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奪還作戦

長らく長らくお待たせいたしました。

2355時

日本海上空4500メートル


「降下用意!!」


桜木大尉は大きな声で怒鳴った。これから史上初の奪還作戦が始まるのである。



「降下!!」


桜木大尉が叫ぶと神崎少尉、加藤少尉、酒井少尉の順に飛び出した。

その後に桜木大尉が続いた。





2400時

ソ連輸送船6002号甲板



潜入に成功した桜木大尉達は落下傘を外すと88式自動小銃を構えた。

着地したのは輸送船の後部である。艦橋が前部にある為後部への着地となったが、今後の作戦や対テロの標準規定となる事になる。


「集合。」


桜木大尉の言葉に隊員は集合した。


「ツァーリボンバーは格納庫にあると予想されるわ。真紀(加藤少尉)と彩名(酒井少尉)は通信塔の破壊を。成子と私は艦橋の制圧を。制圧は通信塔の爆発音と共に行うから3分後に実行。その後全員で中部から突入する。以上。」

「「「了解。」」」


桜木大尉の言葉に3人は頷き、桜木大尉と神崎少尉は艦橋へ向かって前進した。




「それじゃ、破壊するわよ。」

「了解。」


加藤少尉の言葉に酒井少尉は頷いた。






「爆四設置完了。」

「了解。彩名ちゃん、離れて。」


加藤少尉はそう言うと起爆装置に手を添えた。

爆四。正式名称を可塑性混合爆薬四型と呼ぶ。大日本帝國陸軍が第二次世界大戦中に初期型を開発し、タイ戦争時に現在の爆四が開発された。俗に言うプラスチック爆弾で、大英帝国は『C4』と呼んでいる。非常に安全性が高く爆四を火に投げ入れても、ただ単に燃えるだけでタイ戦争時には大日本帝國陸軍は固形燃料としても使用した。



「爆破!!」


ドゥグワァァァァン!!!!



凄まじい爆音と共に通信塔は崩壊した。


「これで艦橋も制圧出来る。」

「あの2人にはこんな事必要無かったと思うけど。」



加藤少尉と酒井少尉はそう言って笑うと、輸送船の中部へ向かった。








ドゥグワァァァァン!!!!


「突撃!!」


桜木大尉の言葉に神崎少尉は艦橋の扉を蹴り開けた。そしてその瞬間に桜木大尉が88式自動小銃を撃ちながら突入した。

突然の爆音と銃撃に敵は為す術もなく倒れていった。



「制圧!!」

「機関停止作業を。」

「了解!!」


神崎少尉は桜木大尉の命令に答えると操舵盤を操作し始めた。

近年の民間船と輸送船は自動操作が当たり前になっており操作は容易になっていた。


「機関停止しました。もうこの輸送船は逃げる事も助けを呼ぶ事は出来ません!!」

「えぇ、これからが本当の戦いよ。」

「了解!!」


桜木大尉と神崎少尉も輸送船中部へ向かった。







中部格納庫ハッチ入り口


4人は入り口に集合した。



「これから突入するけど内部はソ連兵がそのままの武装でいると思われる。それに対しては適切に対処するように。訓練通りにやれば良いから。」

「「「了解!!」」」


桜木大尉の話に3人は返事をすると格納庫に突入した。桜木大尉も最後に後方を警戒すると続けて突入した。






「静かね。」

「誰もいない……?」


桜木大尉の言葉に神崎少尉も答えた。加藤少尉と酒井少尉は前進しつつ警戒を続けていたが、同じ事を思っているのは確実だ。


「全く物音がしません。おかしくないですか?」

「何かあるわよ。」


桜木大尉はそう言うと耳を澄ませた。すると微かに電子音が鳴っているのに気付いた。


「もしかしたらもしかするかも。」


桜木大尉の言葉に3人は不安を感じつつも前進を続けた。






「大尉、ありました。」


加藤少尉が言ったその先に目を向けると格納庫の中心にツァーリボンバーが鎮座していた。


「これが、ツァーリボンバー……」


圧倒的な大きさに神崎少尉も驚きを隠せずに呟いた。酒井少尉は口を開いたまま言葉を失っていた。


「……やっぱり。」


ツァーリボンバーでは無く電子音が気になっていた桜木大尉はツァーリボンバーの反対側を見て呟いた。

そこには床に爆弾が設置されていたのである。


「九尾狐訓練演習で習った爆弾解体覚えてるかしら?映画や小説みたいに赤や青の電子線を切れば良いわけじゃないわよ。」


桜木大尉の言葉に3人は笑みを浮かべた。







大鳳空母打撃群旗艦原子力空母大鳳戦闘指揮所


「残り時間は?」

「残り30分です。」



篠原司令長官の言葉に杉本参謀長が答えた。佐藤艦長は落ち着かない様子で時計を何度も見ていた。


「大丈夫ですかね。」

「大丈夫。後30分『も』あるから。」

「30分『しか』無いと思いますけど。」


杉本参謀長も額の汗を素早く拭った。戦闘指揮所にいる全員が桜木大尉からの連絡を待っていたのである。連絡が無いと作戦失敗と判断され篠原司令長官は撃沈を命じる事となっている。誰しも同胞を殺したくないのである。


「そろそろくるかしら?」



篠原司令長官はそうポツリと呟いた。

そこへ入電を知らせる電子音が響いた。それを通信員は大型液晶画面に出した。



『こちら九尾狐二式。輸送船を制圧し、ツァーリボンバーを確保。繰り返す、爆弾の女帝は私達が確保しました。』


この通信に戦闘指揮所は歓声に包まれた。







2000年2月26日午前1時45分

軍務省地下3階戦闘統合指揮室


綾崎総理と杉原軍務大臣が連絡を待っていた。戦闘統合指揮室は大日本帝國軍の最高指揮発令所である。戦時には帝居に設置される大本営の方針を受け大日本帝國軍を指揮する。今回のような特殊作戦にも戦闘統合指揮室は使用される。


「そろそろだと思います。」


杉原軍務大臣が時計を見て呟いた。それに綾崎総理は欠伸をしながら頷いた。最近の忙しさに満足に睡眠をしていない綾崎総理は少しの空き時間を見付けると居眠りをしていた。


「もうそんな時間?早い……」

「大鳳より入電です!!」


綾崎総理の言葉を遮るように通信員が叫んだ。


「内容は?」

「『九尾狐はツァーリボンバーの確保に成功せり。当該輸送船は証拠隠滅の為撃沈せり。九尾狐に被害無し!!』以上です。」

「良くやったわ。」


綾崎総理はそう言うと拍手をした。






『ツァーリボンバー奪還作戦。それは大日本帝國が軍を使って敵国の兵器を奪う、強奪作戦であった。それを大日本帝國は何からの奪還かを言わずに奪還作戦と名付けた。戦後に綾崎総理(当時)が「反帝國主義からの奪還」と言ったがそれでも奪還と付ける必要性が無い。だが奪還に拘らずにこのツァーリボンバー奪還作戦を見れば改めて九尾狐の任務が凄まじかったかが分かる。夜間の輸送船への空挺降下で輸送船を制圧しツァーリボンバーを奪還する。しかし輸送船には予想外に兵士が乗り込んでいなかった。まさか輸送船を襲ってくるとは思っていなかったのか、配備されていたのは必要最低限で満足に輸送船を守れる数では無かった。このツァーリボンバー奪還作戦によりエジプトは最大の切り札を手に入れる事が叶わなくなったが、その後もイスラエルへの対決姿勢を崩す事無く後は皆さんの知る事となった。』

指原理香子著

『帝國軍事作戦集』より抜粋






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