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非公式公開

2000年2月19日午前0時30分

大英帝国帝都ロンドンバッキンガム宮殿


バッキンガム宮殿は女王陛下の住まいと、王室を示す代名詞として有名である。世界に君臨する大日本帝國と、欧州に君臨する大英帝国の両国は強大な権力を有する国家元首の下に成り立っている。






2階謁見の間


「御姉様、今回の事変はもしかすると加熱していくかもしれません。」

「加熱?」

「大日本帝國は最悪の場合、第三次世界大戦に発展すると考えているようです。」

「第三次世界大戦……」


エリザベス女王はそう言うと、足を組み直した。リア首相は姉の答えを待っている。


「第三次世界大戦ね………」


まだエリザベス女王が考えている為、リア首相はソファーに座った。

リア首相にとって唯一反抗出来ないのが、エリザベス女王である。5年前の歴史的な政権交代を実現させたリア首相にとって、政権・議会は赤子のようなものであった。純粋なる保守派である『自民党』の党首として、革新派である『民権党』を打ち倒したリア首相は『正統保守』の方針を鮮明にした。そして『日英同盟重視』『対日追従外交』『欧州の守護神』の三原則を発表し、実行した。リア首相が就任しての初めての戦争が、もしかすると第三次世界大戦に発展してしまうかも知れない。エリザベス女王が考えるのも当然であろう。



「まさか第三次世界大戦に発展すれかもしれないとは……」

「はい。」

「発展した時の対応は大丈夫なの?」


リア首相は大きく頷いた。


「私達が戦うべきは主にアメリカ連邦大西洋艦隊とドイツ第三帝國艦隊。ロイヤルネイビーの実力があれば、楽勝です。しかも戦時となれば連合艦隊の空母打撃群が配備されます。ドーバーにも大日本帝國空軍基地がありますし、キプロス島からも支援を受けられます。」


大日本帝國は大英帝国を含め欧州各国と『安全保障同盟』を結んでおり、彼の国が戦争に突入すれば大日本帝國は空母打撃群を派遣する事を取り決めている。11個空母打撃群を保有しているからこそ出来る、大日本帝國だけの特権でもある。「成る程、世界初の産業革命を成し遂げた国だからね。日亜諸国が私達の同盟国であるのが、本当に安心出来るわ。私達はまだまだ日亜先進国から学ぶべき事が沢山あるし、それを自国流にアレンジしなければならないわ。」

「確かに御姉様の言うとおり。私は此れからも頑張っていきます。」


リア首相はそう言うと、エリザベス女王に抱き付いた。


「頼んだわよ。」

「はい。」


リア首相はエリザベス女王の言葉に大きく頷いた。








午前2時30分


イスラエル首都エルサレム首相官邸地下1階コマンドルーム


「今回のエジプトの侵攻が戦略的にどのような有効性があるのか、これを説明して下さい。」


シルヴィア首相はキャリー国防大臣に尋ねた。



「エジプト軍の戦略は我が国の国力を狙ったものと思われます。」


キャリー国防大臣はスクリーンに地図を映しながら話始めた。


「現在我が国の国内総生産(KSS1)は世界第10位、国民総生産(KSS2)は世界第8位です。対するエジプトはKSS1が世界第28位、KSS2が世界第27位です。大日本帝國の資金援助により我が国は世界有数の経済力を誇ります。9年前の湾岸戦争を思い出して下さい。」


キャリー国防大臣はリモコンを操作して再びスクリーンの映像を変えた。それは9年前の湾岸戦争の映像であった。

「湾岸戦争はソビエトがイラクへ軍事支援を行った事がそもそもの始まりです。イラクがまずソビエトへ軍事支援を求めました。その目的は対外的には国防力強化、と言っていましたが当初からクウェート侵攻の為の準備でした。イラクがクウェートを侵攻・占領したかった理由は、クウェートの国力でした。大日本帝國の資金援助を受けて発展したクウェートは、イラクにとって魅力的な存在でした。そこを占領すればイラクの経済力は3倍に跳ね上がる予定でした。そこで勇んでクウェートへ侵攻しましたが、大日本帝國の素早い対応で叩き出され、ついにはイラク自身が占領されました。その後は大日本帝國の『巻き返し政策』によりイラクへ資金援助がなされ、イラクは発展しクウェートも復興しました。」


そこまで言うと、キャリー国防大臣は再び映像を切り替えた。


「つまりエジプトはかつてのイラクと同じ事を行ったのです。しかし湾岸戦争と違うのはクウェートに存在しなくて、我が国に存在するものがあります。」

「大日本帝國軍基地ですね!!」


ロズリン内務大臣が元気よく言った。ロズリン内務大臣はシルヴィア内閣の最年少入閣であり、しかも事変に突入した事により少々興奮気味である。


「そうです。」


キャリー国防大臣は微笑みながら答えた。


「我が国には大日本帝國軍基地があります。しかも地中海にも『海上の不沈要塞』と言われるキプロス島が存在します。全島の8割が軍用施設となっているキプロス島は、大日本帝國本土から離れているにも関わらず難攻不落の様相を呈しています。」


キャリー国防大臣はキプロス島の映像を見せながら答えた。


「キプロス島は第一次世界大戦後の対オスマン帝國講和条約のセーヴル条約により大日本帝國領となりました。それ以来キプロス島は地中海に於ける大日本帝國の戦略的要石として、重要な存在であります。そして……」


キャリー国防大臣がそこまで言った時、息を切らせた首相秘書官が慌ててコマンドルームに入って来た。手にはメモ用紙を持っており、重要な案件を伝えに来たのは誰の目にも解った。


「会議中に失礼します。」



秘書官はそう非礼を詫びると深呼吸をしてから、メモ用紙に書かれた内容を読み上げた。


「大日本帝國政府より緊急の連絡です。非公式ながらソビエト連邦からツァーリボンバーが流出したとの事です。」

「ツァーリボンバーが流出!?」


シルヴィア首相が叫んだ。






同時刻

中華帝國帝都北京首相官邸2階首相執務室


時差の関係も有り、同時刻な訳は無いが大体同時刻な訳で………



中華帝國首相林原峰子は、煙草に火を点けると大きく吸い込んだ。


「ツァーリボンバーが流出……」


林原首相は先程大日本帝國から伝えられた情報に頭を悩ませていた。


「安全保障会議を開く必要が有るわね。」


そう結論付けると、受話器を取り秘書官にその旨を伝えた。

林原峰子首相。この名前からも解るように、中華帝國は彼の国が中華帝國と改名をした時から、大日本帝國化を始めた。日本語と母国語を混ぜ合わせた『中華語』と言う、全く別物の言語を制定した。

その後『東歴』を筆頭に数多くの改革を主に大日本帝國からの輸入により行った。東歴はその名の通り東洋歴・太陽暦である。前子女帝陛下の祖先が生まれた年を紀元元年(皇軍による天下統一以前の歴史は前子女帝陛下により改編され、祖先も架空の女性である)とし、世界進出と同じく世界に東歴が広められた。大日本帝國は更に皇紀を国内専門の暦で採用している。



「大日本帝國からの要請が有れば中華・満州ラインの警戒態勢を引き上げないといけないわね。」


林原首相は首相就任の時に歴代首相も読んできた『古の聖文』を思い出した。

大日本帝國曰く、大東亜共栄圏には中華帝國は入らないで頂きたい。

曰く、理由として我が国の独走を防ぐ停止装置として貴国は重要な役割を有している。

曰く、されど貴国が我が国にとって重要な同盟国であるのは変わらず。

曰く、貴国の国難には我が国は喜んで協力する。



「確かに大日本帝國は協力してくれた。」


林原首相はそう言うと、再び煙草を吸った。


「この国が中華帝國として再生した時、ロシア帝國の侵攻を撃退してくれたのは大日本帝國だった。かつての敵国を護る為に大日本帝國軍は命を掛けて、数千人が靖国神社に逝ってしまった。」


林原首相はまだ外務大臣であった頃に訪日時の靖国神社参拝を思い出した。祖国と同盟国を護る為に死んでいった英霊を敬う幼子と林原首相は出会ったのであった。その幼子は自らの祖母がタイ戦争で殉職した事を語り、自らも海軍に入ると誓った。そして幼子は林原首相に「総理になるの?」と尋ねた。そこで林原首相は答えた「私は総理になるわ、貴女は海軍で頑張りなさい。」「うん!!頑張る!!」

その幼子こそ、大鳳空母打撃群原子力空母大鳳艦長佐藤明奈大佐であった。




「今度は私達が大日本帝國を助けるのよ。」


林原首相はそう言うと会議の為、執務室を出ていった。







『戦後公開された資料を調べると、大日本帝國はツァーリボンバーの情報を東側諸国に非公式公開(欧州で言うリークである)したのである。これは一種の危機感を東側諸国に与えた。人類史上最大の核兵器が流出したのである。しかもその対処を大日本帝國海軍の九尾狐が一手に引き受けるのである。航行中の輸送船に突入する作戦はまさに前例の無い初体験であった。大日本帝國の国柄として、[前例無き事を一番最初に]と言うものがある。その突入作戦の結果は読者の皆さんもご存知の為、今回は割愛したい。[情報を征する者は世界を征す]の言葉通り、情報は人間の心情を動かす弾丸であった。』

榊原葵著

『帝國の情報操作』より抜粋





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