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戦闘機に生まれ変わった僕はお嬢様を乗せ異世界の空を飛ぶ  作者: 元二
第四章 ティトゥの海賊退治編
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その24 海賊島蹂躙

 ズドーン!


 大きな音を立てて僕の投下した爆弾が爆発した。

 僕の機体は大型船の上を越え、今は海上へと退避している。

 海賊からの攻撃は無い。

 あったとしても大砲も無ければ鉄砲もないこの世界の文明レベルでは、僕を捉えることは出来ないだろう。

 かつては異世界モノの定番、魔法攻撃を警戒していた時期もあったけど、どうやらこの世界に魔法は存在しないらしいということが今では分かっている。


 僕の背後では大型船のマストが次々と倒れていく。

 見張り台にいたあの男も無事では済まないだろう。

 もちろん船内にいた人間はもっと悲惨な目に遭っているに違いない。


 ティトゥはさっきからずっと手を僕に当てている。

 まるで僕の心に生じた罪悪感を共に受け入れようとしているみたいだ。


 いや、ティトゥにそんな考えは無いのかもしれない。

 こうやっていると自分も一緒に戦っている気分を味わえる、というだけなのかもしれない。

 しかし、彼女の行動で僕の心が少しだけ軽くなったのは事実だ。


 僕は無理やり気持ちを切り替えることにした。

 僕が今やるべき事はこうしてティトゥの気持ちを考える事じゃない。

 王女誘拐犯の本拠地を彼らが戻る前に叩き潰す事だ。


 僕は高度を取ると再び機首を島へと向けた。


◇◇◇◇◇◇◇◇


「これは・・・」


 私がメイドのモニカに案内されたのはこの屋敷で一番大きな部屋、食堂でした。

 しかし、いつも食事が乗せられているテーブルの上は綺麗に片付けられ、使用人とメイドが総出で何かを書き写しています。


「あれは、ティトゥお姉様が作っていた”航空地図”ですね?」


 彼らは地図の一部を書き写すとそれを別の者に渡します。渡された物はそれを必要な数だけ仕分けしている様子です。

 部屋に飛び込んできた騎士が、仕訳けられた地図を見て割り当て分を抱えてまた飛び出して行きました。


「モニカさん! 手伝って下さい!」


 あそこで悲鳴を上げているのは、ティトゥお姉様のメイドのカーチャですね。


「すみませんマリエッタ王女殿下。席を外します」


 モニカがカーチャのところに向かったのと入れ替わるように、侍女のビビアナが私を見つけて駆け寄って来ました。


「申し訳ございません、マリエッタ様。こちらの作業を手伝っていましたので」

「いいのよビビアナ。それよりこれはどういう事なの?」


 昨夜とは何というかみんなの目の色が違います。活気に溢れているというか、自分の行動に迷いが無いように見えます。


「ハヤテ様の宣言で”海賊殲滅作戦”が開始されましたので」

「最初から説明して頂戴!」


 私はビビアナに食いつきました。

 ハヤテさん。やっぱり貴方が何かやったんですね。




「呆れました・・・」


 私はビビアナの淹れてくれたお茶を手に、彼女の話を聞き終えました。


「まさか、全ての島から海賊の施設の目星を付けていたなんて・・・」


 地図の写しはひと段落付いた様子です。

 使用人達はポツポツと食事に休憩にと席を外しています。


「マリエッタ様はご存じなかったのですか?」

「私は”航空地図”の方しか見てませんでしたから」


 ティトゥお姉様は”航空地図”はあくまでも全体を俯瞰するための地図として作り、海賊の施設のある島に関してはまた別の板に島ごとに情報を纏めていたのだそうです。

 さすがに”航空地図”に全てを記すには情報が細かすぎたのでしょうね。


 私は近くに置かれていた目的の島ごとの地図の写しに目をやりました。

 そこには島の位置と大体の大きさ。桟橋の位置に、島に建物があればその場所、近くに定期航路が通っていればその航路まで記されています。


 ・・・ここまで丸裸にされた海賊達に、不謹慎ながら少し同情してしまいました。


 情報は力よ! みんなその認識が低すぎてまるでダメだわ! とは以前、カサンドラ姉上に言われた言葉ですが、情報を集める力も武力も飛びぬけているハヤテさんはやっぱり反則だと思います。


「やれやれ。やっと一息つけますね」


 メイドのモニカが年寄り臭く肩を叩きながら私の所にやって来ました。

 彼女の後ろではカーチャが椅子に座ったまま、うつらうつらと船をこいでいるのが見えます。

 彼女も早朝から休む間もなく働いていたそうです。


「港の大型の船は全て徴発するよう指示を出しました。後は王城から来た騎士団をそれに乗せて出発させるだけです」


 ビビアナの説明によると、パロマ姉上の捜索のためにやって来た騎士団には港に向かってもらいそこで説明をするそうです。


「そのためにもマリエッタ王女殿下のお力が必要となりますが、よろしいでしょうか?」「無論です。私の方から出向けば良いのですね?」


 私の役割は予想が付きます。王都からやって来た騎士団に、私の名前で船に乗るように命令を出す事でしょう。


「はい。彼らはマリエッタ王女殿下の指揮下に入ってもらうことになります」


 さすがにハヤテさんに「作戦だから」と言われて「ハイそうですか」と言う事を聞く騎士はいません。

 仮にその作戦がどんなに正しくても、です。

 騎士団は上位者の命令で動く。これは大原則です。

 彼らが自分の判断で行動を変えていては国の方針が成り立たないからです。


 以降は、この作戦の指揮者は王女である私ということになります。

 私はため息をこぼしました。


「ここだけの話ですよ。始める前に一言相談して欲しかったです」


 いつものように面白そうな笑みを浮かべるモニカ。


「空を飛んで地上の私達を置いてきぼりにするのが竜 騎 士(ドラゴンライダー)ですから」


 そう言ってモニカは笑みを深めました。

 なんだか上手い事言ってやった感がそこはかとなく癇に障りました。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 僕は何度も急降下を繰り返し、海賊の施設に20mm機関砲を叩き込んだ。

 上空からの攻撃になすすべなく逃げ惑う海賊達。

 僕はなるべく施設の破壊を優先するように攻撃を加えた。

 そもそも動く人間のような小さな標的に当てられるほど僕の射撃の技能は高くない。

 それでもどこかをケガしたのか、手足を押さえてうずくまる者や、中には倒れて動かなくなる者もいる。

 怯えてめったやたらに剣を振り回す者。そいつに切られて倒れる者。

 混乱して同士討ちを始める者。

 そんな中、僕の撃った焼夷弾によるものか、慌てた海賊が火元を倒して周囲の可燃物に火が移ったのか、あちこちの建物から火の手が上がった。

 服に火がついた海賊が海の中に転がり落ちていく。

 火災で基礎がもろくなったのか建物が大きく傾き、バラバラと建材を落とす。


 阿鼻叫喚。


 僕は心を無にしてひたすら破壊を拡大し続けた。


 胴体内機銃の弾と翼内機銃の弾が無くなったのはほぼ同時だった。

 僕は旋回しながら高度を取ると島を見下ろした。


『あちこちの建物から火の手は上がっているみたいだけど、このくらいならすぐに消し止められそうですわね』


 ティトゥが疲れ切った声で呟いた。


 しまった! そういえば彼女も乗っていたんだった!


 今更ながら、そのことに気が付き、僕はガツンと頭を殴られた思いがした。

 後半はかなり激しい空中戦闘機動で飛んだ覚えがあるけど、ティトゥは大丈夫だったんだろうか?


『・・・ゴメン』

『何も謝る事なんてありませんわ。それよりこれからどうするんですの?』


 気丈に振る舞うティトゥだが、肘や足をかばう様子が見られた。

 おそらく操縦席の中で僕の挙動に振り回された時に、あちこち打ち付けたか、突っ張って体を支えた際にすりむくかしたのだろう。

 服で隠れて外からは見えないけど、体中に打ち身や擦り傷をいくつも作っているんじゃないだろうか?

 そのことに気が付いた僕は、頭から冷水をかぶせられたような気分になった。


 いや、反省するのは後だ。今はティトゥの負傷を無駄にしないためにも作戦を続行しなければならない。


『モドル。マタ、クル』

『一度戻って出直すんですわね。何か考えがあるんですの?』


 ここからは作戦の第二段階。モニカさんの狙い通りにいけば良いんだけど・・・

次回「伝単(でんたん)

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