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俺の後ろをついてくる幼馴染みは鬱陶しいだけだと思っていたけど二人でいれば無敵だった

作者: 来留美

 俺の幼馴染みはいっつも俺の後ろをついてくる。

 何も言わずについてくる。

 いつから彼女と話さなくなったんだっけ?

 いつから彼女を鬱陶しいと思いだしたっけ?

 いつから彼女が俺の中で空気のようにいてもいなくても分からない存在になったっけ?

 俺って最低だよな。

 彼女はいつも俺の後ろをついてくるのに。


「ねえ、もう俺の後ろを歩くの()めたら?」


 俺は後ろをついてくる彼女の方を振り向いて言った。

 久し振りに彼女に声をかけた。


「あっ、でも」

「何で俺の後ろをついてくる訳? 鬱陶しいんだけど」

「えっ、あっごめんね。もっと離れて歩くから」

「違うんだって。ついてくるなって言ってんの」

「でも」


 彼女は下を向いてモジモジしている。

 そんな彼女を見ているとイライラしかしない。

 俺は走った。

 彼女が男の俺に追いつける訳がない。

 後ろを振り向くと彼女はいなかった。


「あっ、危ない」


 誰かの叫ぶ声が聞こえた時には俺に鉄パイプが倒れてきていた。



 俺が病院で目を覚ますと彼女が心配そうに見ていた。

 何でいるんだよ。

 あんなヒドイこと言ったのに。

 何でそんなに心配してるんだよ。


「大丈夫?」

「大丈夫だから。もう帰っていいよ」

「私のせいだから。今日は泊まるよ」

「君のせいじゃないから」

「私のせいなのよ。私がいればこんなことは起きなかったのよ」

「君には何もできなかったと思うけど?」

「私がいればあなたには何も起こらなかったの。あなたが痛い思いもしなかったの」

「意味が分からないんだけど」

「覚えてないんだね」

「え?」

「何か飲む? 私、何か買ってくるよ」

「もういいから帰って」

「ダメ、あなたを一人にはできないから」


 彼女は頑なに帰ろうとしなかった。

 その日は彼女と二人で病院のベッドで寝た。

 言い方が違うな。

 俺は自分のベッドで彼女は隣のベッドで寝た。


 次の日には俺は退院した。

 彼女はずっと俺の後ろをついてくる。

 彼女は何をしたいんだろう?

 話すこともせずに、ただついてくるだけ。

 俺はいつしか彼女の行動が気になった。


◇◇


「おはよう」

「えっ、おはよう」


 最初は挨拶だけだった。

 それがいつしか会話をするようになった。


◇◇◇


「君は前髪を切ればいいのに」

「えっ、長い方が目を隠せるから」

「一回、前髪を上げてみたら?」


 俺はそう言って後ろをついてきている彼女の前髪を上げてみた。

 彼女の大きな綺麗な目が俺を見ていた。

 彼女ってこんなに可愛いかったのか?

 もったいない。


「ちょっと恥ずかしいよ」

「見せればいいのに。絶対、前髪を切った方がいいよ」

「でも、私にはできないよ」

「それなら、俺の隣にきていいよ」

「え?」

「前髪を切ったら俺の隣で話していいよ」

「えっ、いいの?」

「そんなに嬉しいの?」

「うん。だってあなたをもっと近くで守れるからね」

「守る?」

「あっ、何でもないの」


 彼女はそう言ってうつむいた。


「話したくないならいいよ。話したくなったら教えてよ」

「うん」


 彼女はうつむいたまま頷いた。


 その次の日、彼女は激変していた。

 彼女は美少女だったみたいだ。

 前髪が短くなって整った顔が見えている。

 彼女は俺の隣で一緒に歩いている。

 彼女は嬉しそうだ。

 そんなに俺の隣で一緒に歩きたかったのか?


 彼女が美少女だと知った学校の男共が彼女に告白をしだした。

 彼女は一度も首を縦にはふらなかった。


「せっかく、いろんな奴に告白されてるのに何で誰も選ばないの?」

「私にはもう、選んでいる人がいるの」

「選んでる?」

「そう。私にはその人だけでいいの。他の人はいらないの」

「好きな人がいるってこと?」

「そうなのかな?」

「えっ、好きな人以外に何かある?」

「家族になる人」

「結婚相手ってこと?」

「そうだね」

「君にそんな人がいたなんて知らなかったよ」

「だってあなたは私の前にいたから私のことなんて見えてなかったでしょう?」

「あっ、あの時はごめん」

「えっ」

「君のこと鬱陶しいなんて言ってごめん」

「いいよ。私もそうだと思ってたから」

「君も?」

「うん。私みたいな変な人が後ろからついてきてたら私も鬱陶しいし、嫌だよ」

「何で俺の嫌がることを君は続けたの?」

「あなたを守る為なの」

「それはこの前、言ってたよね?」

「うん」

「何で俺を守るのか教えてくれるの?」

「うん」


 彼女はそう言って深呼吸をした。


「私があなたを守るのは私しかあなたを守れないからなの」

「君だけ?」

「そうだよ。昔、私達が小さい時にあなたは誘拐されそうになったの覚えてる?」

「誘拐? あんまり覚えてないかも」

「そうだよね。あの日はあなたの命が危なかったからね」

「俺の命? ショックが大き過ぎて覚えてないのかも」

「そうかもしれないね。それじゃあ、あの日の話をするね」


 そして彼女は俺達の昔話をしてくれた。


『 その日は雪が降りそうな曇り空でとても寒い冬でした。


「ねえ、かくれんぼしようか?」


 彼は私に笑いかけて言った。


「でも、寒いからかくれんぼしてて見つけられなかったらダメでしょう?」

「大丈夫だよ。君はいつも僕を見つけてくれるでしょう?」

「それはそうだけど、今日は見つけられないかもしれないし」

「僕は今日も君に見つけられて悔しがると思うよ」

「かくれんぼって見つからないようにするんだよね?」

「そうだけど君は絶対に俺を見つけるんだよ」

「分かったよ。一回だけだからね」

「うん」


 そして私は彼とかくれんぼをする。

 一から十まで数えて彼にもういいかい? と訪ねる。

 彼はまだダメみたい。

 そして次は一から二十まで数えた。

 もう一度、私は彼にもういいかい? と聞いた。

 彼から返事はない。

 いつもは一から十までしか数えないが彼がいつもより近くでまだだと言うので二十にしたのが間違いだったのかな?


「ねえ、もういいの?」


 私は周りを見ながら言った。

 彼の返事はない。


「ねえ、聞こえないの?」


 私は心配になり彼を探す。

 いつも彼を私は簡単に見つけられるのに今日は違った。

 彼の気配はどこにもない。

 近くで車のエンジンの音がする。

 私はその音の方へ行くと彼はいた。

 知らない男の人に抱えられて眠っているようだった。


「待って」


 私は男の人に向かって叫んだ。

 男の人は私も連れていこうと近づいてきた。

 その時、男の人は私の目の前で転んだ。

 私は何が起こったのか分からない。

 男の人は起き上がって私に手を伸ばした時だった。


「おい。何をしている」


 お巡りさんが私を助けてくれた。

 彼も助かった。

 彼は薬を嗅がされ眠っていた。 』


「その日、私は気付いたの」

「気付いた?」

「私はあなたを守る力があるんだって」

「力?」

「だって私があなたの近くにいたからあなたは誘拐されなくて済んだのよ」

「偶然じゃなくて?」

「あんな偶然なんて起きないよ。その証拠に私が近くにいたからあなたは大きなケガなんてしてないでしょう?」

「そうかも。この前のケガは君から俺が離れたからなのかもしれないね」

「だから私はあなたを守る為に近くにいるの」

「どうして?」

「え?」

「どうして俺を守るの?」

「だって、守れる命があるなら誰でも守るでしょう?」

「君は正義感で俺を守ってくれてるの?」

「あなたはそう思っててくれればいいよ」

「その答えは他に理由がありそうだね?」

「あなたがちゃんと思い出してくれれば分かると思うよ」

「思い出す?」

「あの日の病院であなたは一度、目を覚まして私に言ったの」

「何を?」

「教えないよ」

「ケチだな」

「ダメなものはダメなの」


 彼女は可愛い笑顔で言った。

 俺は何を忘れているんだ?

 彼女が俺を守る理由って何なんだ?


◇◇◇◇


 俺は毎日、彼女に俺を守る理由が何なのか聞いた。


「もういい加減、教えてくれよ」

「ダメ」

「俺は気になって夜も眠れないんだよ」

「それでもダメ」

「俺が寝不足で倒れてもいいのか?」

「それでも絶対にダメなの」


 彼女はそう言って俺から逃げるように前へ走った。

 俺は後ろから彼女を追った。

 あれ?

 この光景は俺達が逆になっている?

 少し前は彼女が俺を追いかけていたのに、今は俺が彼女を追いかけている?

 何で俺って彼女を追いかけてるんだ?

 俺は追いかけている彼女を見る。

 彼女は嬉しそうな顔で振り返って俺を見る。

 俺はそんな彼女の顔を見てもっと彼女の笑顔を見たいと思った。

 俺の足はいつの間にか止まっていた。


「どうしたの?」

「足が動かないんだ」

「えっ大丈夫?」


 彼女は俺に近づいた。

 それを待っていましたとばかりに俺は彼女を抱き締める。


「えっ、何?」

「君が逃げないように」

「私はあなたの何なのよ?」

「君は俺の可愛い猫だよ」

「猫?」

「君は俺の後ろをついてきていたと思ったら俺が君に近づくと君は逃げるんだ。だから気まぐれな猫だよ」

「じゃあ。あなたは私のご主人様なの?」

「そう。君だけの」

「私だけの?」

「うん。だから君は俺だけの猫ちゃんなんだ」

「ご主人様。私を撫でて下さい」

「うん。いいよ」


 俺は彼女の頭を撫でる。

 彼女は嬉しそうに笑った。

 そんな彼女の顔を見てやっと思い出した。

 あの日、俺が彼女に言った言葉を。


「ありがとう。僕は君のずっと傍にいるよ。君が傍にいてくれれば僕達はずっと幸せだからね」

「えっ、どうして?」


 彼女は俺の腕の中で俺を見上げた。

 可愛い彼女の上目遣いに俺はもう我慢ができないかもしれない。


「思い出したよ」

「うん」

「君の家族になる人は俺だったんだね?」

「うん」

「どうしてこんな大切なことを忘れていたんだろう?」

「あなたには忘れたい日だったのよ。私には忘れたくない日だったけどね」

「今日は絶対に忘れない」

「うん」

「だって君と初めてキスをする日だからね」

「えっ」


 俺は驚く彼女にキスをした。

 彼女はゆっくりと目を閉じた。



 彼女は俺を守ってくれる。

 そんな彼女を俺も守りたい。

 俺達が二人で一緒にいれば無敵なんだ。

 どんな災難も俺達には幸福へと変わる。

 俺達はそんな関係。

 だからもう離れられない。

読んで頂きありがとうございます。

楽しんで読んで頂けたら幸いです。

明日の作品の予告です。

明日は作詞作曲の仕事をしている彼が幼馴染みの彼女に婚約者ができたので曲を作ります。

しかし、そんなことを望んでいなかったのに、その曲が婚約破棄の原因となってしまいます。

気になった方は明日の朝、六時頃に読みに来て下さい。

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