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竜の飼育員、竜に襲われる  作者: 朝吹小雨
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救助来ず

【1】


その後、車は無事、緊急避難シェルターに到達した。

車の前に現れる竜は結構いたが、

狂暴な竜にあうこともなく、そのまま無視され、俺たちは無事だった。

本当に制御を失って暴走しているのだろうか?


いや、俺としては、竜は大人しくしてもらったほうがいいんだけども。

炎を吐かれたり、走り回ってきたりしたら、

たまったものではない。


シェルター内には、逃げてきた人々が多くいた。

地下にあるので、竜が襲撃しにくることはない。

意外と広く、ここだけでも大勢の人間が生活を送れそうな環境だ。


俺はひとまず安心した。


ここなら竜は追いかけてこない。

撃退する必要もない。


落ち着いたところで、

アヤノから、制御室で何があったか確認することにした。


アヤノは「制御魔術師」で、

竜の制御……つまり竜を大人しくさせる業務についていた。

制御室で非常事態が起き、負傷しながらも逃げてきたらしい。


「アヤノ。制御室で何があったか教えてくれる?」


「……私がわかるところだけ、教えますね」


一呼吸おくと、アヤノは語りだした。


「その日の夜、私は、制御室で勤務していました」


アヤノは制御室の片隅で勤務していたところ、

武装した集団に襲われた。

あまりよく見てなかったが、覆面で、銃火器類の武器を持っていたようだった。


アヤノは机だの壁だの物陰に隠れ、なんとかやりすごしたが、

抵抗した何名かが銃撃されたようだった。

銃撃された人の生死は不明。おそらく死んだだろう。

隠れていたので、声や音しか聞こえなかった。


警備員がかけつけてきたのか、

少しして、また多くの銃声が聞こえた。

けっこうな規模の戦闘があった。

それもおさまって、静かになった。


その後すぐこっそり抜け出してきたので、

今制御室がどうなっているかはわからない。


だが、今になっても制御室や警備員から連絡がない。

ということは、おそらく制御室は乗っ取られただろう。

警備隊も制圧された可能性が高い。


制御室が乗っ取られたと言っても、

いま現在、竜は暴走しているのだから、

謎の武装集団が、制御魔法まで扱いこなせていない可能性が高い。


「……私が話せるのは、ここまでです」



【2】

アヤノが話し終わったあと、

話を聞いていたシオン先輩が口を開く。


「ありがとう。

 じゃあ、今、制御室がどうなっているかはわからないってことね。

 でもその謎の武装集団……。

 最近噂されてる、指名手配テロリストの可能性が高いわね。

 制御室を奪って、竜を操って、戦力にしようと考えてるらしいし」


「私もそう思います。

 まだ確定したわけじゃないですが」


俺は昨日貼った、指名手配テロリストに警戒する貼り紙を思い出した。

本当にいたんだな、テロリストって……。

背筋が凍るような気分だった。


日常が平和すぎて、

一生会えないと思っていた指名手配テロリスト。

会ってしまうことになるとは……。

人生なにが起こるかわからない。


俺は、シオン先輩に今後のことをたずねる。


「制御室乗っ取られたんですよね。

 いま非常事態ですよね。

 これ、外部には通報してるんですよね」


「もちろんよ。

 すでに外部には通報されてる」


「あとは、軍隊が来るまで待つしかないですよね」


「そうだけど……」


「そうだけど? 何か不安があるんですか」


「軍隊がすぐに来てくれる保障はないわ」


「準備に時間がかかるとか、そういうことですか?」


「それもあるけど……他にも理由があるの」


「他にも……?」


「うん。下手したら数か月は来ないかもしれない」


えっ。

助けに来てくれるはずの軍隊が、すぐには来ない?

意味が分からない。

どういうことだろう?


リューランド始まって以来の非常事態だから、

いろいろ準備がかかるのは想定内だけど、

まさか数か月とは。


「シオン先輩。冗談ですよね。

 軍隊到着が数か月もかかるなんて」


「あのね。話すと長くなるけど……」


シオン先輩は、その理由を語りだした。



つづく

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