部下田中の独白、これは罰ゲームですかあ?
俺は田中次郎、、
平凡すぎる名前とスペックを持ったサラリーマンだったが、
ある日交通事故で死んでしまった。
死ぬ直前に見た光景では、マニュアル車の操作間違いのようで、
歩道に乗り上げた車の中でおじいさんがぼーっとなってた。
よくある事故なんだなーと思ってると、なぜか転生し、
異世界の侯爵家のあととりとして生まれたわけだ。
はじめは何のことやらわからなかったが、だんだん知識がつくにしたがい。
俺は自分がとんでもない勝ち組だと思った。
前世のしょぼいスペックから、いきなり
ステータスも侯爵、顔もスタイルも美形仕様。
金もあるし何の隙もないハイクオリティーだ。
これでモテモテハーレム人生確定!
だとか思ったがそうでもない。
侯爵にはふさわしい相手でないといけないので、管理されてしまった。
変な血統は残せないと言うわけだ。
メイドさんも存在するのでトキメキがあると思いきや
ほとんどおばあちゃん的な年齢で、、、意図的に若い女性とは接触をさけられたのだ。
由緒ただしい女性と結婚し、跡取りを二三人作ったら、あとは恋愛OK
それが貴族らしいそれもなんだかななあと思うんだが。
だから、社交会デビューしてもお付の監視がきつくて何もできない。
美人の令嬢や婦人とお話しできてもそれまでだ。
まあ、そのころにはわりと冷めたけどなー。
だって、みんなすごい獲物見るような目つきで俺を見てるのでわかる。
美男で侯爵家あととりってすごいハイスペックだもんな。
普通ならそれを喜びとするだろうけどさ、喜びきれない。
だって美男の顔に二重写しで前世の平凡でどうってことない俺がいるんだ。
これが前世に俺を縛りつけて、嫌な気分にさせる代物で、どうやらこの世界では俺だけのようだった。
前に宮廷の魔術師に見破られたが、その話でもこの世界で見たことはないらしい。
なんか、前世でも味わった。
キヤバクラとかメイド喫茶へ行ってるような気分になるんだよな。
みんな俺を金としかみてないって感じ。
前世でも見合いしても何かうまくいかなかった。
俺に理想があったからかもしれない。
見合いは見合いで会社とかスペックを図られる感じが嫌だった。
たいしたことないこの俺でも好きになってくれる女っていないのかと
恋愛ジプシーしてたわけだ。
その要因には、俺の上司の存在があった。
さえないおっさんなんだけど、愛妻家がいて、その奥さんもすごい美人ではないけどかわいらしい人で、あんな夫婦っていいなあと思ってたので、そういう出会いってないかなあなどと思ってた。
上司はそんなハイスペックでもなく普通のおっさんなんだが、結構大事にされてる感じで、あのおっさんでもいけるなら、おれだってと思ったんだよね。
それも贅沢な考えなのかもしれないけど、
結局独身29歳であの世いきになったのだが、まだまだこの贅沢病が治ってないらしい。
そんなこんなで婚約者の話を持ってこられた時は若干嫌だなあとか思った。
だが、絵姿を見てすごい美人なので期待したのも確かだった。
もう空前絶後の美人だった。
この世界でも前世でもめったに見たことのない天上の女神。
この国の令嬢も綺麗な人はいるが、人間離れした感じだ。
すきとおるような白い肌に、青い空のような瞳。
赤い実のような唇、、なんつうかもうこれが婚約者でいいんですか状態。
侯爵家の親父グッジョブって感じだったんだけど。
相手も深窓の令嬢のようなので、いままでの玉の輿ハイエナ的令嬢と違い、純粋なお嬢様かもしれん。
うまく口説けばとか甘い期待を持ったよ。
俺が前世でいいことしたからご褒美かなーとか勝手に思ってたのが間違い。
これは罰ゲームだったんだ。
明日会えると思った前の晩は興奮して眠れなかった。
美しい令嬢に嫌われたらどうしようとか思って一睡もできず。
朝起きたら目が赤いので注意されると共に、侯爵である父親にはニヤニヤされてしまった。
だって仕方ないだろー!絶世の美女で深窓のお嬢様で婚約者だ。
そして絶望と混沌の運命の時が来た。
玄関から女が三人入ってくる。
先頭にお付の女性、、そして豪華なドレスの金髪の、、、令嬢、、令嬢、、
令嬢は、、俺と同じ前世持ちだった。
そして重なる顔の、、頭の部分が、、寒かった。
見覚えのあるその顔は、、前世の俺の上司、、課長だった。
課長が叫ぶ「田中おまえもか!」
「課長まじっすか!」
そんな甘い話はないと言う絶望をかみしめながら
俺は爆笑してしまった。
だって豪華なドレスと課長の顔って、、
サ〇〇さんの波平のシンデレラ姿のようなんだもんな。
俺は本当の危機を考える前に、笑いをこらえることができなかった。