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大東亜会議

午後6時

帝國ホテル5階大会議室


ここに大東亜共栄圏加盟国と中華帝國の大東亜大臣が集まっていた。大東亜共栄圏は今年で設立100周年を記念する。これは驚異的な偉業である。27歳の短命に終わった国際連盟は論外であり、国際連合も未だに55歳である。そんな国際連合よりも長寿である大東亜共栄圏・大東亜会議は、世界で最も権力を有する意思決定機関として有名である。


大東亜会議で決定された事案は、国連総会・安保理で必ず可決される。口の悪い者に言わせれば、『大東亜会議は影の国連』である。そんな『影の国連』が開かれた。







「それでは只今より、第164回大東亜会議を開催致します。」


議長の岸大東亜大臣が宣言した事により、会議が始まった。大東亜会議においては、大日本帝國が永世常任議長となっている。


「それでは現在分かっている状況を説明します。書類をご覧ください。」


岸大東亜大臣の言葉に、各人は書類を捲った。


「イスラエル侵攻にアメリカ連邦のPMC、ブラックウォーターが関与していました。」

「!?」


会議室にどよめきが起こった。


「現在衛星が捉えただけでも、1個機甲旅団は参戦しています。」

「ブラックウォーターはどのような組織ですか?」


琉球王国大東亜大臣が質問した。


「それでは説明します。」


岸大東亜大臣がそう言うと、各人の前の液晶テレビに兵器が映しだされた。


「ブラックウォーター。世界最大の民間軍事会社です。戦力はアメリカ連邦陸軍の約3割、空軍の約2割に達する規模を誇ります。この規模は将来的に更に増大するものと予想されています。」

「国家が民間軍事会社に国防を委託するとは……」


タイ大東亜大臣が嘆いた。


「確かにこうなると、ややこしくなりましたね。」

「そうなんです。」


満州国大東亜大臣の言葉に、岸大東亜大臣が溜め息を吐きながら答えた。


「それなら何故、大鳳空母打撃群を引き揚げたのですか?直ぐに介入させるのが大日本帝國の戦略でしょうに。原子力潜水艦も地中海やインド洋に配備してるんですから、巡航ミサイルで攻撃しないのですか?」


中華帝國大東亜大臣が疑問をぶつけた。


「仰る事は尤です。しかし今回は過去の前例を打ち破るしかなかったのです。それについて説明します。書類の8ページをお開き下さい。」


岸大東亜大臣の言葉に全員がページを捲った。


「なっ!?」

「まさか!!」


会議室は再び騒然とした。


「そうです。ソ連からツァーリボンバーが流失しました。」

「何故、流失したんですか?」


フィリピン大東亜大臣が尋ねた。


「TTZSが調べた情報によりますと、ソ連の反プーチン派が独断で行ったものとみられます。どうやらエジプトと繋がっているもようです。」

「と言う事は、エジプトはアメリカ連邦のブラックウォーターを雇い、ソ連内部にも協力者を作ってツァーリボンバーを奪った。エジプトの首領はとんでもない奴ですね。」


オーストラリア大東亜大臣が吐き捨てるように言った。


「そのエジプト首領、ナターシャの性格が10ページに書いてあります。」


再び各大臣は書類を捲った。


「自意識過剰で独占欲・性欲が強く、典型的な独裁者です。その原因は、幼少時代から何不自由無く育った事にあります。母親達の強大な権力を背景に、我が儘し放題です。」

「子供がそのまま、大きくなったようなものですね?」

「そういう事です。多分今回の初動作戦の失敗が、ナターシャ首領にとって人生初の躓きでしょう。」


インド大東亜大臣の的確な指摘に、岸大東亜大臣は頷きながら答えた。


「しかし、3月1日の『連合艦隊常置300年記念観艦式』まで介入しないと言いましたが、大丈夫でしょうか?」


ボルネオ大東亜大臣が心配そうに尋ねた。


「大丈夫だと思います。何なら、13日の『大東亜共栄圏設立100周年記念式典』まで行動を先延ばし出来ます。それ迄に再度イスラエルに侵攻すれば、エジプトがどうなるか分かりますよね。」


岸大東亜大臣の不敵な笑みに、会議室は凍り付いた。エジプトが火の海に包まれるのを想像したからである。かつて社会主義派がクーデターを起こした結果、大日本帝國と戦う羽目になったタイ大東亜大臣は、人一倍震え上がった。社会主義国家に成った瞬間、タイは火の海に包まれた。『大日本帝國は血に飢えた狼』とは、何時しか世界中に広がった大日本帝國に対する隠語である。


「そ、それなら大丈夫ですね。安心しました。」


インドネシア大東亜大臣が額の汗を拭きながら答えた。



「国連安保理の召集は何時になったのですか?」

「2月22日を目処に、調整しています。今回はソ連と協調して、エジプトに対する問題解決を目指します。」


フィリピン大東亜大臣の質問に岸大東亜大臣が答えた。


「もしこの問題が長引いて、第三次世界大戦となれば今年のオリンピックは絶望的ですね。」

「今年はブラジルでしたよね?」


インド大東亜大臣が岸大東亜大臣に尋ねた。


「はい。第三陣営諸国の盟主です。東西冷戦下で唯一の国際行事が中止になる危険性が出てきました。」

「確かにそうですね。ブラジルにその旨を伝えておいた方が宜しいのでは?」


中華帝國大東亜大臣が提案した。


「無駄でしょう。第三陣営諸国は東西両方の言う事は基本的に聞かない方針です。国連総会でも第三陣営諸国の票が重要になります。今までは私達の軍事力にひれ伏す形で賛同してきましたが、今回ばかりはオリンピックですので開催する方向性を貫くでしょう。」

「国家の威信がかかってますからね。」


満州国大東亜大臣が呟いた。



「それでは議論する内容が終わりましたので、結論を出します。」


岸大東亜大臣の言葉に各国大臣が頷いた。


「大東亜会議はエジプトに対する非難決議を可決。今回の紛争を平和的に解決する旨を求める。以上、反対意見はありますか?」


各国大臣は無言で首を振った。


「議案は可決されました。これで大東亜会議を終了致します。」




岸大東亜大臣の言葉で大東亜会議は終了した。



次回は、

何かが動き始めます。

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