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竜の飼育員、竜に襲われる  作者: 朝吹小雨
1/22

愛しの飼育竜

【1】

剣が折れる。足がもつれる。こける。

折れた剣を捨てる。他に武器はないか。

いや、もう武器はない。銃弾も尽きた。


素手で戦うことはできないか。

無理だ。

今、目の前にいる敵は、竜。

鎧のようなウロコ、山のように大きな体。

素手でどうこうできるほど、甘い相手じゃない。


目の前に、羽を広げた竜が迫る。

竜は咆哮する。剣のように鋭い牙が、はっきりと見えた。

あんな鋭い牙に噛まれてしまったら…。俺は背筋が冷えるのを感じた。


竜の牙がせまる。

むわっとした熱気を、体に感じる。竜の息だ。


そして、俺の肩に、竜の牙が突き刺さる。貫通。

肩がコンニャクのようにぐにゃりとゆがむ。


「うわあああああああああっ」


悲鳴をあげる。だが痛みはない。

なぜ痛みはないのかって? これは現実ではないからだ。


「訓練失敗」


俺の目の前に、そんな赤い文字が表示される。

直後、竜の姿がシュウウウと消える。煙のように、消える。


そして目の前が真っ白になったあと、おぼろげながらも

少しずつ、まわりの風景がはっきり見えてくる。


数名の人影が、俺の目にうつる。

人影のうち、1人が俺の前に近寄る。


「ユート君……大丈夫?」


だんだん、人影の顔がはっきりしてくる。

長い黒髪。黒い瞳。全体的に、少し冷たい感じのする肌色。

この人は、そうだ。俺の先輩。名前は…。


「シオン先輩……」


「もう五度目の失敗よ。しっかりしなくちゃ駄目でしょう?

 あなたは、竜を飼育しているんだからね。

 竜が暴走したらどうするの。本番じゃあ、何度も死ねないわよ。

 今の訓練みたいに、バーチャルシミュレーションとは違うんだから」


あきれたように言う。


「すいません、俺、もっとがんばりますから」


とは言え、もう五回も食われてしまったので、すっかり意気消沈している。


1回目は、火竜に全身焼かれる。ウェルダンな焼き加減で食われる。

2回目は、飛竜に捕まって、地面にたたきおとされてから食われる。

3回目は、雷竜に雷うたれて感電したあと食われる。

4回目は、海竜に海の底にひきずりこまれ、窒息しながら食われる。

5回目は、甲竜に食われる。銃も剣も効かなかった。


さんざんだ。なぜ勝てぬ。


「ほんとかしら」


「ほんとですよ」


シオン先輩は、俺の目をじっと見つめる。

不審そうな目だ。

……五度も失敗してれば、不審な目にもなるだろうな。


「……ふふ、まだまだ半人前ね。精進なさい」


なんかよくわからないが、許してくれたようだ。

シオン先輩は、少し笑みを浮かべて、細い指で、長い黒髪をかきあげる。

隠し事してる弟を、からかうかのような笑みだ。


言葉を続ける。


「ユート君。あなたは竜の飼育は手馴れてきたけど、

 訓練の腕前はまだまだね。

 もっと、これからいろいろ教えてあげないといけないわね」


「よろしくお願いします、シオン先輩」


「よろしくね。

 さて。今日の訓練はこれまで。

 他のみんなも、竜に襲われたとき、ちゃんと戦えるようにするのよ」


シオン先輩は、まわりのみんなにも声をかける。

まわりのみんなは、同僚の飼育員たちだ。新人が多い。

みんな一様に「はーい」という返事をする。


「シオン先輩。竜に襲われたときの訓練をするのは

 いいのですが、竜に襲われることなんて

 実際ありうるんですか。

 飼育されてる竜はみんな大人しくて、暴走しそうには見えません」


飼育員の1人が、シオン先輩に疑問を話す。

その疑問ももっともだった。

俺が「竜の飼育員」になってから、半年は経つが、竜の暴走など

一度たりともない。本当に暴走することなんて、あるのだろうか。


「私が赴任してきてから数年たつけど、そういうことは一度もないわ。

 でも万が一に備えて訓練するのは、大事なことなのよ」


「ですよね」


「竜が魔法で制御されているとは言え、

 もし制御がうまくできなければ、暴走することはあるのよ。

 そうなった場合は……大変なことになるんだから」


「僕たち、食われちゃいますね」


「そうよ。ユート君なんて、五回は死ぬことなるわね」


シオン先輩は、冗談っぽい笑みを浮かべて、俺のほうを見る。

そういうこと言うの、やめてくれ。

みんなに注目されて恥ずかしい。

俺は、シオン先輩や他のみんなから、顔をそむける。


「シオン先輩。からかわないでください」


「ふふふ。ごめんなさい、ユート君。

 あっ、そうだ。

 アリサを見かけなかった?」


「アリサですか。そういえば、姿を見かけませんね」


「アリサ、そろそろ訓練の時間なんだけど、

 まだ来てないの。

 探してきてくれないかな。たぶん森林エリアにいると思うけど」


「わかりました。連れてきます」


アリサは、俺の同僚の飼育員だ。

半年前、俺と同じ時期に、飼育員になった。


生まれ故郷が俺と同じで、話題もあうし意気投合しているんだが、

いまいちトロいのが玉に傷というところか。

竜が暴走したら真っ先に食われそうだ。


「森林エリアは遠いんで、飛竜で移動していいですか、シオン先輩」


「もちろんよ。外のほうに、飛竜が待機しているから

 それに乗って森林エリアに行けばいいわ」


シオン先輩の言うとおり、訓練所の出入口を抜けると、

そこには一匹の飛竜が待機している。

人間よりもずっと大きくて、小型飛行機くらいの大きさはあるだろうか。

飛竜の皮膚は青黒く、なかなか重たそうな色で、空のさわやかさを感じない。

でも、そんな重たそうな竜が、さっそうと空を飛ぶのだから、なんだかすごい。


そういえば、この飛竜に、訓練で何回も殺されたなぁ……。

すばやくて、空を飛び回ってて、攻撃が当たりにくくて。

ツメも鋭くて、これにひっかかっただけで、皮膚から血がどばどばと。

訓練だから痛くないとは言え、気が滅入る。


なんだか嫌な気分になってきた。

まあいいや。もう今日の訓練は終わったんだ。

俺はあまり良い気分がしないまま、飛竜にまたがる。

飛竜の殺し方はへたくそだけど、飛竜の乗り方は、得意なんだぜ。


ばさっ。


飛竜の翼が開く。ふわりと浮く。地面がだんだん遠くなる。

あんなに大きかった訓練所が、今は手のひらに乗りそうなくらい小さい。

まるでおもちゃの家。


さて、森林エリアを目指さねば。

飛竜の背中に乗って空を飛んでいると、俺が生活している島の全景が見えてくる。


海に囲まれた緑色の島、リューランド。

ここは、今、俺が「竜の飼育員」として働いている島。


島では、多くの竜が生息している。

竜たちは魔法で制御され、人を襲うことはない。

万が一、魔法制御が消えれば、竜は人を襲うわけだが。

そんなことになっても身を守れるよう、俺たち「竜の飼育員」は「訓練」しているわけだ。


しばらく飛んでいると、眼下に、ぽつぽつと建物が見えてくる。

建物の横には海。海には、船も停泊している。

ここは港町エリア。

リューランド島と、外の大陸をつなぐ、船が行き来するエリアだ。

船には多くの観光客が乗り込んでおり、日々、リューランドを訪れる。

このリューランドは、観光業で収入を得ている。

竜たちは、観光客の見世物なのだ。言い方は悪いが。

動物園の竜版。それがリューランドなのだ。


港町を抜ければ、森林エリアが近い。

俺は、少し飛竜の高度を落とす。


【2】


森林エリア。

リューランドの中でも、木がいっぱいあるエリアだ。

アリサはどこだろう。飛竜に乗りながら、探してみる。


「あ、いたいた」


動く人影を見つける。

もう少し近づいてみると、アリサの姿が、おぼろげながらも見えてくる。

アリサの横には、小さな竜もいる。

小さい竜とは言っても、人間の大人ぐらいの大きさはあるが…。


「アリサ!」


飛竜を着地させ、俺はアリサに声をかける。


声をかけられたアリサは、こちらに顔を向ける。

アリサは落ち着いた表情をしている。


「ユート……」


「アリサ。そろそろ防竜訓練の時間だ。

 早くシオン先輩たちのところに行くんだ」


「行きたくないなぁ」


アリサは、あんまりうれしくなさそうな表情をする。

声も小さい。


「訓練がめんどくさいのはわかるけど、行かなきゃ怒られるぞ」


「めんどくさい、というわけじゃない。

 訓練とは言え、竜を傷つけるのが嫌なの」


「アリサは本当に竜が好きだな。

 でも心配する必要ない。

 本物の竜を傷つけるわけじゃない。

 あくまで訓練だ。ニセモノの竜を倒すだけだ」


アリサは竜が好きだ。

飼育もうまくて、先輩たちから一目おかれている。

竜たちを愛情をもって育てているのだ。

だからこそ、なのか。

竜を傷つけるような行為を、あまり好まない。

それは訓練でも同じことだった。


「わかっているよ、ユート。ありがとう。

 私、ちゃんと訓練に行く。

 でも割り切れないの……。

 大切な竜たちと戦うなんてことが」


だんだん表情が沈んでいく。


「……ずいぶん竜を大事そうにしているな。

 ところで、横にいる小さな竜は、アリサが育てているのか?」


「ええ。この子が生まれたときから毎日世話をしているの」


アリサは、そう言って、横にいる小竜の顎をゆっくりとなでる。

小竜は気持ち良さそうだ。


「ねぇ、ユート。

 もし、竜たちが襲ってきたとしたら……。

 私を助けてくれる?」


ああ、そのとおりだよ。

と言おうとして、やめた。

俺はさっき訓練で竜にボロ負けしているのだ。

アリサを助ける自信はない。


「ははっ! そうだな。一緒に逃げ回ろう!

 シオン先輩は超強いからなんとかしてくれるよ!」


困ったときの他人頼みである。

冗談と受け取ったのか、アリサは「くすっ」と笑うのだった。

ひだまりのような優しい笑顔だった。


「ところで、ユート。

 話は変わるんだけど」


「ん?」


「この貼り紙を。園内のわかりやすいところに貼ってくれない?

 私だけじゃ手が足りなくて」


アリサは、ごそごそと何かを取り出し、俺に見せる。

貼り紙だ。

その貼り紙の銀髪の男が、俺を鋭い目でにらみつけている。


「指名手配犯…!?」


「そう、指名手配犯のポスター」


「誰だこれ」


「知らないの? テロリストだよ」


「そうか。

 でも園内にこんな物騒な奴の貼り紙なんて似合わないぜ」


「仕方ないよ。だって最近、ここ周辺でよく見かけるんだって。

 だから特別警戒体制になってて、貼り紙を貼らなきゃいけなくて」


「テロリストが園内をうろついて何したいんだ?

 遊びに来てるだけなんじゃないの」


「目的はいろいろ言われてるけど、

 一番有力なのは、『竜をテロの道具に使う』という説らしいよ」


「竜を……テロの道具に? どういうことだ」


「園内の竜は、『制御室』から発している

 制御魔法で大人しくなっているの。

 でも、もし制御室がテロリストの手に渡ってしまうと、

 竜を思いのままに操れてしまうんだって」


「そんなバカな。

 妄想みたいな絵空事だな。

 起こるわけないよ、そんなこと」


「そうだね。

 仮に、もしそうなっても、

 軍隊が駆けつけるから、私たちも安心だよ。

 竜を殺されるのは……嫌だけど」 


「ま、用心に越したことはないな。

 俺が貼り紙貼ってくるから、

 アリサは訓練に行ってくれ」


こうして、俺はアリサと別れ、指名手配犯の貼り紙を貼る仕事を手伝うことになった。


【3】


指名手配犯の貼り紙を貼ることになってしまった。

こんな貼り紙は、目立つところに貼ったほうがいいだろう。


そう思って向かった先は、園内の中でも最も人通りの多い、「中心部」。


ここには、観光客宿泊用のホテルがあり、買い物もできる大型施設もある。

生活しようと思えば普通に生活できるレベルだ。


こんな人通りの多いところに飛竜で降りると迷惑なので、

ちょっとはなれた場所で降りる。

おもい足取りで、とりあえずどこかに目立つ壁がないか探す。


「あ、すいません! 園の職員の人ですか?

 ちょっと聞きたいことが……」


俺は飼育員であり職員でもあるので、制服を着ている。

そのため、ときどき観光客に話しかけられる。

たいてい道案内だ。トイレだか、迷子だか……。

なんだか大変だが、これも職員の務めだ。



いろいろしてたら貼り紙を貼るのが遅れてしまった。

やれやれだぜ。


広場のあたりにでも貼ろうかな。


ん? 広場のあたりが騒がしいな……

人々がざわついている。

あまり楽しそうな雰囲気ではない。


「竜を! 解放せよー!」

「竜を! 解放せよー!」


広場から、スピーカーのような大声が聞こえてきた。

彼らは、少なくとも、紳士的な観光客ではない。

遊びに来ているわけでもない。

竜の解放を訴えている人々だ。

人々は、立て看板を振り回し、音楽を鳴らし、大声で「竜の解放」を訴えている。


「我々、『竜の解放団』は、リューランドによる、

 竜の扱いについて、異義を申し立てたい!

 本来自然に生きる竜を、無理やり復元させ、

 無理やり操り、人々へ見世物にする。

 その倫理に反した行為、断じて許しがたい!

 今すぐ竜を解放し、自然に戻せ!

 竜を! 解放せよー!」


竜を自然に戻せ。それが彼らの主張だ。

たしかに俺も、無理やり竜を操り、見世物にしていることについて、

罪悪感が無いわけではない。

だが、竜はあまりに強すぎる為、制御が必要なことも事実だ。


俺はいつものように彼らを無視すると、粛々と貼り紙を貼り続けた。


その後「竜の解放団」の人々は、警備員に注意され、そのまま広場から退去された。

これも、いつもの光景だ。見慣れてしまった。

見慣れてしまった、ということは、毎日のように行われているということだ。


「あなたはポスター貼りの仕事をしているのか」


突然話しかけられた。

背の低い銀髪の女の子だ。

無表情で、少し幼い顔つきだな。

俺より少し年下だろうか……


俺が答えるより早く、銀髪の少女は言葉を続けた。


「これも貼ってくれないか」


「竜を解放せよ!」という、

竜の解放団の主張がデカデカと掲載されてるポスターだ。

そんなの貼れるわけないだろ!


「それはちょっと貼れないな」


「あ、そう。じゃあ自分でやる」


「か、勝手に貼るな! 許可されてないだろ!」


「許可されてないという証拠はあるの?」


「屁理屈を言うな」


「話にならない。私のほうで貼っていく」


話にならないのはどっちだ!

俺は、銀髪の少女を制止しようとした。


「私だけ止めても無駄。みんなすでにやってる」


マジかよ。俺は周囲を見る。

あちこちの壁にべたべたと貼られた、「竜の解放団」ポスター。

頭が痛くなってきた。

そういえば、先輩が「最近ポスター剥がしの仕事が多い」と嘆いていたな。

こういうことか……。うんざりするぜ。


【4】


園内の掃除をしていたら、夕刻になっていた。


「貼り紙を貼る作業したあと、今度は貼り紙を剥がす作業か」


ポスターだけではない。

ご丁寧に「竜を解放せよ!」の落書きもある。園内の壁のあちこちに。

俺は、掃除用具をガチャガチャ揺らしながら、落書きも消していった。


正直、いつ来るかわからないテロリストより、

日常的にやってくる市民団体のほうへの対処に苦労している気がする。

困ったものだ。


掃除している間、

あの「竜の解放団」に所属しているであろう銀髪の少女が脳裏によぎる。

あんな小さい女の子まで所属しているのか。

親の影響なのだろうか。将来が心配だ。


そんな気持ちで掃除していると、

俺の近くに、ある人がやってきた。

スーツを着た初老の男性が、不機嫌そうな顔で。


俺はこの初老の男性を知っている。

リューランドを運営している「役員」だ。


役員は普段、リューランド島から離れた本土のほうに住んでいるが、

ときおりこうして、リューランドを視察しにくる。


正直あまり話したくない相手だ。

話す内容は「叱咤激励」といえば聞こえはいいが、

お小言や説教ばかりであまりいい話をしてくれない。


「君は、たしか『竜の飼育員』だったな?

 君は掃除をしに、このリューランドに来ているのかね?

 まったく、困ったものだ。

 君にはお金を支払っているのだから、

 竜の飼育をしっかりやってもらいたい。

 あと防竜訓練も、あと経費削減も

 あと来客サービスも、あとセキュリティの徹底も…

 あと〇〇も、あとXXも、あと■■も……」


この「役員」とかいう男、いろいろ仕事を頼んでいるわりに、

お賃金は上げてくれない。


仕事を増やすわりに賃金を上げてくれない経営層(役員)。

ある意味、テロリストや市民団体以上に厄介だ。

こいつ竜に食われてほしいな…。

と毎回思ってしまう。


だいたい、俺は、竜の近くで世話する危険な仕事なのに、

あまりお賃金が高くないし、本土の会社員よりお賃金は低いのである。

これを憤らずにいられるか!


はっ。

ここまで書いて気づいたが、

俺のまわりってもしかして……嫌な奴だらけ?


がっくりときた。

仕事(訓練)もうまくいかず、

テロだのデモだのブラック企業だので

この世の地獄を感じた。

俺の頭にはちらちらと「転職」の二文字が躍る。


だが、俺はすぐに辞めるなんて行動はとれなかった。

お金の問題ではない。

わが愛しの飼育竜が俺を待っているからだ!


今帰るぞ! エルミー!(※飼育竜の名前)


【5】


俺は飼育場に戻るなり、すぐにエルミーに抱き着いた。


これが人間だったらドン引きされるが、

相手は竜だ。問題ない。


エルミーもしっぽを振って、俺を出迎える。

竜なのでざらざらの皮膚だが、

なぜか母の胸に包まれたかのように、心地よい。


エルミーは、人間より少し大きいくらいの竜で、

だいたい熊が二足歩行してるくらいの大きさだろうか。


空も飛べるしかっこよくてかわいい!

おっと、親バカみたいになってしまった。

エルミーと出会って半年。

苦楽をともにした仲だ。


エルミーのつぶらな瞳をじっと見る。

少女の瞳のようなみずみずしさだ。竜の目とは思えない。

そんなエルミーの顔を見ると、嫌なこともすぐに忘れてしまう。


俺は恋人がいないけど、エルミーさえいればいい。

と思ってしまって婚期を逃してしまいそうだ。

やばいやばい。

俺は人間界に復帰できるのだろうか……


エルミーの飼育とスキンシップを堪能したあと

俺は従業員寮に帰宅し、眠りについた。

エルミーを模した抱き枕を抱きながら…。


このとき俺は、テロリスト指名手配犯のことなどすっかり忘れていた。

明日も、同じように、竜を飼育し、防竜訓練し、

厄介なデモに巻き込まれ、役員にこき使われる日々が来る。

そう思っていた。



つづく。


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