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3人のヒットマン

「酒浸りになってたマスターんとこに、賞金稼ぎが訪ねてきたんだ。

 何でもあの『羽冠』の野郎、『デス・ギャンブラー』なんて大層な仇名が付いてるらしいな。で、賞金稼ぎはそいつを狙ってこの街に来たんだが、それを聞いたマスターは大喜びさ。

 そりゃ、自分の店を潰した奴をブッ殺してくれるってんなら大歓迎だろうしな。そんなわけで、マスターは自分の持ってる情報をその賞金稼ぎに伝えた。

 ま、その『羽冠』なんだけどな、町にはたまーに顔を出して干し肉を買う程度で、寝床は町の外にあるっぽいんだ。それを教えたら、賞金稼ぎは『当たりは付いた』って言って、そのまま町の外に出て行って、……それっきりさ」

「それっきりって、戻ってこなかったってこと? じゃあ、その賞金稼ぎ……」

「『羽冠』を仕留めてさっさと離れたか、それとも返り討ちに遭ったか。

 だが前者でないことは、それから3日後に分かった。『羽冠』の野郎が平然と、町に干し肉とバーボンを買いに来たからな」

 仕立て屋は額をこするのをやめ、定規をぽい、と机に投げる。

「そんで同じ日、最初に死んだ兄ちゃんの親友だって男が、仇討ちを宣言してこの町に来たんだ。で、賞金稼ぎと同じことを聞いて、同じように町を出て行った。

 そしてそいつも、それっきり、だ」

 これを聞いて、アデルが状況を読む。

「その親友の男も、同じように戻ってこないってことは……」

「ああ。間違いなく『羽冠』は、そいつをも返り討ちにしちまったんだろうな。

 それでいてあいつは、これまで通りに干し肉とバーボンを買っていきやがる。ふてぶてしいったらないぜ、まったく!

 町のみんながみんな、そう思ってたし、何よりマスターは心底、頭に来てたんだろうな。ついにショットガン持って、マスターは『羽冠』のところへ行っちまったのさ。

 ……そしてそれが」

「一週間前のこと、ってわけね」

 仕立て屋はエミルの言葉に、無言でうなずいた。

「これであいつに関わって死んだのは、30人って大台に乗ったわけか。……いや、きっと公になってない分も含めれば、もっと多くの人間が犠牲になっているんだろう。

 何としてでもその『羽冠』、捕まえなきゃならないな。……だが」

 アデルは腕を組み、ぶつぶつと独り言を唱える。

「気になるのはその3人が、帰ってこないことだ。3人が3人とも、きっと武装していたはずだ。そして当然、それを使うつもりだったのは、間違いない」

「そりゃまあ、そうでしょうね」

「だが使ったってんなら、例え最終的には返り討ちにされたとしても、多少なりとも被害を与えてしかるべきだ。

 なのに『羽冠』はピンピンしてて、普通に酒と肉を買いに来たってんだろ? そりゃ大分、不自然だと思うがなぁ」

「……確かに、言われてみればそうだな。ケガしてた感じは無かった」

「となると『羽冠』は博打だけじゃなく、銃だか何だかの腕もいいってことになるな」

「あるいは、襲ってきた奴らと博打やって勝った、ってことかもね」

 エミルの言葉を、アデルと仕立て屋が同時に首を振って否定した。

「無い、無い」

「仇や賞金首を目の前にして、わざわざそいつと博打するわけないだろ?」

「……ま、そうね。じゃあやっぱり、凄腕ってことよね」


 仕立て屋を後にした二人は町を出て、「羽冠」の居場所を探すことにした。

「当てはあるの?」

「勿論。まず、『羽冠』はちょくちょく飯と酒を買いに来るって話だから、そう遠くないところに住処があるってことだ。

 そして買い物の内容からして、家族や飼ってる牛馬がいないのも明白。それに放浪してるって話だから、まともな家や住処は無いと見て間違いないだろう。

 となれば居場所は、徒歩で行ける距離にある――そうだな、男の足なら最大5~6マイルってところか――手ごろな掘っ建て小屋か、洞窟ってところだな。

 後は町の外、同じ方向に足跡が何筋も伸びてれば、それを追うだけだ」

「流石ね」

 そしてアデルの推理通り、町の北側から外に向かって、男のものらしい足跡が何往復も伸びている。

 二人は早速、その跡を追うことにした。

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