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中間話1 プロローグ 王都の城門にて

本日はこの小説を初投稿してから丁度一ヶ月になります。

右も左も分からない状態から書き続けた、長いようで短い一ヶ月でした。

いつも読んでいただきありがとうございます。

 ミロスラフ王国・王都ミロスラフの城壁を朝日が照らす。

 王都の街並みに朝を告げる鐘が鳴り響く。

 あちこちから窓を開ける音が響き、朝食の支度をする煙が上がる。


 ――って感じだよ、多分。


 だって僕、結局王都の中には入ってないから。王都の街並みなんて欠片も見てないから。


 今、僕がいるのは王都の城壁の外、王都騎士団の壁外演習場と呼ばれる場所だ。

 広めの運動公園、といった趣の一角に僕のテントが張られている。


 そう、僕のテント! ついに脱・青空駐機!


 テントでの一夜も空け、僕はすがすがしい気持ちで朝日を迎えていた。

 まあ、相変わらず睡眠のいらない四式戦ボディーなんですけどね。

 さらに僕から最大限離された場所には多くのテントが立っている。

 先月ミロスラフ王国に攻めてきた、隣国ゾルタの捕虜の方々のテントである。


 こんな場所で再会するとは・・・


 昨日は正に感動の再会だったよ。

 ヒヨコの群れの中に荒ぶる猫を入れても、あそこまでの反応にはならないんじゃないかな?

 震える声で『オレ達をそいつのエサにするつもりか!』って言われた時には正直心が痛んだよ。

 また将ちゃんことカミル将軍が『お前達の中に態度が悪いヤツがいたらどうするか分からん!』なんて言うもんだから、阿鼻叫喚の嵐だったよ。

 まあ将ちゃんに対する援護射撃のつもりで、僕がエンジンをブイブイいわせたのもあるかもしれないけどね。

 ティトゥがドン引きだったよ。


『いや、あれは流石に俺も普通に引いたぞ』


 と、将ちゃんに言われた気もするけど気にしない。




 我々マチェイ家御一行様が王都の門に着いたのは、昨日の午後を過ぎたころだった。

 王都の門は確かに大きかったよ。


 僕が通れるほどではなかったけどね。


 その場に漂う微妙な空気ったらなかったよ。

 髭モジャおじさんことアダム班長なんて両手で顔を覆ってたからね。

 いや、最初から気付いとこうよ、あなた達王都に住んでいる人なんですよね?


 とりあえずパンチラ元第四王子の豪華な馬車だけ王都に入って行ったけど、我々は問い合わせに行った門兵が帰ってくるまで、門の横で待機となった。

 門を出入りする人達に、めっちゃジロジロ見られましたよ。

 まるで動物園のパンダの気持ちだったね。

 割と目立ちたがり屋なところのあるティトゥでさえ、ツバの広い帽子を目深にかぶって操縦席の中で小さくなってたからね。


 幸いなことにお迎えはすぐにやってきた。

 どうやら先ぶれに走った騎士団員がいたようだ。その騎士団員が彼らの親分と連れ立ってやってきた。


『久しいなマチェイ殿!』

『カミル将軍! わざわざ将軍自らお越しにならなくとも!』

『はっはっは、お前の小言も久しぶりに聞く。今回は遠路はるばるご苦労だったな』


 パンチラ元第四王子のデキる方の兄ちゃん、将ちゃんことカミル元第二王子である。今は王族から臣籍降下して王都騎士団の団長に任命されている。

 団長なの? 将軍なの? 正解は「どっちも」だ。

 団長は役職で将軍は階級だ。

 役職は罷免されることがあっても、階級は基本的には上がりっぱなしで降格はされない。

 王都騎士団団長カミルバルト・ヨナターン将軍。

 連合艦隊司令長官山本五十六海軍大将、みたいなものだ。

 ややこしいので僕の中では、今後も”カミル将軍”表記で統一しよう。


『マチェイ嬢もあの時以来だな』

『お久しぶりにお目にかかります、将軍閣下』


 ティトゥも挨拶を返す。

 こういう場での挨拶は、上の者が声をかけるまで下の者は話しかけてはいけない。

 マチェイ家長男・ミロシュ君との授業で習ったよ。


 カミル将軍は周囲を見渡すと髭班長アダムに尋ねた。


『ネライ卿がいないようだが?』


 パンチラ元第四王子がいないことを不審がっているようだ。

 アダム班長が顔をしかめた。


『無事役目を終え、今はおそらく屋敷の方におられるかと』

『警護相手を門の外に残して役目を終えたもないだろうが』


 カミル将軍が呆れた顔で言い放った。まあそうだよね。

 パンチラ元第四王子は、昨日の「四式戦闘機と行く空の絶叫ツアー~嬉ションもあるよ~」のダメージが今日になっても抜けきらなかったらしい。

 ずっと馬車から一歩も外に出なかった。

 そういえば出発前に町長の洗濯場に捨てられていた、あの汚れたズボンは結局どうなったんだろう。

 綺麗に洗って町長が履くのだろうか?


 門の横に付いている普通のドアから、役人風の男が汗を流しながら走ってきた。

 てか、あんなところにドアがあったんだ。

 夜はあっちを使うのかな?


『なんだ、遅いぞ』

『こ・・・このヘンなのがドラゴンですか?!』


 僕を見てビビる役人の男。

 そうです、私がヘンなドラゴンです。アイーン。

 この場にいる全員から睨まれ、さらにビビりまくる役人の男。

 今ここは彼のアウェーと化した。

 君、周囲から一言多いと言われた事はないかね?


『で? ユリウス宰相閣下はどう言っておるのだ?』

『王城の裏の広場へ通すようにと・・・』


 カミル将軍が役人の男の背後を見ると、彼に向かって顎をしゃくった。


『門を通れないようだが?』

『そ・・・それは・・・確かに』

『なら飛んで行くしかないが、空から王都の上を横切って王城に着陸しても良いのか?』

『そ・・・そんなことをされては困ります!』


 困るそうである。じゃあどうすりゃいいの?


『では具体的な方法が見つかるまで俺が預かる。おい、騎士団の壁外演習場まで案内してやれ!』

『待って下さい! そんな勝手に!』


 振り返り、歩き去ろうとするカミル将軍に慌てて声を掛ける役人の男。

 カミル将軍は、ザッ! と音を立てて立ち止まった。

 おおっ、何だかスゴイ迫力だ。

 将軍の背中から立ち上る剣呑な気配に、今更ながら虎の尾を踏んだことに気付く役人の男。


『ならば貴様どうしろと言うのだ?』

『そ・・・それは・・・至急上役に相談して・・・』


『それまでの間、俺が預かると言ったのだろうが!! それとも貴様、この者達をここで待たせろとでも言うのか!!』


 カミル将軍の一喝に目を白黒させて硬直する役人の男。


『貴様、名を何という! 貴様の上役は誰だ! 俺が直接怒鳴り込んでやる!』


 役人の男は汗をだらだら流しながら、マナーモードの携帯電話のように震えている。

 舌が引きつって声も出せないようだ。


『おい!』

『ひいっ!』


 話にならない。カミル将軍はそう思ったようだ。

 じろり、とひと睨みすると踵を返した。もう振り返る事すらしない。

 そしてヘナヘナとその場に崩れ落ちる役人の男。

 君はもう少し言葉を選んで話そうね。見ているこっちがハラハラするよ。


 ティトゥパパがカミル将軍に近づくと小声で話しかけた。

 かなり小声での会話だが、ドラゴンイヤーは地獄耳。大人の会話をバッチリ拾う。


『あんな風に言ってしまって、よろしかったのですか?』

『・・・お前に忠告しておくが、宰相はドラゴンのことを警戒している。王城の裏庭に隔離されたら、お前達全員式典が終わるまで一歩も外には出られんぞ』

『なっ・・・』

『参加させるために呼んでおいて何を言っているのかと思うだろうな。呼んだ、という事実のみが欲しいんだよ、あの男は。

 今回の戦いで姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーが成し遂げた戦果は非常に大きい。いや、大き過ぎた。

 式典で姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーに今以上に民の支持が集まるのは困るが、姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーを王家が無視したとなればそれはそれで民の心が離れかねない。』

『・・・・』


 カミル将軍の口から姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーという言葉が出るたびに、ティトゥパパが情けない顔になるのが面白い。

 カミル将軍、わざと言ってません?


 カミル将軍は大きな手でティトゥパパの背中をバシッと叩くとここからは普通の声で言った。


『なに、心配するな。騎士団敷地内にいれば大丈夫だ。俺の目が黒いうちは好き勝手なマネはさせんさ』


 その声を聞いて、僕の操縦席に座っているティトゥから緊張が抜けるのが分かった。

 ティトゥパパもそのことに気が付いたのだろう、カミル将軍に頭を下げた。

次回「中間話2 王都のメイド少女」

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― 新着の感想 ―
[一言] 生物には見えなくね?って思いはするけども、翼があってなんか喋るし勝手に動くし、多分生き物だな!って勘違いしても仕方ないか。  
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