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エピローグ マチェイ家の日常

これで第一章が完結となります。


初めての投稿だったので、いろいろと至らない点がある中、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。


この後は2~3本閑話を挟み、第二章に移る予定です。

『ティトゥ嬢。こんな感じかの?』

『・・・全然違うわ。もっと真っ白でもちもちしていたもの』

『どらごん! どらごん!』

『そうねミロシュ。目はどこについているのかしら?』

『奥様危のうございます。カーチャ!』

『はっ・・・はい! ミロシュ様、あまり奥様から離れないで下さいね。』


 マチェイ家の裏庭は大騒ぎだ。


 ちなみにティトゥは料理人の爺さんと麦飯を握ったものを手に話し合っている。

 どうやら僕が出したおにぎりを再現したいようだ。

 この国にお米は無いんだな。まあ異世界モノの定番か。

 ちなみに、ティトゥはおにぎりが僕の食事だと思っている。

 いつかその誤解を解きたいと思う。


 マチェイ家の次期当主、ミロシュくんは僕のファンだ。

 しょっちゅう屋敷を抜け出しては、僕の所にやって来る。

 僕のことは姉の契約ドラゴン、と聞いているらしく、自分もなんとか契約してもらおうと、こっそり財宝を持ってきては僕を買収しようとしてくる。

 鍵の無くなった錠前とかトカゲか何かのしっぽとか、そういう子供の財宝なんだけどね。


 そのミロシュくんに付いてきたのはティトゥママだ。

 初めて見た時の印象では地味な幸薄そうな人に思えたけど、ティトゥから事の顛末を聞いて心配事が無くなったせいか、おっとりしたやさしいママになっている。

 ティトゥの少し天然入っているトコロは、この人の遺伝なんじゃないだろうか。


 そのティトゥママに付き従うのは、この屋敷のメイド長ミラダだ。

 かくしゃくとした老婆で、ティトゥママは子供のころから、彼女のお世話になっているのだそうだ。

 融通が利かなさそうな真面目おばあさん、といった感じの人で、屋敷のメイドで一番若いカーチャはしょっちゅう叱られている。

 とは言ってもカーチャの上って、パートのおばさんみたいなメイドさんしかいないんだよね。

 カーチャがんばれ。




 ちなみに今の僕は屋敷の裏庭に間借り中。

 相変わらずの青空駐機だが、以前と違って木につながれているわけじゃない。つまりは放し飼いだ。

 本当は軍曹――じゃなかった、家令のオットーの提案で厩に入るところだったんだけど・・・

 まあ入るわけないよね。


『翼をたたむことはできないのでしょうか?』


 って言われたけど、そういう機能はちょっとないです。

 この身体の元になったプラモデルを作るときに、そういう風に作っとけば翼がたためるようになったんだろうか?

 次の機会があれば考えときます。


 ティトゥが僕専用の倉庫を作ってくれるそうなので楽しみだ。

 いや、今となれば青空駐機も慣れたモンだけど、たまに降ってくる鳥フンがね・・・

 森でも悩まされたよ。

 塗装面を浸食しそうなんで怖いんだよね。

 車を持ってるヤツがそんなこと言ってたし。




 そうそう、あの日の屋敷は大変だったよ。



 最初はみんな連れ立って屋敷に入っていったので、ドラゴンは庭で寂しくお留守番だなって思ってたんだよ。

 けど、すぐに使用人達がぞろぞろと庭に出てきたかと思えば、庭にテーブルの準備をし始めたのだ。

 そう、今日のマチェイ家はテラスで夕食を摂ることに決まったのだ。

 恐らく僕が一人で寂しくないようにとのティトゥの計らいだろう。

 う・・・嬉しくなんかないんだからね。ウソです嬉しかったです。


 ティトゥが家族と共に現れる。いつもの私服に着替えているね。

 僕ならここまでパジャマで過ごしたら、もうそのまま寝るまでパジャマだけどな。

 流石、良いトコのお嬢様。


 それから陽が落ち、ランプだったりロウソクだったりの灯りの下で夕食が始まった。

 寒い季節じゃなくて良かったね。

 後、実際に燭台を使ってるのなんて初めて見た。


 ファンタジー世界定番の、魔導具なんてのがあるかと目を凝らしたけど見当たらなかったよ。残念。

 食事は静かながら和やかに進み、食後のお茶が出たところで終了だ。


 ・・とか思ってたら、なぜか料理人のじいさんが次々と料理を運び込み始めた。

 どうやら使用人達の今日の仕事はここまでで、これからみんなでここで夕食を摂るようだ。

 酒も運び込まれ男の使用人達から歓声が上がった。

 つまりここからは無礼講なんだろう。

 あ、軍曹が使用人達が羽目を外し過ぎないか目を光らせているな。


 なんだろう、随分アットホームな職場だね。いや、みんなティトゥの話を待ちわびているみたいだ。

 なるほど。ここで全員を相手に一度に説明して済ませるつもりなんだな。

 まあ色々あった長い一日だったからね。



 さあ、そこからはティトゥの独壇場だ。

 今日の出来事を身振り手振りを混ぜながら皆に向けての大演説。

 母親は目を丸くして、使用人達は食事や酒を口に運びながら大いに盛り上がる。


 敵の船を破壊した場面には、全員席を立ってのスタンディングオベーションだ。

 ここは一番の盛り上がりどころだったので、みんな何度も話をねだっていた。

 ティトゥもみんなのリアクションが良いせいで気持ちが乗ってきたのか、オーバーアクションで場を盛り上げた。

 いつものお嬢様然とした姿もいいけど、こういう年相応にはしゃぐ姿も可愛いな。

 最後の方は全員が一体となって盛り上がっていた。


 ・・・というか、ここにきて衝撃の事実が発覚。

 あれって最前線の戦いだったんだって?!

 おそらくここは敵の物資集積所だ(キリッ)、とか言っちゃってたよ。キャー恥ズカシー!


 この時の僕は、最前線にしてはあまりにおそまつだった敵に疑問を抱いた。

 しかし、後日ティトゥパパさんからあの時の戦場の内情を聞いて納得する事になった。

 敵は将校もいない平民出の一般兵だけだったんだそうだ。どうりで手応えが無さすぎたわけだ。



 ティトゥの話はアンコールが入りまくり、夜遅くまで続いた。

 宴が終わったのは、もう日をまたごうかという時間になってからだった。

 僕もベロンベロンによっぱらった軍曹改め家令のオットーに『お嬢様を救ってくれてありがとう、お嬢様を救ってくれてありがとう』と「お前がティトゥの父親か!」ってくらいにからまれたよ。

 オットー君、君が一番羽目を外してたよ。オットーいいヤツだな、気に入ったよ。


 今日はいろいろと精神的にくることもあったけど、この一日の最後でなんだか全て報われたよ。

 ティトゥとその家族を助けることができて良かった。素直にそう思える光景だったよ。 



 そういえばあの日ティトゥが言ってた「契約」だけど、どうやらティトゥが言うには


『存在が高位の生き物は、人間の住むこの低位の世界に存在するために、世界に自らの真名(まな)を預けているのです。

 つまり彼らの存在の根源であり、彼らの一部である真名(まな)と世界と結びつける。それが彼らの契約なのです。

 その真名(まな)を人間に教えるということは、世界と契約するのと同様の契約をその人間と結んだということになるのです』


 なんだか抽象的で分かり辛いけど、つまり名前というよりはパスワードなのかな?

 僕はパスワードで世界とアクセスしてて、そのパスワードをティトゥに教えちゃったから、ティトゥも僕にアクセスできるようになったと。

 いや、君に教えたのってただの四式戦闘機の名前だからね。

 ミリオタだったら誰でも知ってるようなことだから。


 とか、がんばって理解しようとしたのに、全部ティトゥの脳内設定だったことが後に判明した。

 いつものティトゥの中二ネタかよ!


 この世界には契約っていうのがあるんだ、僕って何だかよく分からない存在なのに、そんな大事そうなことしちゃってティトゥは大丈夫かな。

 なんて心配をしていた僕の心を返してくれ!


 中二ネタといえば、あの日僕が使った250kg爆弾と20mm機関砲はティトゥによって有難い中二ネームを頂いた。


 20mm機関砲が「龍咆哮閃光枝垂れ(しだれ)

 250kg爆弾が「双炎龍覇轟黒弾」


 なんだそうだ。

 ちなみにこの名前、なぜか近くの村の子供達には大人気で、時折どこからともなく子供の声で『そーえんりゅーはごうこくだーん!』とか言っているのが聞こえる。おじさん若い子の感覚には付いていけないよ。


 今は二つの攻撃の発動呪文、という名の中二ポエムを作成中なんだそうだ。堪忍してつかーさい。



 屋敷の人達も近くの村の人達も、意外なほど僕を受け入れてくれた。

 まあ、最初はいろいろとトラブルもあったみたいだけど。

 それらは全部ティトゥがどうにかしてくれたみたいだ。

 本人は、契約者だから当然ですわ。って言っていたけど、やはり大変だったんじゃないかな。

 そういう苦労をさらっとやってのける彼女だから、僕はあの日、彼女の力になりたいと思ったんだと思う。

 この異世界で、最初に出会ったのがティトゥで本当に良かったよ。

 やはり、今後も地球に帰る方法は探し続けるだろうけど、しばらくはこのままでもいいんじゃないかな。

 僕はこの不思議な現状を受け入れつつあるのだった。

次回「閑話1-1 料理人テオドル」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ティトゥ家みんないい人で安心しました(* ´ ▽ ` *) 20mm機関砲が「龍咆哮閃光枝垂れしだれ」 250kg爆弾が「双炎龍覇轟黒弾」 放つ度に 叫ぶんでしょうかw ヤバイ想像す…
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