連合艦隊常置300周年記念観艦式
漸く観艦式が終わりました。
次はいきなり6ヶ国協議となります。
いよいよ戦争へと近づいて来ました。
2000年3月1日午前9時
硫黄島沖西80キロ海域
ここに連合艦隊のみならず東側諸国海軍が集結した。連合艦隊全艦と東側諸国海軍の主力が集結している為、核攻撃を警戒し全艦は完全装備で出撃していた。東側諸国海軍は毎年9月に行われる『日本海総合軍事演習』のみ集結するが、今年は今回の観艦式にも集結する為欧州東側諸国は2回も遠征する必要がある。
第7艦隊旗艦超弩級イージス原子力戦艦大和第1主砲塔前
麻理亜女帝陛下をお迎えし大和は連合艦隊と東側諸国海軍艦艇の間を巡航していた。
「この威風堂々とした艦隊が無事に生き残る事を切に願うわ。」
「そうですね。」
麻理亜女帝の言葉は色んな事に解釈出来る。しかし綾崎総理はそれに明確に答えず、当たり障りの無い返事をした。
2人の周りには閣僚と軍幹部がいた。もし仮に今大和が核攻撃を受ければ大日本帝國はその首脳部を失う事になる。その為先に記した通り連合艦隊及び東側諸国海軍全艦は最高警戒体制にあった。
更にこの観艦式は漁船を借用し世界中のマスコミが生中継を行っていた。それにより世界中で観艦式の様子が放送されていた。しかも今日は『帝軍記念日』であり祝日である。国民も観艦式を見ていた。
「この観艦式を経て世界中にその威容を示す。更に陸軍の観兵式、空軍の観悦式も世界中に披露されている。」
「海軍は確かに大日本帝國の力の象徴です。しかし海軍だけで戦争は出来ません。それを補うのが陸軍であり空軍です。」
綾崎総理は麻理亜女帝の言葉に答えた。
麻理亜女帝と綾崎総理の見つめる先には連合艦隊があり、更に東側諸国海軍が集結していた。海軍力では東側諸国が西側諸国を凌駕し、その威信はそのまま国家の象徴となるのである。
同時刻
エジプト首都カイロ首領官邸2階執務室
執務室にはナターシャ首領しかいなかった。ナターシャ首領はイスラエルへの侵攻が失敗してから軍部を信用していなかった。そんな中で軍部が再侵攻を進言してもナターシャ首領は躊躇った。しかしそれを軍部は弱腰だと批判し、国民はそれを真に受けナターシャ政権への不支持を高めた。
これにより閣僚は一気にナターシャ首領と距離を取り始めた。これを受けナターシャ首領の求心力は大きく低下し、ナターシャ首領は今や孤立するに至ってしまった。
「私は間違っていたの?」
ナターシャ首領は呟いた。しかしそれに答える者はいない。
「……分かりやすいわね。」
ナターシャ首領はそう呟くと笑った。これまでは周りには権力者を慕って集まっていたが、軍部と対立し国民の人気が落ちるとあっという間に逃げていった。船が沈む前に逃げ出す鼠のように……
ふと、ナターシャ首領はテレビに目を向けた。そこには大和艦上で演説する麻理亜女帝陛下が映っていた。
『勇敢なる帝軍兵士諸君!!私は大日本帝國軍最高司令官である。』
麻理亜女帝陛下の言葉に兵士達は雄叫びを挙げた。大日本帝國に於いては女帝陛下が全ての頂点に位置する。通常は総理大臣・衆議院議長・大審院総長を代理人として、司法・立法・行政そして軍の指揮権を任せている。そして女帝陛下が宣言するとその瞬間に指揮権は女帝陛下に戻される。
『我が帝國は世界の平和を望んでいる。その為なら帝國はあらゆる手段を惜しまない。更にあらゆる者にその邪魔をさせない。帝國は大東亜共栄圏の盟主であり、尚且つ東京条約機構・東側の盟主である。帝國の方針は即ち東側の方針にもなってしまう。我が帝國はその事を十分に考慮し、冷静かつ大人な対応を心掛けて来たはずである。時には感情的になり直ぐ様武力行使をした事もある。だが帝國は常に自国の事だけを一方的に押しつける事はしない。それはそうする事が必ずしも帝國の為にも、況してやその国の為にもならないからである。世界に伝える。もし何かあれば帝國政府に要請をしてほしい。助けがいるなら軍を出し、あらゆる支援を行う。
大日本帝國は軍事力だけを使う事は無い。あくまでも軍は最後の切り札である。しかしその最後の切り札を使わせるか使わせないかは、相手次第である。諸君達には万が一に備えて常に訓練に励んで欲しい。』
麻理亜女帝陛下の言葉に中には涙を流す兵士までいた。それをテレビで見ていたナターシャ首領も、僅かに目が潤んでいた。
「……これが大日本帝國女帝の演説。あの国が羨ましいわ……」
そう呟くナターシャ首領の目は、何処か虚ろであった。