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メリークリスマス

作者: 日頃寝 ハル


クリスマスクリスマスクリスマス

私は呪いの言葉を吐きながら、彼を探す。

クリスマス一色に彩られた町。ひとり歩く私。サイテーだ。最高に。


サンタさんはどこにもいなくて、プレゼントを用意するのは親だったのだと気がついたのはいつだったか。

「さーちゃんのプレゼントは色鉛筆だったんだよ」

幼稚園に通っていた私は、どうしてさーちゃんのプレゼントが色鉛筆なのか分からなかった。

さーちゃんはサンタさんへの手紙に「変身ロットをください」と書いていたからだ。

「色鉛筆だったの。サンタさん間違えちゃったのかなあ」

幼稚園の先生は私に言った。


今なら分かる。家庭の事情ならぬサンタさんの事情が。


「私に男をくださーい」

クリスマスの日。虚しく女ひとりの友人と一緒にパーティを開いた。

私がケーキを作って、彼女がケンタッキーチキンを買う。

寂しすぎる。

「男なんて星の数ほどいるわよ」

仕事一遍の彼女は今年も彼氏が出来なかったらしい。

私はケーキのフォークで、空中に円をクルクルと描いて机に突っ伏した。

「その星に手が届かないのよー!!」

「そうかも」

なんて悲しいクリスマス。


世界で一番幸せだと感じた時もあった。確かに。

例えば、片思い中に何の用件もないのに、相手のほうからメールくれたとき。

例えば、初めてのデートで横顔を見つめているとき。

例えば、あったかい彼に包まれているとき。


一人ぼっちが不幸せなんて思わないけど、たまらなく寂しく思う自分は不幸だ。


ジングルベルが鳴り、街にクリスマスソングが流れ、イルミネーションの光が溢れる。

相対的に自分の隣には誰もいないのだと感じさせられて、なんだろう、涙が溢れたら、まだかわいげがあるのに私ときたら、ため息と眉間のシワを作るのみ。あと数時間でクリスマスは終わる。街中のクリスマスムードが終わったら、私の寂しさも年末年始に向けての忙しさに溶けていくはず。


飲んでいた芋焼酎は二人で空けてしまい、友達はクッションを抱えて寝てしまった。私は友達に毛布を掛けると、あとちょっとのクリスマスが終わるところをみてみようと、家を出る。


「うげ、さっぶ!!!」

コートを着て、マフラーを巻いて、それでも冬の夜風は冷たい。部屋の暖房と、焼酎であっためた身体をぐんぐん冷やし、私は自分の身体を抱きしめてさすった。

片側二車線ある大きい通りに出ると、カップルがいちゃいちゃしながらすれ違ったり、若い男女のグループがぎゃあぎゃあ楽しそうに歩くのが見えた。

クリスマス、クリスマス、クリスマス。寂しくて不幸で、かわいそうな私を助けてくれる人はいないかな。

誰か、誰か、誰か。頭の片隅にとっくの昔に別れた男の顔さえよぎる。

クリスマス終了まであとほんの少し。携帯でカウントダウン。


雪が降るでもなく、素敵な人声を掛けられるでもなく、サンタさんが現われることもなく、町の喧騒はそのままに、クリスマスは音もなく終わった。



「あったりまえじゃん!!なに?そんな乙女だったけ?」

26日のお昼過ぎ、ゲラゲラ笑いながら、友達が私に牛乳をチンして渡してくれた。昨日一人で夜歩いてクリスマスが終わるのを見届け、ついでにコンビニで梅酒やワインを買って、夜中まで一人で飲んでいた私は見事に風邪を引き、二日酔いで頭痛に苦しみながら、牛乳を飲んだ。あったかくてほっとする。そして胃に優しい。

あと何回二人でクリスマスを過ごすんだろうね、なんて言いあいながら、やっぱり一人だと思ってて、実際一人だけど、笑い合える友達がいて、笑っている間は全然不幸なんてちっとも思わないし、ま、いっかと思えた。

『笑ってると、運が良くなるし、幸せになれるし、大丈夫』

昨日コンビニのトイレで見た張り紙の言葉にその場では意味わからん、って思ったけど、なんとなく今分かった。友達に言ったら「は?意味わかんないんだけど」ってまた笑われたけど。

誰かと笑える時間があれば大丈夫。たぶんそう。

5年ぶりくらい

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