性転換とか以前にいろいろ無理
「性転換!手術するのか!」
なんだか怖くなったのでわしはこの世界でもそんなことするのかとびっくりした。
「違いますよ、魔法で性別を完全に変えます」
「そんなことができるんですか!」
田中がびっくりしてたが、わしもびっくりだ。
「それなら、実はお父さん男でしたーで話がすんなりいくかもとか」
「うーむ」
男になれるなら、この矛盾した感じも解消されるしいいかもしれない。
「しかし、おしいですね課長、せっかくの美女の体なのに」
「何がだ」
田中が間延びした顔で不埒なことを言った。
「いやあよくあるじゃないですか、女の子と男の子が精神が入れ替わって。嬉恥ずかし異性の裸をって」
美代子が田中を扇子で殴っていた。
「お父さんはそんな人じゃありません!」
「おまえ達は同性に生まれたから違和感がないだろうが、わしには多少の違和感はある。しかしな、これも自分の体なのだ。精神が元男だろうが女だろうが、自分と言う一個のものに変わりはないので、よっぽどのナルシストでないかぎり、そんな興味はみじんもない」
わしはウソ偽りのない感想を言った。
だいたい田中がそんなことを言うまで、考えもしなかったと言うか、顔は前世の顔が見えるんだぞ。
そうきっぱり言うわしを見て美代子が微笑みながら残酷な真実を告げた。
「でも、これには難問があるの、、東方の隠者と言われる魔法使いしかできないのよね」
「じゃあ不可能じゃないですかー」
「それを早く言え」
いっきにがっくりきた。
東方の隠者は有名な孤高の伝説の魔術師で、この国からはるか遠く
飛行機もないこの世界では飛龍を飛ばしても何か月もかかる距離だ。
もちろん非力な令嬢であるわしに飛龍はのれんし、飛龍は一種の軍事兵器なのでちょっと旅行になど借りることは無理だし、地上をいけば何年かかるか。
間にはいろんな障害があり生きて帰れる保証はまったくない。
冒険と言うより無謀でしかないのだ。
「お父さんの身体スキルでは、、、まったく無理よね」
美代子がため息をついた。
「美貌で令嬢って、中身が傾城とかでないかぎり迷惑かもですね、小説の転生ものってみなさん自覚があって、幼少のころから一角の才能を発揮して、前世の才能を使ったり、お料理したり、あっちにあってこっちにないものを披露して成り上がり人生満喫してるのを読んだことありますよー」
田中が何気にエラそうだ。
「そんなこといいながら田中には何かこう、侯爵あととり意外の特技あるのかな」
「ないです」
即座に田中も答えた。
「なんかこちらに生まれたあと、自分が結構ハイスペックってことで、努力せず日々人生送ってしまったんですよね、それに他に何もできる材料もなし」
「わしもだ。お嬢様がこんなことしてはいけませんとか、いろいろ制約があるのでダンスに刺繍にピアノくらいはできるようになったな」
「ですよねー」
田中が相槌を打ち、二人でうんうんとうなずいていると、美代子がため息をついた。
「冒険とか絶対に無理ですね」
ほのぼの見合い兼ティータイムを過ごし、バカらしくも絶望的な議題を論じる我々に、最悪の自体がこのあと待っているとは思いもよらなかったのである。