6ヶ国協議
この小説の外伝を更に1つ投稿します。
2000年3月3日午前2時
アメリカ連邦ニューヨーク
ニューヨークは今夜も眠らない。光り輝くネオンの光は今日も人々を酔わせ惑わせ、そして狂気に走らせる。それはだが、何時もと変わらない光景でもあった。
クラブビューティーネロン
ここにニューヨーク最大のマフィアに成長した『クイーンファミリー』の幹部が集結していた。クイーンファミリーは僅か3年でニューヨーク最大のマフィアに成長した。そのファミリーのボスはユーゴスラビア人のサンドラミディアムである。サンドラは元軍人でその経験を活かしてマフィアの頂点に君臨した。その傍らにはサンドラの姉のエレノワミディアムが座っており、今ではクイーンファミリー相談役に納まっている。しかしエレノワ自身は企業経営しか出来ず、このクラブとニューヨーク各地のクラブや売春行為・密輸・密売を取り仕切っている。そもそもサンドラをアメリカに呼んだのもエレノワだ。そしてその姉妹に従うのがモンロー・マリーヌ・クリスティナ・セシールである。
その6人がクイーンファミリーの最高幹部である。
「今回皆に集まってもらったのは他でもないわ。遂にチャイニーズマフィアの掃討作戦を行うわよ。」
サンドラの言葉に幹部達は笑みを浮かべた。
「シスター、遂にやるのね。」
「それは良い。私も腕が鳴るわ。」
モンローとマリーヌの言葉にクリスティナとセシールは大きく頷いた。
チャイニーズマフィアはアメリカ連邦に根付いたガン細胞と呼ばれている。イタリアンマフィアやアメリカ連邦に存在するマフィアよりも残忍で、敵対するマフィアや警察そして民間人の見境無く殺すのである。確かにサンドラもアメリカに来た頃はただのチンピラで、路上強盗や警官を殺して銃を奪っていたが逸れも最初の頃である。ある程度名が売れて来たら仕事として殺人等をやっていた。
とにかくチャイニーズマフィアは残忍で、大日本帝國がロシアンマフィアの進出を阻止したようにアメリカ連邦は今更ながらチャイニーズマフィアを排除しようと始めた。
「それにチャイニーズマフィアにはこれまで手を焼いて来たから、サンドラも漸く蹴が付くわね。」
「エレノワ、これからまた長い戦いになるけどヨロシク。」
「なに、戦いは慣れたわ。」
「そうね。」
エレノワの言葉にサンドラは笑った。それに吊られて幹部達も笑った。
午前9時
トルコイスタンブール
イスタンブールはトルコ最大の都市で首都のアンカラを遥かに凌ぐ巨大都市である。トルコにとってはある意味で首都よりも重要な都市になる。この都市で遂に中東事変を話し合う6ヶ国協議が開かれようとしていた。
イスタンホテル15階大会議室
ここに大日本帝國・ソビエト連邦・大英帝国・イスラエル・エジプト・シリアの特命大使が集まった。これから中東事変の対応について話し合いが行われる。これが躓けば連鎖反応的に中東戦争になりかねない。東側陣営の盟主として大日本帝國は出来る限り、そのような事態を回避したかった。
「報道機関の方々は退室願います。」
特命大使に任命された外務省の宮沢中東局長の言葉に記者達は会議室を出ていった。今回の6ヶ国協議は世界中が注目していた。この協議で中東事変が解決するか、中東戦争に発展するかが決まるのである。対応如何によっては世界が大きく変わる重要な協議であった。
「それでは本題に入ります。」
宮沢中東局長の言葉に出席者は顔を引き締めた。
「我が国はイスラエルとエジプトの戦闘行為がこれ以上発展しないようになる事を目指しています。それには我が国が国連に於いて提案していた非武装地帯の創設と、平和維持軍の派遣を行うのが最善の策であり、平和への近道だと思われます。」
「大英帝国政府は大日本帝國案を全面的に賛成致します。」
大英帝国特使の言葉に各国特使は何の反応も示さなかった。大英帝国の大日本帝國追従は世界中に知れ渡っており、今更大英帝国の行動に驚いたりはしなかった。
「エジプト政府としての見解を述べます。」
エジプト特使の言葉に宮沢中東局長以下、各国特使は注目した。
「我が国は大日本帝國案を受け入れる用意があります。」
「!?」
エジプト特使の言葉に会議室は騒然とした。
あのエジプトが遂に大日本帝國案の受け入れを表明したのである。
「それは本当ですか?」
「もちろんです。」
イスラエル特使の言葉にエジプト特使は大きく頷いた。
「驚きかと思いますがこれはナターシャ首領直々のご決断であります。」
「何故急に受け入れるようと?」
「それには大きな理由があります。」
宮沢中東局長の言葉にエジプト特使は話し始めた。
「現在国内情勢は非常に危機的です。軍部とアラブの光が何やら暗躍しており、正直な所イスラエルと戦争どころではありません。更に……」
エジプト特使が話している所へ大日本帝國の関係者が会議室に飛び込んできた。
「どうしたの?」
驚く宮沢中東局長の傍らにその女性は近づくと、紙を渡した。それを受け取り、読んだ宮沢中東局長は顔色わ変えた。
「どうされました?」
驚くソ連特使の言葉に宮沢中東局長はエジプト特使に顔を向けた。
「今から言う事を落ち着いて聞いて下さい。」
「はい。」
「ナターシャ首領がお亡くなりになりました。」
「!?」
再び会議室は騒然とした。いきなりの死亡発言にエジプト特使は驚きの表情を浮かべた。
「エジプトで軍部とアラブの光によるクーデターが起こりました。ナターシャ首領は捕まり、処刑されたもようです。」
「……」
宮沢中東局長の言葉に会議室は沈黙に包まれた。クーデターの勃発に各国特使は状況を受け入れられなかった。
「どうやら決断が遅すぎたようですね。」
「……のようです。」
エジプト特使はそう言うと椅子に深く座った。
そこへ1人の女性が会議室へ入って来た。騒然とする会議室でその人物に気付く者は少なかった。その女性はエジプト特使の横で立ち止まった。
「何かしら?」
顔を上げ尋ねたエジプト特使を無視し、女性は懐から拳銃を取り出した。
驚くエジプト特使を尻目に女性は無情にも拳銃の引き金を引いた。
パァーン!!
突然の銃声に顔を向けるとエジプト特使は眉間に銃弾を受け、絶命していた。騒然とする会議室に宮沢中東局長の叫び声が響き渡った。
「そいつを捕まえて!!」