復活今川義元
岡崎城にて俺は父である今川氏真や今川家臣団と共に首実験をしていた。
首の鑑定をするのは本多忠勝、服部半蔵を筆頭に実は今川元康(徳川信康)の協力者であった石川数正であった。
石川数正は史実において徳川信康の後見人筆頭であり第二の父と言っても過言で無い存在だった為、信康を救おうとしなかった徳川家康や信康切腹の原因とも言える酒井忠次が許せなかったので出奔して豊臣家直臣になったのである。
徳川家の内部事情を全て周知していた石川数正が寝返った為、徳川家康は軍法を三河式から武田式に変更せざるを得なくなった因縁があるのだ。
さらに今世では史実以上に影武者徳川家康が俺と母である瀬名姫を冷遇して史実より早く殺そうとした為に、思わぬ結果として本多平八郎忠勝が俺の最も信頼できる配下になったのと、史実でわかる通りの石川数正、そして史実において自身の子のように守り育ててきた徳川信康が切腹した際に涙で介錯が出来なかった服部半蔵しかりである。
石川数正の事前の説得により、大久保一族や本多一族、榊原康政、板倉勝重、平岩親吉達は積極的に元康と戦わなかったので許された。
逆に鳥居一族や渡辺守綱、奥平一族、松平康忠などの松平一族、内藤一族、水野一族、酒井一族はみな打首となった。
その一因としては積極的に影武者徳川家康を盛り立てたこともあるが、俺や母瀬名姫、平八郎忠勝への虐待があった。
平八郎忠勝は俺や母瀬名姫を守る為に罵声を浴びせられたり、ありもしない汚名を着せられたり、時には土下座までさせられていたのだ。
本気で戦えばそのような者達が平八郎忠勝に勝てるわけも無いのに、平八郎忠勝は俺達親子の為にぐっと耐えてくれた。
またその子息達もわざわざ山奥まで落武者狩りと称してやってきて俺や母瀬名姫、平八郎忠勝を罵り投石した。
酷い輩には矢までいかけられたこともあり、俺はその恨みを忘れることなど出来るわけもない。
上位家臣の中には童であるおれを蹴飛ばしたり、母である瀬名姫を平手打ちにして虐待したもの達もいた為、一族と表現した家門は老人から女子供に至るまで文字通り根絶やしにした。
俺の命による打ち首と根絶やしなのだが汚名は全て父今川氏真が被ってくれた。
「おほほほほほ、元康、我が嫡男よ其方は光の当たる道をいくのじゃ。闇は麻呂が全て引き受ける」
この言葉には俺だけではなく今川家臣団全ての者が涙して感動した。
しかし首実験において影武者徳川家康や酒井忠次など主要な者達の首は確認出来たのだが、どれだけ探しても黒幕の1人である岡崎方の軍師であった本多正信の首を発見することが出来なかった。
その後負けた岡崎方の首は岡崎城の周りに晒したが、影武者徳川家康と酒井忠次の首だけは即座に回収して死に化粧を施した後に、塩漬けにして尾張織田信長の元に送りつけたのである。
織田信長は送りつけられた首をみて腰を抜かすほどに驚き顔面蒼白になった。
何故ならば三河を統一したはずの徳川家が滅ぼされて当主が首となり、自身が飼っていた間者の酒井忠次もが首となって送られて来たからである。
流石の天才織田信長であろうともこの状況は理解が追いつかなかった。
しかも首桶に刻まれた紋は今川赤鳥であり、使者は今川義元様からの贈り物だと言い放ったからである。
使者の話ではまるで死者である今川義元が蘇ったかのような言い振りなのだ。
しかし織田信長が肝を冷やしたのは、今川義元を討ち取った際に奪って愛刀にしていた宗左文字が消えてしまった後に今川家に現れたのを聞いていたので此度のことと何か関連があるのではと勘繰った経緯もある。
今川義元が冥府から蘇ったか、もしや討ち取ったのは影武者であり本物は重症をおって療養していたのではないかとか考え出したらきりがない。
ただ現実を直視すると今川家を治める者が今川義元を名乗っており、今川家が桶狭間の戦い以前の力を取り戻して織田家の仇敵として復活したことである。
織田信長は気が狂いそうになっていた…前門の斎藤義龍、後門の今川義元、本願寺や従わない尾張諸勢力に絶望した。
今川館にて
三河平定を成した俺は父今川氏真と共に今川館に凱旋した。
そして道中父今川氏真と重臣達と話し合い決めていたことを宣言したのだ。
「皆の者、此度の働きご苦労であった。このめでたい日に我は宣言する。今より我は改名して今川義元をなのることとする」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお今川家万歳!義元様万歳」」」」」
上杉謙信の若い頃の名前である景虎を北条氏からとった人質兼養子に与えたことからわかるように、この戦国時代においては改名や身内の名前を引き継ぐことは珍しいことではない。
俺が今川元康を名乗ったのは三河平定の為であったが、今回の改名の理由は今川家臣団の忠誠心をあげる目的と、日の本全国に広まっている今川義元の名を引き継ぐことにより強い今川家の復活を全国に知らしめる目的もあった。
また、細かい状況を把握していない者達は今川義元の名前に多いに混乱し、妄想し、畏怖恐怖してより今川家の利益になること間違いないからである。
赤い鳥と共に戦えば勝ち続ける!