帝國安全保障会議
午後8時
首相官邸地下1階危機管理室
大東亜会議が終了した事により、再び帝國安全保障会議が開かれた。各国大東亜大臣は会議終了と共に、自国大使館へと帰っていった。大東亜大臣は閣僚の一員であるが、就任と同時に大日本帝國の大使館へ配属される。本国の閣議には通信衛星を介した、テレビ中継によって行われる。
「大東亜会議で非難決議可決。問題は国連安保理ね。」
岸大東亜大臣の説明を聞き終えた綾崎総理は、冷静な口調で言い切った。
「国連安保理は22日ですが、そこでソ連がどうでてくるかが問題です。」
松浦外務大臣が言った。
「それは大丈夫。ソ連は今回の紛争に対して、我が国と協調して平和的に解決したいと言ってるわ。表向きはね。」
「表向きですか?」
杉原軍務大臣が首を傾げながら尋ねた。
「何かしら考えているでしょう。あの国は自分達の利益にしようと躍起になるからね。今回の紛争も何かに付け込んでくるでしょう。」
「それでは総理は、今回の紛争から第三次世界大戦に発展すると?」
「そこまでは言ってないわよ。けど、最悪の場合を想定するのは悪くない事よ。」
後に綾崎総理の予感は的中し、大日本帝國は第三次世界大戦を戦う事となった。
「総理!!」
危機管理室に秘書官が慌てて入って来た。
「なに?」
「有原百合国連大使から連絡です。安保理関係各国、常任と非常任の22日安保理開催の同意を取り付けたそうです。」
「流石ね。」
綾崎総理は拍手をした。それにつられて閣僚達も拍手をした。
「失礼します。」
秘書官は危機管理室を出ていった。
「総理!!」
今度はコンピューターと睨めっこしていた、情報官が叫んだ。
「サウジアラビアが中立を宣言しました!!」
「中立!?」
森井内務大臣が驚きの表情を見せた。
「サウジアラビア首相の記者会見の模様です。」
情報官はそう言うと、大型液晶モニターに1人の女性が映し出された。
『私達は警戒レベル3発令を取り消し、エジプト・イスラエル紛争に対して完全中立を宣言します。国家財政が危機的状況迎え、戦争所ではありません。エジプトがイスラエルに侵攻した時は警戒レベルを引き上げましたが、現在は小康状態となっていますので中立を宣言します。中立期間は国家財政再建が出来るまでです。WTOの脱退もソ連に通達する次第です。』
「もう良いわ。」
綾崎総理の言葉で大型液晶モニターは、元の世界地図に切り替わった。
「敵が1ヵ国減りましたね。」
保坂大蔵大臣が言った。大型液晶モニターに示された世界地図も変化を示した。サウジアラビアが敵国を示す『赤色』から中立を示す『黄色』に変化した。
「これを『青色』に変えれたら良いんですがね。」
杉原軍務大臣が呟いた。『青色』は味方を示す。
「サウジアラビアは国家財政の危機を訴えましたが、我が国は大丈夫ですよね?」
星野TTZS長官が尋ねた。
「全く問題ありません。」
保坂大蔵大臣が説明を始めた。
「大日本帝國の財政は建国以来、黒字となっています。特に昨年11月に七瀬通商産業大臣が直接売り込んだお陰で、アルゼンチンに高速鉄道(新幹線)敷設工事と原子力発電所建設工事が始まります。我が国の高い技術力を他国が導入する事で、黒字が更に増えます。もし仮に赤字となれば、『軍備投資税』を引き上げれば良いのです。」
「成る程。黒字になってもらわないと、私達も諜報活動が行いにくくなりますからね。」
星野TTZS長官は頷きながら答えた。
『軍備投資税』とは第二次世界大戦中(1943年1月)に始まった間接税である。度重なる軍拡に国庫が空になりかけた為、時の内閣が始めた。生活必需品は1分、書籍・衣服は3分、電化製品は5分、車輌が1割、それ以外が1割5分となっている。
「国家財政は安心だと分かったわ。話を戻すわよ。」
綾崎総理の言葉に閣僚達は意識を入れ替えた。
「サウジアラビアが中立を宣言した事により中東問題に関係あるのは、大英帝国・イスラエル・エジプト・シリア・ソ連、そして大日本帝國の6ヶ国となりました。この6ヶ国で当面は対策を練っていき、平和的解決に持っていけたら良いのですが……」
松浦外務大臣が呟いた。
「6ヶ国協議の開催ってのも有り得るかもね。」
「6ヶ国協議ですか?」
綾崎総理の言葉に、保坂大蔵大臣が首を傾げた。
「どうせ安保理では可決されても、ソ連の予備参加でゴタゴタになってややこしくなるのよ。もしそんな事態になったら、6ヶ国協議を呼び掛けるの。」
「それはいい考えですね。切り札として隠しておきましょう。」
杉原軍務大臣が賛同した。
「皆も賛成かしら?」
綾崎総理の言葉に、閣僚達は全員頷いた。
「決まりね。安保理が躓いた時の切り札に6ヶ国協議を開くわ。それじゃ今日は解散。ご苦労さまね。」
綾崎総理の言葉で安全保障会議は終了した。
次回は何かが……