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ホールデム

「まず、1人につき2枚ずつ配ってくれ」

「は、はい」

 アデルから説明を受けつつ、マギーはたどたどしくカードを配っていく。

「で、これを俺たちが確認して、その2枚で勝負するか降りるかを決める。ここで全員降りたら仕切り直しだ。

 1人でも勝負するって奴がいれば、そこでまず1枚、チップを賭ける」

 話している間に、3人の手札確認が終わる。

 まずはエミルがチップを1枚、テーブルの中央に置く。

「ベット(チップを賭けること)」

 対する「羽冠」もチップを置く。

「コール(同額のチップを出し、賭けに乗ること)」

 一方、マギーに説明しながら自分の手札を確認したアデルは首を振る。

「……ドロップ(勝負から降りること)だ。

 で、2人が勝負すると言ったから、ここで君がカードをシャッフルしてから、テーブルに3枚置いてくれ。

 俺たちは手持ちの2枚とそのテーブル上の3枚で、役を作る。もし作れない、無理だろうなと思ったら、ここでチェック(パスすること)できる。

 全員チェックなら、さらにもう1枚テーブルに置いてくれ。そこで改めて、チェックするか勝負するか決める。

 ここで1人だけ勝負できるって奴が出れば、そこでさらにチップを賭けた上で、手役を確認。ちゃんと手役が作れていれば、そこでそいつの勝ちになる。

 2人以上勝負できる奴がいた場合は、どちらもチップを賭けてから手役を見せ合う。その場合は手役の強い方が勝ちだ。

 勝った奴はそこまで賭けていたチップを総取りする。この流れで1ゲームだ。

 何ゲームか繰り返し、先にチップが無くなった方が負けだ」

 マギーがテーブルに置いたのは、それぞれクラブの2、5、9だった。

 これを見て、エミルはさらにチップを賭ける。

「レイズ(ベットしている状態から、さらに上乗せすること)」

 そう言いながら、エミルは卓の下でピン、と親指、人差し指、中指を立てて見せる。

(スリーカードができてる。行けるわ)

(マジで?)

 が、「羽冠」も眉ひとつ動かさず、チップを上乗せしてきた。

「コール」

「……いいわよ」

 エミルと「羽冠」が、互いに手札を開く。

「……っ」

 エミルが自分で言った通り、彼女の手役は2のスリーカードである。

 しかし――「羽冠」の手役はそのはるか上を行く、クラブのフラッシュだった。


 1局の勝負における手持ちチップはそれぞれ10枚ずつだったが、ゲームを5回行ったところで、エミルたちのチップは手元から消えた。

 言うまでも無く、「羽冠」の勝利である。

「……」「……」

 この結果に、エミルもアデルも渋い顔をするしか無かった。

「まずはガン、もらう」

 そう言って「羽冠」は、床に置かれていたアデルの小銃をつかんで後ろに放り投げた。

「おい、乱暴に扱うなよ!」

 咎めたアデルに対し、「羽冠」はにべもなく返した。

「もう私のもの。私がどうしようが、私の勝手」

「~ッ」

 アデルは悔しそうな顔を見せていたが、一方のエミルは、彼の振舞いに演技臭いものを感じていた。

(出たわね。このわざとらしい、大げさなパフォーマンス!

 ……何か、やる気ね?)

 エミルの様子に気付いたらしく、アデルがさも悔しそうに顔を覆って見せた、その裏で――エミルに向かって、ニヤリと笑いかけてきた。

 その上でバン、とテーブルを叩いて見せ、怒ったような顔を作って叫ぶ。

「……ああ、くそッ! もう一勝負だ!」

「構わない」

 相手が応じ、すぐに次の一局が始められた。


 たどたどしくマギーが切ったカードを確認し、アデルが上ずった声を出す。

「よっし、……い、いや」

 と、その語調を急に落とし、迷ったような口ぶりをする。

「……いや、……うーん、……行けるか。よし、行くぞ! ベット!」

「コール」

 この回のゲームはエミルが降り、アデルと「羽冠」との勝負になる。

 続いてマギーがもう一枚配り、それを見たアデルがまた、顔を覆って見せる。

「うー……ん、どうするかな、……まあ、行けるか。レイズ!」「おい」

 と、ここまでほとんど無表情だった「羽冠」が、ギロリとにらんできた。

「……な、何だよ? 早くコールかチェックか……」「袖をまくれ」「えっ」

「羽冠」に袖口を指され、アデルの額にじわ……、と汗が浮き出る。

「まくれ」

「……ああ」

 アデルは観念し、袖をまくる。

 そこからぱらぱらと、カードが落ちてきた。

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