episode9「天災」
激しい轟音と共に雷が目の前のフードの男に落ちた。
普通の人間ならまず助かっていない。普通の人間なら。そう、目の前の男は起き上がったのだ、雷が直撃したのにだ。雷の直撃した時の電圧は二百万から百億ボルト普通の人間が生きているはずがない、このことから導き出される答えは、男は人間じゃない。
と言うかなぜ雷が落ちたんだ?雨が降っていない時でも雷が落ちる時はあると聞いたことはあるが、こんなしっかりと落ちるものなのか?
「さ、皐月、これお前がやったのか?」
「はあ?そんな訳ないだろ。第一俺に能力はないっつの」
「いや、確かに見えたぞ、お前が力を込めた時上空に一瞬だが積乱雲が発生した。」
「え?積乱雲?そんな馬鹿な、現に今上見てみろ!晴れてるじゃないか!積乱雲が発生するはずがない。」
俺と麗央が突如発生した積乱雲と雷の話をしていると。
「グ、ガガ、ギ、ゼンタイノソンショウガハチジュッパーセントヲコエマシタ、ジコシュウセイモードニイコウシマス。」
「な、なんだ?」
「こいつは危険だ、動かない今、始末する。秘技『蝙蝠』」
麗央の剣が黒く染まっていく。
「死ね。」
「テキノセッキンヲカクニン、ハイジョシマス。」
ローブの男の右手にエネルギーの塊のようなものが収縮していく。直感でわかる、アレはヤバイ
「麗央!避けろ!」
「ハッ『剣鬼』ナメんな!」
男の右手から放たれたエネルギーの塊を麗央の剣が真っ二つに切った。
「今度こそ終わりだ。」
麗央の剣がローブの男を切った。
「ふぅ。なんだったんだ?こいつは?」
「さあな、できるなら俺が教えてもらいたいんだけどな。」
「ん?なんだ?」
「どした?」
「いや、なんか遠くの方からラッパの音がしたような気がしたんだけどな。気のせいか。」
「どこの吹奏楽部だよ。あー、疲れた、今日はもう帰ろうぜー、くたくただ、秘技は一つ使っても疲れんのに一日に二つも使うのは流石に体がだりーよ。」
「あ、ああ。」
この時、俺達はまだ気づいていなかった、後々このラッパの音が俺たちの世界を変えることになるだなんて。
ーーー翌日ーーー
あー、眠い、相変わらず授業と言うものは何故ここまでつまらないのだろうか、二次方程式とか過去の歴史とか、社会にでて使うわきゃねーだろ。
「篠原、篠原はいるか?」
「ちょ、氷輪先生、今授業中ですよ!」
「すみません。篠原をお借りします。」
は?何?俺のこと?
「どしたのえりちゃん?」
「いいからこい、校長がお呼びだ。」
「……は?」
「プッ、なんだ皐月、お前なんかやらかしたのかよ。」
麗央が笑いながらこちらを見てきた。
「あと、龍崎、お前もだ。」
「……は?」
ーーー校長室ーーー
「校長、連れてきましたよ。」
「篠原皐月っす。どうも。」
「龍崎麗央でーす、よろしくー」
バキッ
「もう一回自己紹介できるよなぁ?お前ら?」
「は、はい。氷輪先生。一年六組篠原皐月です。」
「同じく龍崎麗央です。」
「よし。」
よしじゃねーよ、体罰教師め。
「自己紹介ありがとう。俺が校長の一条陸王だ。」
この金髪の右目が赤左目が紫のオッドアイがロクミネの校長、一条 陸王、強さは折り紙付きだ。だが、七列強には数えられていない。その話はまた次の機会にでもしようか。二つ名は『狂竜』
「さて、今日お前らを呼んだ理由はだな。篠原、お前を七列強に加入させる為だ。」
「は?は?はあ?!何言ってるんすか?!俺そもそも能力すらないですよ!?」
「はあ?お前自分の能力が昨日覚醒した事に気付いてねーのか?お前の能力は天変地異、かなり危険な能力だ。決して使い道を間違えるな。」
「あ、皐月、昨日のアレじゃねーのか?」
「あ、あー!!!じゃああの機械男をけしかけたのも校長って事ですか?!」
「そうそう。氷輪先生にお前が能力が覚醒しないって思い悩んでるって聞いてさー、ちょっと強引だが命の危機になったら能力覚醒すんじゃね??的な?アッハッハ」
「笑い事じゃねーよ!あ、じゃあ昨日のラッパの音もアンタか!」
「ラッパ?何のことだ?まあ本題に入るぞ、まず、お前の二つ名は『天災』に決定した。そして、七列強の名は『傲慢』順位は未定だが、最後の暴食も決まったそうだ。今日の夜七時から緊急集会があるそうだから忘れずいけよ。」
「緊急集会ってなに?」
「説明が面倒くさいから龍崎に聞け。」
「なっ、適当だなぁ、んじゃ取り敢えず俺らは戻りますね。失礼しました。」
「おう。」
バタンと、校長室の扉が閉まった。
ーーー帰り道の廊下ーーー
「で?緊急集会ってのは何のことだ?」
「ああ、緊急集会ってのはだな、俺たち七列強が集まる集会のことで、文字どうり緊急で行われることが多い、前の集会は確か二週間くらい前だったか?よく覚えてないが、俺も今日校長の話を聞かされるまで知らなかったことだ。」
「そ、そうなのか、七列強か、どんな奴らなんだ?」
「それはあってからのお楽しみということで、取り敢えず、皐月!能力の覚醒おめでとう!」
いつも悪ふざけをしている友人から急におめでとう、などと言われると恥ずかしくなるのは俺だけだろうか。
「お、おう、サンキュな。」
友人に祝いの言葉を貰い、俺たちは教室へと戻った。
ーーー駅前ーーー
さて、時刻は変わり俺は今駅前で麗央と待ち合わせの場所にいるのだが、
「あんのクソ野郎、いつまで経っても来ねえじゃねえか。」
そう。緊急集会が七時からで余裕をもって一時間前には現地に着いていようと言い出したのはあいつの方だ、なのに集合から二十分経った今でさえメールもよこさない。
と、そんな事を考えていると俺のスマホが鳴った、でてみると、聞き覚えのある声がした。
「おー、皐月?わりーわりー、昼寝してたらうっかり寝過ごした、今そっち向かってるわ。」
「てめえ、いい度胸してやがんな、こっち来たら覚えてろよ、ったく」
それから五分後くらいにヤツはきた。
「おせえんだよゴラァ!」
「ガフッ、いってえな!ちょっと遅刻したくらいでマジ蹴りしてんじゃねーよ!」
「ちょっとって言うのは、数分の事だ、数十分遅れる事をちょっととは言わねえよバカ野郎!」
「ふー、まあいい、急いで電車乗るぞ。」
「ったく。」
電車で十分、バスで十分程行った所には集会所のような場所があった。
「ここだ、入るぞ。」
「やあ、遅かったじゃないか、龍崎。」
「すみません理事長。『強欲』龍崎 麗央来ました。」
「うむ。」
麗央が敬語を使うのはほぼない、このオッサンが親玉か?ん?このオッサンどっかで見たような…?
「では、二人とも、席についてくれたまえ。」
「分かりました。」
「では、諸君、いつも通り急な事で悪かったね。皆聞いていると思うが、今日の議題は、長らく席が空いていた、『傲慢』と『暴食』が決定した。では二人とも自己紹介を、まず篠原から頼む。」
「は、はい。えー、高一の篠原 皐月です。能力は昨日覚醒したんで、よくわからないんすけど、天変地異って能力らしいです。宜しく…?」
「ありがとう。では、次に白銀。」
「はい。高校一年生の白銀小雪です。宜しく御願い致します。」
「ありがとう。では、続いて他の七列強も自己紹介を宜しく。」
「私は、『色欲』の水白巴です。高校二年生です。篠原君、白銀さん、よろしくね。」
「『怠惰』の六道時乱造だ。宜しく頼む。高三だ。」
「ハーイ『強欲』の龍崎麗央でーす。そこにいる篠原と同学年で親友の高一でっす。」
アイツ、また余計な事を…
「『嫉妬』の弓鷹凛よ、宜しくね。あ、学年は高ニ〜」
「最後に、『憤怒』の、神童牙だ、宜しく頼む。高校三年だ。」
「さて、皆自己紹介は一通り終わったかな?」
「では、私の自己紹介がまだだったね、私は司馬雄一七列強の責任者、及び日本ガルフィア連盟の会長をやっている。これから宜しく。」
あ、思い出した!このオッサンよくテレビに出てる人じゃねえか!有名人にこんなとこで会えるとは…七列強すげえ。
「さて、では、今回集まってもらったのは、席が埋まったことともう一つ、来月から始まるガルフィア祭のことについてだ。」
ガルフィア祭、各学校から選ばれた能力者達が能力で戦闘をするバトルロワイヤル、そうか、もうそんな季節か。
「二、三年生はわかると思うが、ガルフィア祭はかなり危険な大会だ、毎年重傷者が数十人はでる、しかし、死者は出たことがない、わかるな?私たちガルフィア連盟が止まるからだ、だから諸君達も全力で勝負をしてくれたまえ。では本日の集会はここまで、解散!」
ーーー家ーーー
いや、今日は正直色々ありすぎだ、まだ頭の中は混乱している、
「おにーちゃんっ」
「ん、おお優菜か。どうした?」
この色々と可愛い生き物は俺の妹、篠原優菜中学三年生だ。
「どうしたの?なんか暗い顔してるよ?」
「ん、いやお兄ちゃん今日は色々あって疲れたんだよ。」
「えー、それは大変だ、よく頑張ったねーなでなでー」
そう言いながら優菜は俺の頭を撫でてきた、なんなんですか?この生き物は、可愛すぎるんですけど。
「さて、んじゃ明日も早いし俺はそろそろ寝るな、おやすみ優菜。」
「うん、おやすみおにーちゃん。」
さて、明日からは能力の特訓だな。