国連安保理
お久し振りでございます。勝手に外伝を書き始めた事は、ご了承下さい。
今回の終わり方は、次回へ続きます。
2000年2月22日午前9時
大日本帝國大阪『都』国際連合本部ビル
西側諸国が言うには国連は大日本帝國の独壇場、若しくは戦勝国集団の集まりである。しかしそれは間違っておらず的を得た表現であった。
有原百合国連大使の提議で召集された緊急の安全保障理事会である。参加国は常任理事国の大日本帝國・大英帝国・フランス・オランダ・トルコ、非常任理事国の中華帝國・琉球王国・満州国・インド・スペイン・ソビエト連邦・ドイツ第三帝國・アメリカ連邦・イタリア・キューバの合計15ヶ国である。かつては西側諸国の国連加盟は認め無かったが、1970年の日ソ国交正常化により加盟が認められた。当初は総会のみの承認であったが、1991年に非常任理事国への立候補が認められた。これにより西側諸国が立候補し非常任理事国にはなれるようになった。しかし常任理事国には絶対になれなかった。これを西側諸国は国連の『万国平等の精神』に則っていない、と毎年のように国連改革案を提出している。このような問題もあるが、国連は一応の国際機関として存続していた。
緊急安保理には当事国のイスラエルとエジプトも参加していた。しかしながら両国には投票権は無い。これは当事国の国益を関与させない為の措置である。だがそれは建前に過ぎない。国連で問題になる当事国は東西のそれに属しているので、その陣営の国々がその国の国益を守る為に全面的な関与をする。今回の安保理も大日本帝國を筆頭とする東側諸国はイスラエルに、ソビエト連邦を筆頭とする西側諸国はエジプトに関与する。その二分された安保理が今、議長であるフランスの国連大使ミシェールの開会宣言により始まった。
有原国連大使は開会宣言を受け立ち上がると、喫緊の課題である中東紛争について状況説明を含め説明を始めた。
イスラエル・エジプトの国境で必然性のある戦闘が始まり、エジプトは計画性を持ってイスラエルへの侵攻を開始。エジプトは当初からイスラエル侵略を企てており、今回の紛争は明らかなエジプトの侵略行為が招いた悲劇である。更にはアメリカ連邦の民間軍事企業であるブラックウォーターを雇い、共同でエジプト侵攻を開始。幸いにもイスラエル軍の迅速な反撃と、帝軍・大英帝国軍の支援により国境線は一応の小康状態となった。
エジプトが民間人を利用した罠を使ったとは有原大使は言わなかった。わざと『必然性のある戦闘』と表現したのである。
有原大使は更に言葉を続け、大日本帝國案の内容を語った。
「我が国が提案するのはイスラエルとエジプト国境10キロを非武装地帯とし、国連平和維持軍を組織して再び両国が衝突しないように監視します。この平和維持軍は当然ながら東西両陣営に属しない国、我が国は独自にブラジルを推薦致しますがこれは話し合って決める必要があります。」
この有原大使の大日本帝國案にエジプトのユーナ大使が反論した。
「我が国はその案を受け入れる事は出来ません。この度の紛争を有原大使はあたかも我が国から侵攻したと仰られました。大使は根本的な紛争の勃発原因を語られておりません。イスラエル軍の国境警備隊が亡命を図った民間人を虐殺した為、我が軍はイスラエル軍への報復攻撃を行ったのであります。ですから我が国の行為は正しい行為であり、大日本帝國の案は我が国を封じ込めようとする東側諸国の陰謀です。我が国はこの大日本帝國案に断固反対致します。」
この発言にミシェール議長は冷静な口調で語り始めた。
「ユーナ大使、仰りたい事は解りました。ですがここは国際連合であり、中東連合ではございません。西も東も関係無く各国がお互いに公正に友好的に議論を深める場です。自国の利益を深く追求するのは国連憲章に反します。」
この言葉にソビエト連邦ノエール大使が噛み付いた。
「議長、その御言葉はそのまま議長の御隣に、御座りになっている御方に一字一句仰られる事を御提案致します。」
ノエール大使はそう言うとミシェール議長の隣に座っている有原大使を指差した。
「国連は事実上、大日本帝國の独壇場であります。更には大東亜会議の決定事項に追随する体たらくです。此れでは国際連合と言う国際機関の意味がございません。東亜細亜諸国の意思で全てが決まる、東側諸国の『東』は東亜細亜の『東』なのでしょうか?私達は現状の国連組織の改革を声高々に呼び掛けたいと思います。」
ノエール大使の言葉に西側諸国の各国大使は拍手をした。
「………」
有原大使は溜め息を吐くと頭を抱えた。
国連は常にこの問題で議論が止まる。しかし恒例である為、各国大使もそこまで気にしていない。だがこのやり取りも西側諸国が国連に加盟した時から繰り返されている。これも考えようである。
午前9時30分
帝都東京市ヶ谷軍務省2階大会議室
ここに大日本帝國四軍の高級幹部が集結した。通常なら毎月15日に行われる『帝軍高級幹部会議』のみだが、中東紛争の影響で勃発から毎日のように開かれている。参加するのは軍務大臣を筆頭に事務次官・軍令部総長・参謀総長・統合総長・連合艦隊司令長官・陸戦隊総司令官・軍令部副官部部長・軍令部第一部部長・軍令部第二部部長・軍令部第三部部長・軍令部第四部部長・参謀本部総務部部長・参謀本部第一部部長・参謀本部第二部部長・参謀本部第三部部長・統合本部特務部部長・統合本部第一部部長・統合本部第二部部長・統合本部第三部部長の合計20名である。出席者を見て解るように海軍だけが実戦部隊の、連合艦隊司令長官と陸戦隊総司令官の出席が認められている。これは朝廷水軍の伝統を引き継ぐ大日本帝國海軍にのみ認められる特権である。
「それでは第1527回臨時帝軍高級幹部会議を開催致します。」
杉原軍務大臣の言葉で幹部達は姿勢を正した。
「今この瞬間も国連本部では緊急安保理が開催されてます。私達はこの会議を何回でも開いて、最悪の事態の対処法を議論しないといけません。」
その言葉に幹部達は顔を引き締めた。