜報員が爆発に巻き込まれ死亡した事を政府に報告したが、政府は政治判断をTTZSに求めその報告を揉み消した。その死亡した諜報員が奥菜諜報員の妹であったのである。


「いくら政府が不問にしても、私は許さない。妹は祖国の為に働いていたのに、その祖国に裏切られたのよ!!」

「申し訳ない事をしたわね。」

「……」


奥菜諜報員はカナを床から起こした。


「けど私は間違った事はしていないわ。私の判断が祖国を救ったのは確かよ。」「まだそんな事を!!」


奥菜諜報員はカナの腹を殴った。


「……全く。これだから政府の犬はめんどくさいのよ。」

「フフ、ありがとう。」

「まあいいわ。私にはまだやる事があるからね。」

「やる事?」


カナは奥菜諜報員の言葉に顔を上げた。


「どうせ貴女は死ぬから教えてあげるわ。私は妹を殺した貴女を殺して、大日本帝國にも復讐するわ。女帝と総理を殺せば、大日本帝國も崩壊するでしょ。」

「!?そんな事を!!」

「どうするの?また祖国を守る為に私を殺す?」

「最低ね。」

「フフフ、それじゃあね。貴女は私が殺したいけど、私にはまだやる事があるからね。部下に任せるわ。じゃ、お元気でね。」

「待ちなさい!!」


奥菜諜報員が部屋から出て行くのと入れ代わりに、部下らしき人物が88式自動小銃を構えて入って来た。



「あ、貴女がBIGMOTHRね。」

「そうよ。」


奥菜諜報員の部下は酷く緊張していた。


「さ、さい、最後に何か、た、たの、頼みた、い事はある?」

「葉巻を吸いたいわね。私の小物入れに入っているわ。」

「小物入れ?」

「そこの机よ。」

「あっ。」


奥菜諜報員の部下はカナの言葉に、小物入れへ駆け寄った。そして葉巻を持って、カナに近付いてきた。


「ど、どうぞ。」

「……別に良いわ。」

「な、なぜ?」

「手が使えないからよ。」「わ、わかった。」


そう言うと葉巻を床に置き、88式自動小銃を構えた。しかしその手は緊張で震えていた。


「よく狙いなさい。貴女は1人の女を殺すのよ。」

「……」

「……」

「……」

「安全装置が掛かったままよ、新人さん。」

「し、新人!?私はこの道20年の玄人よ!!」


カナの挑発に声を裏返して反論する部下であったが、やはり気になったのか安全装置に目を向けてしまった。カナはその一瞬を見逃さずに、部下に全身を使って体当たりをした。







同時刻

大日本帝國帝都東京帝居


遂に大本営が設置された。大本営は大日本帝國が戦時に設置する大日本帝國軍最高司令部であり、此処で女帝陛下と政府及び軍部が戦争の大方針を決定するのである。そしてその大方針は海軍なら大本営海軍部命令(大海令)、陸軍なら大本営陸軍部命令(大陸令)、空軍なら大本営空軍部命令(大空令)となる。陸戦隊は未だ法的には海軍傘下である為に、大海令に含まれるのである。

そして大本営設置により陸軍参謀総長・空軍統合総長は『幕僚長』の肩書きが加えられる。海軍軍令部総長は幕僚長では無く『統合幕僚議長』の肩書きとなる。文字通り海軍軍令部総長が大本営の議長役となるのである。

大日本帝國の戦争準備は整ったのである。







同時刻

地中海エジプト沖35キロ地点海上


ここに大日本帝國海軍連合艦隊第7艦隊と4個空母打撃群、そしてTTOの海軍艦隊が集結していた。開戦が明日の午前0時となっている為、全艦は戦闘体制を採っていた。




第7艦隊旗艦超弩級イージス原子力戦艦大和長官室


大海令は既に連合艦隊総司令部に送られており、その命令がDSS(電子送文通信装置)により大和に送られてきた。


「大海令第1号。第7艦隊は開戦と同時にエジプトへ砲撃とミサイル攻撃を開始し、大鳳空母打撃群・瑞鳳空母打撃群・天鳳空母打撃群・皇鳳空母打撃群は開戦と同時に空襲を敢行せよ。なお今次戦争に於いて統合軍は『中東統合軍』とし、第7艦隊司令長官を中東統合軍総司令官、第8方面軍司令官を中東統合軍総参謀長とする。以上です。」


燕条寺司令長官と里中艦長以下艦隊首脳は諏訪部参謀長の大海令読み上げに、大きく頷いた。なおこの読み上げは全艦隊にも同時通達されていた。統合軍の編成は第二次世界大戦後、メキシコ戦争による。大日本帝國軍はメキシコ戦争開戦にあたり海軍・陸軍・空軍・陸戦隊と4軍を投入した。しかしそれは現場での指揮系統の不統一による混乱を生じさせた。先の第二次世界大戦でも大日本帝國軍は空軍は未だ戦略空軍であったが、4軍を有しその戦争に突入していた。しかし矢張り混乱は生じ、後の課題として残ったのである。そしてメキシコ戦争である。4軍の指揮系統不統一は目に余り、いくら大本営からの大方針が下っても大した連携は、採れなかった。そこで考案されたのが戦時特別編成であり、『統合軍』が組織された。これにより戦時だけとは言え、指揮系統の統一が成され命令はしっかりと行き渡るようになったのである。そして今回の第5次中東戦争も中東統合軍が編成されたのだ。



「これで準備万端。後は開戦を待つのみ。」


燕条寺司令長官は力強く言い切った。






同じ頃大陸令と大空令も陸軍と空軍にも届き、大方針と中東統合軍編成が通達されていた。これで後は燕条寺司令長官の言う通り、開戦を待つのみであった。





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