重大な情報
本日は4月7日、沖縄を救う為に出撃した第2艦隊が壊滅した日です。
今尚東支那海にその身体を横たえる彼女達、
超弩級戦艦大和
軽巡洋艦矢矧
駆逐艦朝霜
駆逐艦霞
駆逐艦磯風
駆逐艦浜風
そして戦死した3721名の英霊達。
彼女達彼等の御冥福を祈って、本日を過ごしていただければ幸いです。
午後3時
首相官邸地下1階危機管理室
ソ連で入手した情報により、大日本帝國の頭脳は再び会議を始めた。
「ツァーリボンバー!?」
森井内務大臣が驚きの声を上げた。
「それではツァーリボンバーについて、杉原軍務大臣に説明していただきます。」
奥菜諜報員からの報告を説明し終えた、星野TTZS長官はそう言うと席に着いた。そして杉原軍務大臣が席を立ち、説明を始めた。
「それでは説明します。映像を。」
杉原軍務大臣は管制官に命じた。管制官はツァーリボンバーの映像を大型液晶モニターに映し出した。
「ツァーリボンバー、英語とロシア語を組み合わせた『爆弾の女帝』と言うコードネームです。ソビエト連邦・アメリカ連邦の共同開発した史上最大の水素爆弾で、正式名は『RZH−830』と言います。単一兵器としての威力は人類史上最強です。次の映像を。」
ここまで説明すると、杉原軍務大臣は再び管制官に命じた。すると映像はツァーリボンバーの実験映像が映し出された。
「1961年10月30日にノヴァヤゼムリャで大気圏内核実験が行われました。これは我が国初の核爆弾『聖処女』の3500倍の威力を有し、ツァーリボンバーの核爆発は1000キロ離れた場所からも確認されました。その衝撃波は地球を4周半しました。次、」
再び映像が切り替わり、演説映像が映し出された。
「ソビエト女帝プエルコが1961年7月10日、第22回ソビエト連邦共産党大会開催中に、10月下旬に爆発実験を行うように指示を下しました。実施日まで15週間しかありませんでしたが、実験用のRZH−830は既に完成していました。そもそもツァーリボンバーは……次のを。」
映像が切り替わり、ツァーリボンバーの内部構造が映し出された。
「ツァーリボンバーは核分裂―核融合―核分裂という三段階の反応により、100メガトンの威力を実現する『多段階水爆』です。しかし100メガトン級の爆発ともなれば、自国内の人口密集地へ多量の放射性降下物が降ってくる事が予想された為、実験にあたっては第三段階のウラン250の核分裂を抑える必要がありました。そこでタンパーが鉛に変更され、出力は50メガトンに抑制されました。設計・開発には、ソビエト連邦・アメリカ連邦の科学者が総動員され、当時の国家予算の2割強を両国は使用したと思われます。ツァーリボンバーは我が国とソビエト連邦によって開発された、一連の高出力型核爆弾の究極ともいえる存在でした。このような高出力爆弾が開発された理由は、1・核爆弾を搭載する爆撃機は低速かつ大型なので、相手に探知されやすく迎撃される可能性が高く、その為成功した時の破壊力を高めようと1発の威力を重視した。2・無人偵察機や偵察衛星等が発達する前だったので、お互いに敵陣営の軍事・工業施設の正確な位置が分からなかった。3・航法装置の精度が低かった為、爆弾投下位置の決定精度に問題があり、爆撃目標と投下地点の間に誤差が生じる他、爆弾投下時に使用するパラシュートが数の影響を受け、目標より流されてしまう。等の理由によります。」
大型液晶モニターには各国の核爆弾が次々と映し出されていた。
「つまり目標から流されても余すところ無く、消滅させれるように開発されたのです。しかしツァーリボンバーはその重量と大きさ……全長8メートル・直径2メートル・重量27トン……ゆえ、運搬が非常に困難であり、ICBMに搭載出来ませんでした。ツァーリボンバーは史上最強の爆弾でしたが、非実用的兵器だったのです。その後慣性航法装置の発展によってICBMの半数必中界が向上された事もあり、このような大型大出力爆弾の設計は完全に時代遅れになりました。近年は我が国の開発した『多弾頭個別誘導装置』を用いた核ミサイルが東側の核保有国では主流となっています。」
最後の映像は邪龍核弾道ミサイルの発射実験の模様を映し出していた。
「以上が簡単なツァーリボンバーの説明です。」
杉原軍務大臣は、そう言うと席に着いた。
「問題はそのツァーリボンバーが何故、エジプトに向かっているのか?これが問題ですね。」
保坂大蔵大臣が綾崎総理に確かめるように聞いた。
「そう言う事。そんな非実用的兵器を入手してどうするの?エジプトはツァーリボンバーを搭載するような爆撃機も、弾道ミサイルも保有して無いわよね?」
「はい。」
杉原軍務大臣は綾崎総理の質問に答えた。
「しかしイスラエルが核兵器を保有していない現状を考えるなら、エジプトがツァーリボンバーを保有するだけで周辺諸国はエジプトに跪く状況になりかねません。確かに爆撃機も弾道ミサイルも保有していませんが、地上で起爆させても良いわけですから侮れません。」
「起爆した時の被害はどれくらいなの?」
「100メガトンと言う人類史上最強の水爆が爆発しますと、エジプトはまず消滅します。続いて周辺諸国イスラエルはもとより、サウジアラビア・シリア・ヨルダン、中東・アフリカは壊滅します。放射性降下物は12時間以内に欧州・ソ連・西亜細亜へ到達し、24時間以内に我が国へ到達します。48時間以内に地球全土に拡散し、人類は滅ぶでしょう。例えその放射性降下物で滅ば無くても、100メガトンの水爆による衝撃波で地球の磁場に影響を与えます。それによりどちみち人類は滅ぶでしょう。」
杉原軍務大臣の言葉に、閣僚達は唖然とした。たかが1発の水爆が爆発するだけで『人類滅亡』と言い渡されたのである。唖然とするしか無いだろう。まあ本当にそうなるかどうかは、実際にツァーリボンバーを起爆させないと分からないが。
「ところで、ツァーリボンバーは何発製造されたの?」
松浦外務大臣が話題を変える為に質問した。
「結局2発しか製造されませんでした。研究・開発だけで莫大な予算が使用された為、製造は2発だけでした。これはソ連とアメリカで仲良く分けたみたいです。」
「となると、ソ連はツァーリボンバーを失ったと言う事?」
「……そうなりますね。」
松浦外務大臣はそれから黙り込んでしまった。綾崎総理は松浦外務大臣が口を開くのを待っているのか、黙って見つめていた。他の閣僚達も口を開くのを待っていた。
数分してから、松浦外務大臣はようやく口を開いた。
「ソ連はみすみす、外交交渉で大きな役割を果たす女帝を流出させた事になります。アメリカが保有し続けている以上、保有国と言う看板をエジプトに譲るとは思えません。このツァーリボンバーはソ連中央政府の意思とは反対に、流出した事になります。しかし輸送に使用している輸送船は海軍の物です。これはどう言う事でしょう?」
松浦外務大臣の疑問は尤な内容であった。確かにソ連がツァーリボンバーを流出させる理由は無い。1番特するのは、エジプトだけだ。この尤な疑問に、閣僚達も考え込んだ。
「まさか、GRU?」
綾崎総理の言葉に七瀬通商産業大臣が頷いた。
「そうですよ。GRU第1課長とスペツナズ第4部隊が、駐仏大使とトヨタ自動車社長を暗殺したと言ってたじゃないですか。そいつらがエジプトと手を組んだんですよ!!ツァーリボンバーを強奪し、海軍にも協力者を作って輸送させた。これしかないです!!」
「落ち着いて。」
興奮した口調で話す七瀬通商産業大臣を、隣に座っていた岸大東亜大臣が宥めた。
「確かにそうですね。それが1番あり得ると思います。」
杉原軍務大臣が頷きながら言った。
「ソ連輸送船がツァーリボンバーを輸送中であると分かった今、その輸送船の制圧が最重要任務となったわ。海軍の責任は重大よ?失敗したら………分かるわよね?」
「も、もちろんです!!」
綾崎総理の言葉に、依田軍令部総長は声を裏返させながら答えた。
「フフフ、今回は取り敢えずここまで。岸大東亜大臣、大東亜会議頑張ってね。」
「任せて下さい。」
「それじゃここまで。大東亜会議が終わったら、またここに集合ね?」
綾崎総理の言葉で、会議は終わった。
自分勝手な弁解をさせていただきます。
『電話会談』の話の中で、『ホットラインは電話じゃなく、テレタイプを使用するんですよ。』と言うメッセージを頂戴致しました。
ご心配無く。
私もそれは存じております。
しかし私の自分勝手な考えを優先して、電話のホットラインに致しました。
想像して下さい。
1部屋に大量の電話が並んでるんですよ?
壮観じゃないですか。
と言うわけで、よっぽどの事が無い限りテレタイプのホットラインに修正しません。
現実味を出している小説をご希望なら、『独楽犬先生』が執筆中の『世紀末の帝國』をどうぞ。
素晴らしい小説です。
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