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その23 騎士団到着

ふと気が付くとブックマークが400件になっていました。

それを記念して飛び込みで更新したいと思います。

 三人の騎士団員達が馬に乗ってコノ村にやって来たのはお昼も回った時刻の事だった。

 というか先頭の馬に乗っているあの髭のオジサンってアダム隊長じゃない?


『ごきげんよう、ハヤテ殿。本当に漁村に住まれているんですな』


 やっぱりアダム隊長だ。という事は僕達がカミル将軍に頼んでいた人員を届けに来てくれたのだろうか? アダム隊長の後ろには二人の騎士団員しかいないけど。

 若い騎士団員だ。ひょっとしてアダム隊長の部下なのかもしれない。


 騎士団員がやって来たとの連絡を受けて、書類の整理をしていたティトゥと代官のオットーが家から出て来た。

 馬から降りるアダム隊長達。


『アダム隊長、あの時以来ですわね』

『ナカジマ様もお久しぶりです。ーーと言う程でもありませんかな』

『ええ。ハヤテと知り合ってから王都もすっかり近くなってしまいましたわ』


 てな感じで挨拶も終わった所で、二人は早速仕事の話に移った。



『先ずは農地の開発制限についてですが、カミル将軍の働きかけで問題無く撤回されました。元々前任者が作った一時的な措置が慣例として残っていただけのようでしたね』


 おお、流石は将ちゃん。仕事が早いね。

 しかし、やっぱり僕の予想通り下っ端がやった事だったのか。まあどう考えても悪法だもんね。


『我々が連れて来た捕虜のゾルタ兵とその見張りのための騎士団員ですが、こちらの判断ですでにそれぞれの村に向かわせております。流石に100人からの人数ですからな。ここに連れて来ても全員は入り切れないだろうと思い、先に割り振らせてもらいました。何か問題はありましたかな?』


 アダム隊長はオットーに人員のリストを渡しながら説明した。


『もちろん問題ありません。むしろ助かりました。見ての通りの小さな漁村で』

『それぞれの村に捕虜のゾルタ兵が12名ずつ。彼らを見張る騎士団員が4名ずつとなります』


 思ってたよりも騎士団員が多いな。何となく1人か2人くらいしか来ないかと思ってた。

 今後ゾルタ兵を増やした時の事を考えて、先に派遣しておく事にしたのかな?

 ティトゥも僕と同じことを考えたみたいだ。


『騎士団の方が4人ですか。ゾルタ兵の数に対して思ったよりも多いですわね』

『・・・これでも絞った方なんですよ』


 苦虫を嚙み潰したような表情になるアダム隊長。


『カミル将軍が今回の件で若手の団員に限って希望者を募集した所、なんと半数以上がその場で立候補したんですよ』

『まあ』


 残りの者もその多くが「家族の移住が可能ならば自分も是非行きたい!」と言っていたのだという。


『家族の移住?』

『どうやらナカジマ領騎士団からの団員募集だと勘違いしたらしいのですわ。希望者を若手に限ったので早とちりしたみたいですな。いやあ、あの時のカミル将軍の顔をあなた方にも見せたかったですわ』


 アダム隊長の後ろの二人がばつが悪そうに身じろぎした。どうやらこの二人も最初は勘違いしたクチらしい。


『その場で厳選した結果、何とか30人程にまで絞ったという訳です。というか、これ以上人数を絞っていたら暴動が起きかねない勢いでしたからな』

『別にウチはもっと人数がいても構いませんわよ。いずれは騎士団を作る必要があると思っていましたし』

『本当ですか!』『詳しいお話を是非!』


 太っ腹なティトゥの発言に思わず食い付く二人の騎士団員。

 アダム隊長は『お前ら・・・』と呆れ顔だ。


『それでクリストフ殿はこの連絡のためにコノ村まで来られたのですか?』

『アダムで結構ですよ代官殿。いえ、私は全体の指揮をとるためにこの村で厄介になろうかと思いましてな。後ろの二人は私直属の部下という訳ですよ』


 なるほど。確かにティトゥが直接王都の騎士団の指揮をとるのは不味いか。指揮権の委譲という形になって騎士団が王家のコントロールを外れる事になってしまう。


『そういう事でしたら、私が村に直接視察に出向いた方が良いですわね』


 ティトゥの言葉にオットーが思わず天を仰いだ。

 しかし、言っている言葉は正論なのか特に言い返す事はなかった。


『・・・家具を作れる者がいればコノ村に寄越してもらえるように言ってもらえますか? 今はアノ村の者に手を借りていますが所詮は素人仕事なので』

『分かったわ。カーチャ、準備なさい』

『私も行くんですか?!』


 あれよあれよという間に話を進める僕達に、アダム隊長とその部下達は目を丸くして驚いている。


『あの、今から出るんですか?!』

『ええ。後の話はオットーとして頂戴』


 やっぱり驚くよね。どう考えても領主様とは思えないフットワークの軽さだもん。

 アダム隊長は呆れて言葉も無いようだが、部下の二人は興奮に頬を染めて嬉しそうにしている。


『流石姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダー!』『ああ。やっぱり普通じゃないな!』


 君らがティトゥの行動力に感銘を受けているのは分かるけど、その言い方はないんじゃないかな。

 そしてどこか誇らしげなティトゥ。

 まあ君がそれで良いなら僕は別に良いんだけどね。




 そんなこんなでティトゥとカーチャを乗せてやって来ました開拓村。


 僕が着陸すると早速騎士団の人達が走って来てキビキビとした動きで直立不動になった。


 何というか、実に体育会系です。

 部活中に去年卒業したOBがやって来た、みたいな感じかな?

 あ、相手がティトゥだからOBじゃなくてOGになるか。


 早くも使命感に燃えているのか彼らの頬は興奮に赤く染まっている。

 前々から思っていたけど、王都騎士団ってアダム隊長とか一部を例外にして結構みんな脳筋だよね。


『ご苦労様です。私がナカジマ領領主のティトゥ・ナカジマですわ。カミル将軍のーー』

『『『『こちらこそよろしくお願いします!!』』』』

『・・・そ、そうですか』


 体育会系独特のノリに付いて行けずに思わず腰の引けるティトゥ。カーチャは早くも帰りたそうにしている。


 というかティトゥはスゴイ人気なんだな。

 まあ自分で言うのもなんだけど、僕達は隣国ゾルタとの戦いでは大活躍だったしね。それに彼らも騎士団にいれば、王都のマリエッタ王女絡みの事件に僕らが関わった事も話にくらいは聞いてそうだし。

 そういった意味ではティトゥは彼らにとっては憧れのスター選手みたいな感じなのかもしれない。


 例えて言うなら、難病の手術を控えた少年の病室に憧れのメジャーリーガーがやって来た、みたいな。

「ほら、あなたの大好きなティトゥさんが励ましに来てくれたわよ」

「本当?! お母さん。ああっ! 本当にティトゥさんだ! ティトゥさん、僕あなたの大ファンなんです!」

 みたいな感じ?


『・・・ハヤテ様、また何か変な事を考えていませんか?』


 何を察したのか、いつの間にかカーチャがジト目で僕の事を見ていた。

 変な事って何だよ。失礼だな君は。


『何か困った事や必要な事があれば、海辺のコノ村にまで連絡を入れて頂戴。私か代官のオットーが何とか致しますわ』

『『『『分かりました!!』』』』


 やたら元気の良い騎士団員にティトゥもやり辛そうだ。


『ボソッ(や・・・やり辛いですわ。)』


 あ、ぽろっと口から出ちゃった。



 オットーから頼まれていた家具作りの出来る人材だが、運の良い事にこの村に割り当てられたゾルタ兵の中に丁度いるらしい。後で騎士団の人がコノ村まで送り届けてくれる事になった。

 ちなみに僕達の前まで連れて来られたゾルタ兵達だったが、捕虜になって以来今までよっぽど酷い目に遭って来たのか、僕達の前でも尋常ではないほど怯えきっていた。

 カーチャが気の毒そうに彼らを見て『ハヤテ様を見て怯えているんじゃないでしょうか』とか言っていた気もするけど気のせいだろうなきっと。


『物資の手配は済んでいます。近いうちにボハーチェクから届く予定になっていますわ』


 ティトゥの言葉で、村に兵隊が増えた事で不安そうにしていた村人達にもようやく安堵の表情が浮かんだ。


『もっと話をしたい所ですが、今から他の村にも回らなければならないのでここで失礼しますわ』

『『『『お気を付けて!!』』』』

『ボソッ(や・・・やっぱりやり辛いですわ)』


 こんな事を村の数だけこなさなければならないと思ったのだろう。一瞬ティトゥの表情に影が差したが、彼女は気を強く持って自分の弱い心をねじ伏せた。


『ハヤテ、行って頂戴』

『マエ、ハナレ!』


 僕の声に慌てて下がる騎士団員達。


 僕はエンジンをかけると村の外まで疾走。タイヤが地面を切ると僕の身体は大空へと舞い上がった。


『・・・何だか疲れましたわ。今日はもうこれで終わって帰りたい気分ですわ』

『お疲れ様です』


 空に上がった途端に僕達に弱音を吐くティトゥ。

 しかし、彼女は気丈にもこの日のうちに残りの村を全て回りきり、夕焼けが空を染める頃には無事コノ村へと帰り着いたのだった。

次回「資材到着」

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