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高級幹部会議

「中東は現在、予断を許さない状況であります。」


島倉詩織事務次官は書類を見ながら説明を始めた。


「エジプト・イスラエル国境は現在小康状態になっております。しかしエジプトは未だに活発な演習を繰り返しています。こちらをご覧下さい。」


島倉事務次官はリモコンを操作し、衛星画像を映し出した。


「これが4時間前の状況です。非常に活発で国境を越える勢いで演習をしております。これに対してイスラエルは陸軍空軍の総力を挙げて、国境に展開しています。どちらかが限界を越えると、直ぐ様戦争に発展してしまいます。まさに一触即発と言えるでしょう。」



現在軍務省では最悪の事態を想定して、緊急体制に突入している。これは僅か数年前の湾岸危機(湾岸戦争)以来の事である。


「とにかく最低でも現状を維持して、戦争に発展させない事。もし仮に戦争になっても直ぐ様それを粉砕する事。これが最重要課題です。」


杉原軍務大臣は力強く語った。







同時刻

地中海海中


この海中を1隻の潜水艦が航行していた。この潜水艦こそ大日本帝國の核戦略を支える原子力潜水艦赤城級である。



『大日本帝國海軍の潜水艦発射弾道ミサイルは陸上配備の大陸間弾道ミサイル及び戦略爆撃機と伴に、それぞれに装着される核弾頭によって1960年代初期から現在も我が国が維持している戦略核抑止力3本柱の1つである。この3本柱の中でも秘匿性が高く、実用上は無限の潜航能力を有する原子力潜水艦に搭載して運用される潜水艦発射弾道ミサイルは、最も残存性の高い究極の戦略核抑止力と言える。相互確証破壊との概念が生まれたのも核兵器が開発されてからだ。核抑止力により撃たれた撃ち返す、との構図が定着して世界は偽りの平和を享受している。現時点で大日本帝國海軍が保有する潜水艦発射弾道ミサイルは射程13800キロの邪龍であり、これを搭載する原子力潜水艦は赤城級20隻である。邪龍原潜と呼ばれる大日本帝國海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦は、現在もその強大な攻撃力で抑止力を発揮している。それは将来も変わらない。』

根本美代子著

『原子力潜水艦建造物語(上)』より抜粋




原子力潜水艦鳳翔艦内


「艦長、コーヒーが入りました。」

「ありがとう。」


平山理恵副長は織江静香艦長にコーヒーカップを差し出した。


「何とか小康状態になりましたが、これからどうなるでしょうか?」

「これから?確実にもう一度戦闘が勃発するでしょう。それが起これば次こそ、帝國は介入するでしょう。」


織江艦長は平山副長の質問に答えた。


「この戦闘が所謂『蝶効果』で第三次世界大戦にならない事を望むわ。」

「確かに。『メルボルンで蝶が羽ばたけば東京で竜巻が起きる。』このような事が起きないで欲しいです。」

「でもこの蝶効果は実生活で証明されてるからね。車の渋滞がその良い例よ。」「1台が速度を落とす事で後続の車が次々と速度を落とす。それにより気付けば長い渋滞が発生する。」

「この度の戦闘もそう。最初は国境での小競り合いだけど、気付けば長い戦争になるかもね。」

「その可能性もあるかもね。」


織江艦長は頷きながら答えた。







午前11時

兵庫県神戸市


5年前に発生した『阪神淡路大震災』はこの街を一瞬にして壊滅させた。世界一の軍事力を有する大日本帝國を嘲笑うかの如く、大地震はその猛威を奮った。『帝國の軍事力は確かに地球上では有益だが、地球の内側の敵に対しては何も出来ない。』とは当時の新聞社説である。その瓦礫の山からの復興は凄まじいものであった。特に帝國政府の対応は素早く、鈴木商店の企業城下町とあって復興費用は膨大であった。




長田区中央霊園


この場所にカナとノヴァは訪れていた。


「ここがカナの……」

「そう、母さん達が眠る場所よ。」


カナはそう言うと墓石に手を合わせた。ノヴァもそれに続いた。


「母さん達は私が軍に入る事には猛反対だったわ。」「……」


ノヴァは静かにカナの話に耳を傾けた。


「けど私が出世していくのは、素直に喜んでくれていたわ。出世する度に母さん達は祝ってくれた。鯛の塩焼きと寿司でね。何時しか軍に居ることを母さん達は自慢し始めたわ。掌を返したように母さん達は私を誉め讃えたのよ。九尾狐に入った時は更に喜んだわ。そして第1部隊隊長になって、BIGMOTHERの称号を受け継いだ時はもう凄かったわ。けどあの地震で母さん達は逝ってしまったわ。」

「カナ……」


ノヴァはカナの肩に手を置いた。


「……」

「大丈夫?」

「……大丈夫よ。」

「それ……」


ノヴァはカナの頬を伝う物を指差した。それをカナは拭きながら返事をした。


「フフフ、雨よ。」

「…そうね。」

「そうよ。」


2人は手を繋いで歩き始めた。2人の見つめる先には、雲一つ無い青空が広がっていた。





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