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ゼンの道程  作者: ろぼっと
1/1

プロローグ


居酒屋で二人の傭兵が話をしている。


「また、戦線が広がったらしいぞ」

「またか、4大国が争い始めてもう何年目だ」

「俺の爺さんの頃より前から続いてるらしいから100年以上は続いてるな」

「一体何のための戦争なんだか」

「王の野心の為だろう、どの王も他国を我がものとしようとしているんだよ」

「偉いやつの言いなりにしかなれない俺達にはいい迷惑だな」

「し!俺らみたいな祖国を持たない奴ならまだしも愛国者に聞かれたら殺されるぞ」

「すまん、......だが、現在戦争が広げているのは焼け焦げた戦線と市民と貴族間の貧困の差だけと言うのは、いかに愛国者と言えども思う所があると思うんだが......」

「まぁな、だが戦争は無くならん。俺達が飯を食えてるのも戦争のおかげだしな」

「耳が痛い事だ」

「そういえば、これは噂なんだが、やたら強い男が戦場を掻き回し停戦を訴えてるそうだぞ」

「あぁ、俺も聞いたなそれ、なんか見た事もない魔法を使って兵士達を無力化するとか」

「殺しはしないらしいから停戦には全く影響して無いみたいだけどな」

「なんだそれ、無駄な事を」

「だけど誰も勝てないらしいぞ」

「そんなに強いなら全て殺して王の無い世界でも作ってくれってんだ」

「しっ!またお前!」

「っと悪い......、酔っ払ったかな」


そんな話をしているとカウンターのやや背の低いフードをかぶった男が立ち上がったのは同時くらいだった。


「ご馳走様、おじさん。いくらになる?」

「200エンだよ」

「お、ちょうどだ」


そのまま立ち去ろうとしたフード男に先程の2人組みの1人が話しかける。


「おい!にいちゃん、今の話聞こえてたか?」

「はい?......あぁ、そこそこ席も近かったので、」

「すまねぇが黙っててくんねぇか?」

「僕も同じ事を思うので誰にも言いませんよ。」

「すまねぇな」


どうやら口止めらしい。


「いえいえ、では」

「あ!にいちゃん、ちょっと......」


そう言って男は立ち去ろうとしたフード男を呼び止めて小さな声で話し始めた。


「ソドム公国が傭兵を募ってるらしいが、行くならやめとけよ。」

「というと?」

「あそこの国は1番傭兵使いが荒いんだ。きっとろくな募集じゃねぇ」

「なるほど、ありがとうございます。注意します。」

「こんな世の中だが、お互い死なないように頑張ろうや」

「情報ありがとうございました。それでは......」

「おう!......っておいっ!てめぇ!俺の飯まで食うな!」


フードの男は何事も無かったかの様に酒場の喧騒から離れていった。


『あんまりろくな情報は手に入らなかったね』

「ん?リンそんな事ないぞ?」

『えー、リンの言うとうり愚痴ばっかりだと思ったよー』

「フィンもか」


さっきの酒場から少し離れた路地裏でフードの男は止まって誰かと話していた。


「ソドム公国が傭兵を募ってるって言ってただろ。」

『でも、こんな知られる様なやり方で集めてどうするの?』

「他国への陽動だったりブラフとしても使えるし、そもそもの戦力補充を測りたいんじゃないかな?」

『あー、ソドム公国ってこの前ゼンがいっぱい兵士を戦闘不能にさせた所かー』

「そうだね、それもあるね。なりふり構ってられなくなったとかじゃないみたいだし大丈夫そうかなぁ。」

『あー、あと戦線が広がったって言ってたねー』

『でも、それは予想通りじゃない?』

『えー、リンは予想してたんだー、すっげー』

『今の戦線だってもう焼け野原ばかりで休める場所も綺麗な水もご飯もないでしょ。それを求めたら広がって当然じゃない』

『そうかー』

「僕達もそろそろ帰ろうか。」

『『はーい』』


そのフードの男、ゼンの声と共に3人の気配は路地裏から消えた。



-------------------------


とある丘の上、まだここには戦線も届いておらず、また特殊な魔物も多いため滅多に人もよらない丘の上に民家よりは大きい家がたっている。

そんな人も寄り付かないようなところにフードの男達は転移してきていた。


「久しぶりだなぁ」

ゼンは久しぶりの我が家に懐かしさを覚えつつドアを開けた。

「ただいまー。みんな元気だったかー」

『帰ったよー』

『帰った!』

そんな間の抜けた声が家に響いた。

「あれ?誰も居ないのか?」

『留守ー』

『るすー?』

そんな事を言いつつ家に足を踏み入れた瞬間。ゼンの視界は逆さまになった。

状況を上手く整理できないでいると、奥からニヤニヤした顔で5歳くらいの男の子が姿を現した。

「ゼン兄、おかえりー。強いのにだっさいね。」

「おー。アンク、これはお前の仕業か?」

「んーん、ちがうよ!アイ姉ちゃんがやったんだ!」


アンク少年のそんな言葉と同時に奥の扉が開いて1人の女性が姿を現した。

歳は16歳くらいだろうか、勝気な瞳が印象的な子だ。


「帰ったのね、ゼン」

「アイ、何のつもりだ。あとこの罠は誰が仕掛けた?全然気づかなかったぞ。」

「ふん、いつまでも馬鹿な事してるあんたが悪いのよ。あぁ、あとその罠は私とシュウさんの合作よ。」

「師匠が来てるのか!」


シュウという名を聞いてゼンは足に付いていた縄を解き地面にたった。


「どこだ?」

「新しい孤児を置いてまたどこかに行っちゃったよ。もう少しで終わるって言ってたから、もう少ししたらまたひょっこり戻ってくるんじゃない?」

「また連れてきたのか。」

「あんたも連れてくるじゃない、あんた達のおかげでこの家なんて孤児しかすんでないんだから。」

「賑やかな分にはいいだろ」

「まぁ、私も孤児だし、同じ境遇の子には幸せになって欲しいからいいけどさ……。ところで、あんたの実を結ばない行いはいつ終わるの?」

「そんな言い方ないだろ……」

「……心配なのよ、リンとフィンが居たとしても多勢にはどう足掻いても隙が出来るんだから。」

「大丈夫だよ、師匠にそんなやわな鍛え方されてないよ。」

「どんなに強くたって死ぬ時は死ぬんだよ?」

「……」


今、この世界フィロキセラは4つの大国とその中にある幾つもの小都市や村々で成り立っている。

そしてその4大国、ソドム公国、ヒルゼン帝国、アンサルド国、マンガスタン皇国が長い間世界の覇権をかけて戦争をしている。長い、本当に長い間。

ゼンやアイが住んでる所はどの大国の自治領でない場所であるため戦争の被害はまだ無い、なのでゼンは戦争のせいで親を失くした者や戦争の為の軍事実験に利用されていた魔力の高い特別な者など、戦争の犠牲者を戦争を止める活動の傍ら保護している。


------------------


「で?ゼンはいつまでここに居るの?」

「明日にはソドム公国に行くつもりだ。」

「そう」

「心配をかけて悪いと思ってるよ。」


アイはゼンを見ずにそのまま部屋に戻ってしまった。



よろしくお願いします。

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