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戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ  作者: 元二
第四章 ティトゥの海賊退治編
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エピローグ 夏の終わりと次の旅の始まり

この話で第四章が完結となります。

『大変お世話になりましたわ。』

『いえ、こちらの方こそ。聖国は竜 騎 士(ドラゴンライダー)のお二方にどう報いれば良いか分からないほどです。』


 ティトゥの前に立つのは30過ぎの外国映画の俳優のような美人さん。

 マリエッタ王女のお姉さんでもあり、聖国の宰相夫人でもあるカサンドラさんだ。

 ティトゥが帰国すると聞きつけ、一言挨拶せねばとわざわざ聖都から駆けつけてくれたのだ。


 王女が海賊に攫われたこの時期に、宰相夫人が聖都を離れるのは危険ではないか、という意見も周囲から出たそうだが・・・


『今や海賊は一網打尽です。王家の者が海賊の残党ごときを恐れて聖都を離れられなかったなどと知れたら国民に笑われるわ!』


 と一喝。自ら騎士団を率いてこのエニシダ荘へとやって来たのだそうだ。

 何だかカッコイイ人だね。マリエッタ王女も大人になったらこの人みたいになるんだろうか?

 ただこの人がティトゥを見る目って何だか怪しいんだよね。

 親の仇を見るような目というか・・・まあ僕の気のせいなんだろうけど。


 マリエッタ王女とラミラ王女はしばらく前にパロマ王女を連れて聖都に戻っている。

 マリエッタ王女は最後までティトゥの案内を出来ない事を申し訳なさそうにしていたけど、パロマ王女を放っておくことは出来ないし、仕方が無い事だったとはいえ独断で海賊退治を始めた説明をしに戻らなければいけなかったのだ。

 ・・・いや、最初に始めたのは僕なんだけどね。

 王女様に尻拭いをお任せしてしまって申し訳ない。


『マリエッタの言っていた”航空地図”の件ですが。』

『それならこちらに全て。管理はモニカさんにお任せしておりますわ。』


 モニカさんの後ろの大荷物を指し示すティトゥ。

 モニカさんは今ではすっかり”地図作り主任”的なポジションになっていた。

 何やら満更でもないって顔をしてますけど、あなた最初は僕の専属メイドでしたよね?


 ちなみにこの事は事前にマリエッタ王女から相談を受けていた。

 決して粗略には扱わないので聖国に譲ってもらえないだろうか、と、マリエッタ王女にお願いされ、ティトゥはもちろん二つ返事でOKした。

 そもそも持って帰っても僕達には使い道が無いからね。それならこの国にあった方が必要とされるだろう。


 とは言ったものの流石に少しだけ名残惜そうにするティトゥ。

 頑張って作った力作だからね。何というか「ティトゥの夏休みの自由研究」といったところかな。


 最後は預かっていた宰相府特級鑑札を直接返してお仕舞い。

 重要な鑑札なので後日返還証明書が送られて来るそうだ。大事な書類なので決して無くさないようにと念を押されていた。

 ていうか、何でそんな重要書類が必要なほどの鑑札を僕らなんかに送って来たのやら。



『本来であれば爵位で報いなければならないほどの功績ですが、流石に他国の者に土地を与えるわけにはいかないの。ごめんなさいね。』


 カサンドラさんが申し訳なさそうにティトゥに謝る。

 この世界では爵位には治めるべき土地がセットで付いてくる。

 まあこの辺は昔の日本だって似たようなモノだったので分かる気がするけどね。


『貴方がこちらの貴族と結婚して残る気があるなら、聖国は貴方に小伯爵位を授与することも出来ますが。』


 黙って二人の会話を聞いていた周囲の人間にざわめきが広がる。

 つまりカサンドラさんはティトゥが望むなら、小伯爵にしてあげるから、伯爵家の嫁になれますよと言っているのだ。


 ・・・・。


『申し訳ございませんが。』

『あらそう。』


 どうやら本気で誘ったわけでは無く、リップサービスだったようだ。

 いや、あるいは何かの駆け引きだったのだろうか?

 断るティトゥに対してあっさりと返すカサンドラさん。


 僕は今、自分がホッとしたことに軽い戸惑いを感じていた。


『貴方達の今回の働きは報奨金という形で報いさせてもらうわ。今年中には届くようにするからそれで良いわね?』

『恐れ入ります。』


 カサンドラさんが僕の方を見る。貴方()って言っていたし、僕にも確認しているのかな?


『サヨウデゴザイマスカ。』

『・・・流石ドラゴンね。何だか微妙に上から目線だわ。』


 変な感心の仕方をするカサンドラさん。そしてキリキリと眦を上げるティトゥ。

 おおう、やっちまったぜ。いや、だって急に振るんだもん。普通焦っちゃうよ。仕方ないよ。



 ちなみに後日、ティトゥ宛に送られてきた報奨金は本当にスゴイ額だったそうだ。

 目録を受け取った家令のオットーが、驚いて僕の所まで走って来たくらいだからね。


『ハヤテ様、聖国で一体何をしでかしたんですか?!』


 酷いなオットー、それだと僕達が悪い事をしたみたいじゃん。

 何とか頑張って片言の現地語で説明したものの、ちゃんと理解してもらえたかどうか・・・

 というかそういうことはティトゥに聞いて欲しいんだけど。

 どうやらティトゥは面倒くさがって、みんなにロクな説明をしなかったみたいだ。

 でも、流石はランピーニ聖国。太っ腹だよね。




 僕達は大勢の騎士や屋敷の使用人達に見送られて空へと飛び立つ。

 約一月近く過ごしたエニシダ荘が小さくなっていく。

 屋敷の者は僕達を見上げてずっと手を振っていた。


『何だか寂しいですね。』


 少しは空の旅に慣れたカーチャが手を振り返しながらポツンと呟いた。

 メイドの中にはカーチャと仲良くなった人もいたようで、カーチャはその人達から色々なお土産を手渡されていた。


『またいつでも来れますわ。』


 ティトゥはそう言って膝の上に座るカーチャの肩に顎を乗せる。

 そう言うティトゥもどこか寂しそうだ。


『ちょ・・・止めて下さい。バンドの金具がお尻に当たって痛いです。』

『・・・安全バンドは大事ですわ。・・・ええ本当に。』


 ティトゥの目から光が消える。

 あの時作った青あざの中にはまだ消えていないものもあるそうだ。

 すっかりティトゥのトラウマになってしまったようである。


 僕達は旅の思い出を語り合いながらミロスラフ王国を目指す。


『でも、つい先日王都から帰ったばかりなのに、またひと月以上も旅行をする事になるなんて思ってもみませんでした。』

『本当ですわ。少しは家でゆっくりしたいものですわ。』


 この時は僕も、そうだよね、最近旅行続きだったから流石にもうしばらくの間は何もないよね、などとのんきに考えていた。

 しかし、この時すでにティトゥの実家マチェイ家には王都からある知らせが届いていた。



 そしてそれはティトゥの今後の人生を大きく変える知らせだったのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 ここはチェルヌィフ王朝。


 チェルヌィフ王朝は大陸の東に覇を唱える大国だ。

 国土に大きな砂漠を抱えた国で、砂漠を横断する多くのキャラバンを抱えている。

 そのため他国との交易が盛んで商業国家の面を強く持つ。



「ようシーロ、無人島の生活(バカンス)は楽しかったか?」

「いつまでも古い情報を言ってんじゃねえよ。もっとホットな情報はねえのかよ。」


 昼間から客でごった返す酒場でバーテンに絡むのは少し斜に構えた小ズルそうな男。

 この夏、海で遭難していた所をハヤテとティトゥに助けられたあの商人である。


 あの野郎共ブッ殺してやる!

 などと息まいていた彼だが、そこはチェルヌィフ商人の端くれ。

 相手から示談金をせしめるとそれを元手に今は細かい仕事で稼いでいる最中であった。


「相手を殺したって俺も取っ捕まって死刑になるだけだ。それじゃあ俺に殺された相手も殺した俺も両方損だ。それより相手の金を毟り取る方がずっと良い。相手は金を損して俺は金を得するんだからな!」


 とはこの男の言葉だ。

 チェルヌィフ商人らしい逞しい考え方である。



「お前の天使の竜 騎 士(ドラゴンライダー)だがな。」


 バーテンの言葉にピクリと反応するシーロ。

 懐から硬貨を数枚取り出すとカウンターに置く。

 流れるような動作で硬貨を拾うと、酒の入ったコップを置くバーテン。

 今ではシーロもあの時の天使がミロスラフ王国で話題の姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーであることを知っていた。


「何でも領地を拝領したそうだ。」

「あんだって?」


 予想外な内容に声が裏返るシーロ。

 女領主というのもいないではない事を彼は知っている。しかし、それはあくまでも跡継ぎが育つまでの繋ぎであったり、やむにやまれぬ事情があって一時的に領地を預かる場合がほとんどである。

 この世界はまだまだ女性が社会進出を果たせていない男社会なのだ。


「ミロスラフ王国といえば春に上の方の貴族が没落したっけか。確かマコフスキー家・・・そこの領地を拝領したって事か?」


 マコフスキー家はランピーニ聖国の友好使節団の代表であるマリエッタ王女をかどわかそうと画策した罪で、現在はお家断絶に近い状態にあると聞く。

 大きな事件だった上に、今、海賊退治で最も各国の注目を浴びているマリエッタ王女絡みの事件だったため、チェルヌィフ商人達の記憶にも残っていた。

 マリエッタ王女は成人前という幼さでありながら、僅か半月という短期間で聖都近海の海賊を根絶やしにするというその恐怖の手腕から、”海 賊 王 女プリンセス・パイレーツ”とも”吊るし首の姫プリンセス・ハンギング・ネック”とも呼ばれ、今では多くの荒くれ者共から恐れられている。


「いや、ネライ卿の領地という話だ。」

「ネライ? どこだったかな?」


 ネライ卿の領地と聞いて何も思い出せないシーロ。それもそのはず、ネライ卿の領地は全くの屑領地。湿地ばかりで農地もろくに取れず、夏ともなれば沼から毒虫が湧き出し周囲の村々に疫病が流行るというゴミ同然の土地だからである。


「まともな人間が治める土地じゃないね。ミロスラフ王国も国内にあんな土地があるなんて不運だよ。姫 竜 騎 士プリンセス・ドラゴンライダーも今頃はどうにも手が付けられずに困り果てているだろうよ。」


「クソったれ! そうと聞いちゃ黙っていられねえ!」


 シーロは酒を一息に飲み干すとカウンターを背に町へ飛び出す。


(あの時助けてもらったこの命、今こそその恩を俺の働きで返させてもらいますぜ!)


 シーロがミロスラフ王国でティトゥと再会するのは秋も深まり冬に入る前、これから一か月後のことである。

これで第四章は全て完結しました。


最初の構想より話を膨らませ過ぎてしまったようで、想定外に長い章になってしまいましたが、無事に完走することが出来ました。

・・・て、前の章でも同じことを書いていますね。

本当は20話そこそこの長さにするつもりでしたが、いざ書き始めると「あれも書きたい」「これも書きたい」と書きたいことが増えていって、結局30話で収めるのが精一杯でした。

その分ハヤテとティトゥに色々な経験をさせることが出来たと思いますが・・・いかがだったでしょうか?

最後はエピローグと言いながら次章のプロローグのような話も入れる、という手法を実験的に取りれてみました。

今までのようにスッキリ終わらせた方が良かったでしょうか?

不評なようなら書き直したいと思います。

この第四章はWindows10の累積更新プログラムのアップデートがアレしたせいで最初の2~3話のデータが飛んだりと色々と大変でしたが、私的には書いていて楽しい話が多かったです。



最後に、この作品をいつも読んで頂きありがとうございます。


楽しんで頂けた方はどうか評価をよろしくお願いします。

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