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反日映画

皆様お久し振りです。

ちょくちょく更新を再開していきます。



雲1つ無く澄んだ空が広がっていた。

しかしその静粛も巨鳥の群れによって掻き乱された。天空高く縦横無尽に駆け巡る巨鳥、アメリカ連邦空軍のB−36ピースメーカーである。世界初の6発爆撃機となるB−36は敵国である大日本帝國を、完膚無きまでに叩き尽くし焼け野原に帰した。そしてB−36は核爆弾を通算6発も大日本帝國に投下した。

まさに空の覇者たる風格を漂わせて、大日本帝國上空を飛行している。



視線を変え海に目を向けると、海上を埋め尽くす程の大艦隊が停泊していた。しかしその停泊する艦艇には、ただの1艦にも日章旗は掲げられていない。それもその筈、大艦隊の大部分の艦艇には星条旗が掲げられており他にも、ユニオンジャックの姿も見る事が出来た。

米英だけでは無い、対日戦を戦い抜いた列強の艦艇も舳先を並べていた。ドイツ・フランス・イタリア・オランダ・ソ連・カナダ・中国・オーストラリア・ニュージーランド・アルゼンチン・ブラジル・チリ、此等の国が艦隊を派遣していた。米英等の戦艦や空母に比べ、南米やオセアニアから派遣された艦隊は駆逐艦・巡洋艦主体であったが遠慮する事は無い。彼女達は大日本帝國を叩きのめした勝者であり、世界に平定をもたらした覇者なのだ。

対する敵は惨めなものであった。かつて栄華を誇った大日本帝國海軍連合艦隊は既に壊滅しており、唯一航行出来るのは戦艦長門だけであった。しかしその長門も惨めな姿を曝していた。塗装は剥げ煙突は吹き飛び、自慢の46センチ砲も砲塔から取り外されていた。横須賀基地には他の艦艇もあったが、それらは既に大破するか座礁していた。




帝國海軍唯一の戦艦はゆっくりと動きだした。最後の任務は降伏の使節を連合国艦隊旗艦に送り届ける事であった。座乗している大日本帝國特使の全権代表は山本今日子大将。かつて大日本帝國海軍連合艦隊司令長官を務め、連合国海軍艦艇を無差別に撃沈した戦争犯罪人である。他にも外務大臣や参謀総長等々、敗北者達が乗り込んでいた。大日本帝國はその国家の歴史上ただの一度も外国勢力に膝を屈した事の無い国家だ。今回の敗北はまさに建国以来初の経験であった。大日本帝國特使達は祖国の有様と今後の占領を想像し、怯えた表情を浮かべていた。主要6都市は核攻撃で壊滅し、列島それ全体は6発爆撃機により焼き払われた。帝都東京は空襲と艦砲射撃により徹底的に壊滅させられた。国会議事堂は倒壊し、東京塔は根元から崩れ去った。大日本帝國は壊滅したのである。





降伏文書調印により大日本帝國は『エリア1』と改名され、国際管理地となった。大日本帝國女帝を筆頭に内閣総理大臣等帝國の指導者達は、東京軍事裁判で戦犯として裁かれ死刑判決が下された。エリア1はその後黄色人種の駆除が行われ、観光地となった。








2000年2月20日午前11時

アメリカ連邦ニューヨーク映画館


場内の若者達は理想とする映画を見終わり、歓声を上げた。




「単細胞にも程があるわ。こんな有り得もしない単純なご都合主義映画に興奮しているなんて……」


最後列の席に座っていた女性は溜め息混じりに呟いた。若者達は律儀にポップコーンの入れ物を拾い、外へ出ていった。



「そのような映画を見せないと反日思想が薄れてしまうのよ、少佐。」

「誰なの?」


少佐と呼ばれた女性は後ろを振り向いた。そこにはスーツ姿の女性が立っていた。




「……OSS。戦略事務局のお方が何故映画館に?まさかこれを見に来たの!?」

「これを見に来たのも此処に居る理由の1つかしら。これはOSSの資金援助と完全なバックアップで制作されたの。祖国の為にね。」



OSSの女性は少佐の隣に座ると、コーラの缶を手渡した。少佐はそれを受け取ると一口飲んだ。


「挨拶が遅れたわ、私はOSS国内秩序維持継続部部長をしているの。名前は……エコナとでも呼んでちょうだい。」

「了解、エコナ部長。私はマーレ。階級はご存知の通り、所属は連邦海軍日本海艦隊ハワイ基地。」

「この国に太平洋を日本海と呼ぶ人がいたとは!?」


エコナ部長は驚いた表情でマーレ少佐を見つめた。


「私以外にも隠れて呼ぶ人は居るでしょう。私もさすがに上官の前では太平洋と呼んでますけど。」

「そうしてください。教科書や我が国の地図には太平洋と明記されてますから。」


エコナ部長はそう言うとコーラを自分も一口飲んだ。気付くと館内からは全員客は出て行き、残ったのはエコナ部長とマーレ少佐だけであった。




「国内秩序維持継続部……どういった活動を?」

「主に愛国活動を支援したり売国活動をしたりした者を処分しています。FBIとは密接に協力しています。」

「成る程。」

「他の部署からは『愛国者達』とも呼ばれています。」

「『愛国者達』!?そんな大袈裟な。その『愛国者達』が支援した映画がこれ?」


マーレ少佐はそう言いながらパンフレットをプラプラさせた。



「これなの。」


エコナ部長は微笑みながら頷いた。



「『対日戦勝記念日』。全米ベストセラーの架空戦記小説を映画化したの。」

「よくもまあご都合主義の架空戦記小説を映画化したわね。」


マーレ少佐はコーラを飲みながら呟いた。


「ご都合主義なのは良く解るわ。大日本帝國から産出されていた石油がある日突然枯渇したなんてご都合主義過ぎるわ。それに日英同盟破棄も有り得ない。大日本帝國と大英帝国は一心同体の間柄よ。それに大東亜共栄圏の解散なんて論外。そんな事が起こる訳が無いでしょう。中華帝国で共産主義者がクーデターを起こして中華人民共和国を建国したけど、あの時に中華帝国で共産主義者がクーデターを起こせるほどの勢力も力も無かった。何もかもこの国に都合が良いように描かれた小説だったのよ。戦艦大和が沖縄に特攻したシーンは私は笑ってしまったわ。確実に有り得ない。ユナイテッドステーツが撃沈されたからといってあのシーンはただの国家としての怨みよ。」

「何故そこまでしてこの『対日戦勝記念日』はご都合主義過ぎるの?」

「知りたいですか。」

「勿論。こんなご都合主義の小説を書いた人物が知りたいからね。」

「驚きますよ。」


エコナ部長はマーレ少佐の耳元でそっと呟いた。



「この小説の作者はエレンって書いてあるけど全くの嘘。本当はクロエア女帝陛下がお書きになられたのよ。」

「クロエア女帝陛下が!?」


マーレ少佐を驚かすには十分であった。





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