クーデター
あけましておめでとうございます。
本年最初の投稿でございます。
午後12時
エジプトでのクーデター発生と6ヶ国協議中の特使暗殺の報は即座に世界中に広がった。この突然の事態に6ヶ国協議は当然ながら中止となり、特使達はホテルで待機となった。しかしイスラエル特使だけはシルヴィア首相の命令により帰国した。この事態に世界は中東事変の収拾は困難であるとし、更にエジプトでのクーデターにより事変が事変では無くなり戦争に勃発する事が最悪の事態として危惧されている。
同時刻
大日本帝國帝都東京霞ヶ関首相官邸地下1階危機管理室
大日本帝國はこの非常事態に緊急の帝國安全保障会議が召集された。
「……この事態にシルヴィアはどう動く?」
綾崎総理の冷たい言葉に危機管理室は静まり返った。本当に怒った時には逆に冷静である。この時ばかりは誰しもが怒鳴られた方がマシと思っている。
「国内での批判が強まっているのでエジプトの動きによって、若しくは自国の判断によりエジプトに侵攻する。この2つが今のところ想定されます。」
星野TTZS長官はそう言うと視線を綾崎総理から反らした。それは星野TTZS長官に限らず誰しもがそうしていた。
「特使まで殺害するとは…ロース、やるわね。」
綾崎総理の言葉は未だに冷たいままであった。ナターシャ首領を暗殺したロース陸軍本部長は自らが首領となった。そして6ヶ国協議中の特使も殺害したのである。その実行犯は直後に取り押さえられたが、ただ端に5万円で殺害を頼まれたと答えた。エジプトでの5万円は0を1つ付け足した数字になる為、実行犯は受け入れたと思われる。
「……帝居に行くわ。」
綾崎総理はそう言うと危機管理室を出ていってしまった。残された閣僚達はただそれを見送るしか出来なかった。
同時刻
イスラエル首都エルサレム首相官邸地下1階コマンドルーム
シルヴィア首相は今回のクーデターがエジプトの総意として起きたと感じていた。
「この事態に我が国が執るべき道はただ1つです。エジプトに侵攻する。これだけで問題は解決します。」
ロズリン内務大臣はそんなシルヴィア首相に詰め寄っていた。それにはキャリー国防大臣も賛成していた。
「しかし今この時点で戦争を決断するのは国内外の不安を高めるだけです。大日本帝國とソ連の超大国が戦争回避の6ヶ国協議に合意し、実施したのをお忘れですか?それをクーデターが発生し特使が暗殺された為に侵攻・戦争は危険過ぎます。」
「我が国は中東に少なくない影響を経済的にも政治的にも、そして軍事的にも与えます。それを考慮して決断をしないと大きな混乱を招きます。」
コリー外務大臣とグミ商工大臣は戦争には反対であった。
「エジプトは自らの首領を暗殺してでも戦争を決定したのです!!それに我が国の国民も戦争を回避出来ないと思っています!!現に野党は決断をしない事を追及しており、国民もそんなシルヴィア首相の不支持を高めています!!」
ロズリン内務大臣はシルヴィア首相に語気を強めて言い切った。
「……」
「首相!!今すぐご決断をして下さい!!その態度は1国の指導者らしからぬ物です!!」
「内務大臣!!それは言い過ぎです!!謹んでください!!」
「何を言いますか!!貴女のその態度が腰巾着なの!!」「それは聞き逃せません!!人を腰巾着呼ばわりするのは!!貴女こそ……」
「止めなさい!!」
ロズリン内務大臣とコリー外務大臣の言い争いをシルヴィア首相は怒鳴り付けた。
「今は非常時です。閣僚が言い争っている場合ではありません。」
「すいません。」
「申し訳ありません。」
シルヴィア首相の言葉にロズリン内務大臣とコリー外務大臣は謝罪した。
「話を続けます。」
シルヴィア首相の言葉に、閣僚達は気を引き締め直した。
同時刻
ソビエト連邦首都モスクワクレムリン宮殿会議室
プーチン女帝はスタフカメンバーを集め、会議を開いた。
「この状況は我が国にとって有意義に働く事になる。」
プーチン女帝は全員に向かって宣言した。
現在の状況は非常に危機的であり、謂わばチキンゲームであった。『誰が引き金を引くのか』これが世界中が注目する現在の状況である。そしてそれがプーチン女帝に言わせてみれば有利に働くというのである。
「この事態にイスラエルは必ず侵攻を行うわ。そうなれば大日本帝國はそれを黙認するか、現状維持に固執するかでしょう。大日本帝國も戦火が拡大するのは阻止したい筈よ。」
プーチン女帝の言葉に全員が頷いた。
「同志大元帥の言われる通りです。この事態はイスラエルとエジプトの戦火を広げ、中東に世界中の注意が集中します。その状況で二大ラインへ侵攻すれば、必ずや勝利出来るでしょう。」
バーミントン統合参謀本部総長の言葉に、ソ連の今後の戦略が大まかに含まれていた。ソ連にとってもエジプトのイスラエル侵攻は予想外であった。しかしソ連はそれを利用し、東側連合国への一斉侵攻を計画しているのである。
勿論今の話で全ては把握出来ないが、これからのソ連は大きな決断をする事になると思われる。
同時刻
世界全体
物事は時として意外な一面を見せる時がある。ある一点からだけで見ていると重大な物を見落としたり、受け取り方が変わったりする事がある。その為に物事はあらゆる面から見つめ、既成概念に捉われない事が大事なのである。
それは世界情勢にも同じ事が言える。かつては情報が世界に伝わるのは時間が多く必要であった。しかし今となっては地球の真裏で起こった事が瞬時に伝わるようになった。
時代は変わったのである。情報が瞬時に伝わり情報が氾濫する時代。しかしそんな時代だからこそ流れる物を見るだけでなく、広い視野で見なければならないのである。
……何が言いたいかと言うと、現在の状況を整理する為に今から俯瞰的に、この物語を見ていきたいのである。もし世界地図か地球儀があればそれを見て頂きたい。
まずは大日本帝國である。海軍の総兵力は観艦式が終わったばかりで、横須賀に寄航している。東側諸国の海軍も寄航し、補給中である。
そしてBIGMOTHERとノヴァはシベリア鉄道に乗っており、明日3月4日に終着駅のシベリアに到着する。これにより作戦が始まる。
それ以外は名前は出たが動きがない為、これを省略する。
各国の兵力は現在のところ警戒体制に突入して待機している。イスラエルとエジプトはそれには除外される。
以上が今の状態である。これに今後の動きがある。
……大層な事を言っておきながら結局これだけで、作者自身も驚いています。