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その14 探索計画

 僕とティトゥの黄金都市探しが始まった。

 カルーラから頼まれた金策のため――というのはほとんど名目で、実際は”黄金都市”というロマン漂うワードに惹かれたからだったりする。

 だってカッコいいよね。砂漠に埋もれて伝説となった黄金都市。

 TVアニメの大泥棒三世のTVスペシャルで使われたりしそうじゃない?



 そんなわけで、僕達の行動は先ずは現地の下調べから始まった。

 僕とティトゥは砂漠の周囲をぐるりと回って、調査範囲を確認する事にした。


 四日かけて得られた結果は驚くべきものだった。


『まさかこれ程大きいとは思いませんでしたわ』


 ティトゥが驚いたのはこの国の砂漠の大きさ。

 なんと南北におよそ1300km。東西におよそ1100kmの範囲に広がっていたのだ。


 まさか世界第二位のタクラマカン砂漠の倍以上のサイズとは思わなかったよ。

 とはいえ流石に世界第一位のサハラ砂漠には到底かなわないんだけど。

 サハラ砂漠の面積はアメリカ合衆国の面積に匹敵する、とネットで読んだ記憶がある。スケールが大きすぎてちょっと想像出来ないね。


 話を戻そう。

 想像以上の砂漠の大きさに、外周をぐるりと一周するだけで僕達は四日もかかってしまった。

 この砂漠の中から一つの都市を探すのか・・・

 干し草の中から針を探すような作業になりそう。

 

白図(はくず)が出来ました』


 ティトゥのメイド少女カーチャが目の前の大きな布から顔を上げた。

 板に布を張ってキャンバスにしたもので、そこに縦に13マス、横に11マスの方眼が引かれている。


 縦13マスはすなわち砂漠の南北の距離1300km。同じく11マスは東西の1100km。

 つまり1辺あたりの距離は100kmとなり、1マス辺りの面積は10000平方kmとなる。

 この10000平方kmを1ブロックとして、砂漠を縦横13×11で143個のブロックに分けて調査しようというのである。


 もちろんこれはあくまでも大雑把な区分けなので、実際には砂漠ではない箇所や、人の手の入っている部分も含まれている。

 そういった場所を除けば更に調査範囲を絞る事が出来るだろう。


 僕の説明に水運商ギルドのマイラスはポカンと大口を開けた。


『本当にザトマ砂漠の外周を回って来たんですか? たった四日で?』


 えっ? そこから? 最初の最初にした話じゃん。

 そこは信じて貰わないと話が進まないんだけど。


『ハヤテなら可能ですわ』

『ハヤテ様は船よりも遥かに速い』

『・・・そう、なんですか』


 ティトゥとカルーラにキッパリと言い切られて、釈然としない様子ながらもマイラスはひとまず疑問を飲み込んだようだ。

 まあ毎日この町に戻って来てたから四日もかかったけど、現地で泊まってたら三日もかからなかったんじゃないかな?


『ハヤテ様はオアシスと隊商(キャラバン)道の場所を教えて欲しいと言っている』

『いやいや、いやいや! そんなの私に、というかこの国の誰も分かるわけないじゃないですか!』


 この国の誰にも分からないんだ。

 どうやらこの国には砂漠の地図はないようだ。


『いやまあ、あるにはありますが、方角と大雑把な距離が書き込まれているだけで、ハヤテ様が求めているような正確な場所までは分かりませんよ?』


 ああ、大体の場所と名前さえ分かればそれでいいよ。空から見て場所が確認出来たら、この白図に書き込めばいいんだし。

 てか、そのための白図だから。


『・・・分かりました。後で私の地図を持って来ます』


 それはそうと、砂漠の外周を飛んで分かった事だけど、砂漠の北西の一部は帝国との国境に接していた。

 地図も無いんじゃ、もし帝国が砂漠を通って進軍して来たらどうするつもりなんだろうか?


 僕がそう尋ねるとカルーラに呆れられた。


『この国に砂漠の地図が無いのに、どうして帝国が砂漠を通って来るなんて考えたの?』


 ・・・あ、そうか。


 この国に地図が無いという事は、他国にも無い。当たり前だ。

 地図も持たずにあてもなく砂漠を進軍したら、部隊丸ごと遭難するかもしれない。

 砂漠での遭難は死に直結する。

 どんな無能が部隊全滅の危険を冒してまで砂漠に軍を進めようとするだろうか?


 けど、本当にマイラスの言うように砂漠の地図は存在しないのかな?

 国の中にコントロールから外れた土地があるのは、治安維持の上でも良くないと思うけど。

 実は王家はちゃんと地図を作っていて国民には秘密にしている、なんて事はないのだろうか。


『ハヤテ様のお考えは分かりますが、おそらくそれは無いでしょう』


 マイラスが言うには、この国は六大部族が三年ごとに持ち回りで国王代行を務める性質上、調査や研究などといった時間がかかる上に直接的な利益が出ない分野は、後回しにされる傾向にあるんだそうだ。


『砂漠の調査ともなれば、莫大な時間と予算を必要とする大規模な計画となります。この国が国王代行制度を取っている間は難しいでしょう』


 なるほど。けど、町や街道等のインフラの整備とか、ある程度は長期的な展望をもってやっていかないといけないジャンルってあるよね。

 そういうのまで避けてたら、国として立ち行かないんじゃないのかな?


『それなら問題無い。そういうのは大臣の仕事』


 カルーラが言うには、王家の部族の下には実務を担当する大臣がいるんだそうだ。

 彼らはトップが交代しても、実務に就いたまま仕事を続けるという。


 これはあれだな。日本で言えば官僚だ。

 政治を行う政治家は国民によって選出されるけど、行政を行う官僚は霞が関に就職した公務員だ。 

 選挙で内閣がガラリと代わっても、その下の官僚は入れ替わらない。


 つまりこの国では、国政の決定権は王家の部族を代表する国王代行にあって、その決定を受けて実際に政務を行うのは大臣を中心とした官僚達、という訳か。


 ティトゥがブロックの数を数えて呟いた。


『143箇所ですか。多いですわね』


 そうだね。調査するだけで何日かかるか。


『あの、本当にお二人だけで調査するつもりなんですか?』


 そりゃあまあ。

 1ブロックは約10000平方km。

 実際はほとんどが砂や岩ばかりの荒地とはいえ、かなりの面積だ。

 とはいえ、僕が空から探せば案外手間はかからないんじゃないかな?

 最も、こればっかりは実際にやってみないと分からないけど。


『は・・・はあ。そうですか』


 どうやらマイラスは僕の言葉がイマイチ信じられないみたいだ。

 理解する努力を放棄しつつあるようような気がする。

 まあいいけど。




 先ずはカーチャに作ってもらった白図に番号を振っていく。

 南から北の13マスにA~M(のアルファベットに相当するこちらの世界の文字)。

 西から東の11マスに0~10。


 この区分けでいくと、この町の位置は”K9”という事になる。

 砂漠の中でもかなり北東寄りである。

 さらに”M0””M7””M8””M9””M10””H10””A0”の7ブロックには砂漠が存在しないので除外していいだろう。


 まあそれでも後、135ブロックも残っているんだけどね。


『どこから始めますの?』


 そうだな。近場からぐるりと時計回りでいいんじゃない?

 端っこの方は期待出来ないから、先ずはそこから埋めていこうか。


『分かりましたわ』


 こうして翌日から僕達の黄金都市探しが本格的に始まる事になった。

 果たして伝説の都市は見つかるのか? 黄金都市は本当に存在していたのか?

 乞うご期待。

次回「探索一日目」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] また国防を揺るがす行為をさらりとやっちゃうハヤテ一行 [一言] 王様が変わっても大臣は継続で腐敗していくとか、某国の現状を見ているようだ(遠い目
[良い点] 地図つくりはすっかりこのコンビの十八番になりましたね~ [一言] きっとこういう地図が残っていて後世にドラゴン伝説として語られるんやろな…
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