共感する、想い-03(82)
『こいつ……』
外見上は果てしなく明るいこの少年と、皓が置かれている状況は実は似ているのかも知れない。
先程披露した見事な弓の腕前は、外見の年齢を考えれば、皓と同様に絶対に少年には持ち得ない技量に値するからだ。
「それが……その力が、隣村に移って来た原因なのか?」
皓も同じだ。
理由は不明だが皓が力を揮った後に両親は必ず、まるで何かを恐れるかのように、慌しく移住を繰り返す。
例えそれがどんなに些細な問題であろうとも、例外はない。
「うん。家族が一箇所に留まれないのは、俺のこの力が原因だからね」
呟いた台詞は、本当に少年の口から紡ぎ出された言葉なのだろうか。 それとも皓自身の、内なる声に過ぎないのだろうか。
「俺にこんな力さえなければ、両親だって俺を……」
――不自然に空に途切れた少年の言葉を、最後まで聞く必要が、皓にはなくて。
少年と重なる切なる想いは、告げるまでもなく、皓にも痛いほど理解出来たから。
『誰か、俺を受け入れてくれ』
途方もない強さ故、生まれる孤独。
運命は、幼い皓に孤独という言葉を覚えさせぬ儘、直にその身に経験を積み重ねる事を強いた。
家族に愛されたいと願う心の歯車は、どんなに努力しても決して噛み合おうとはせず、軋む重さは年月を経るに従って、避けようのない、大きな歪みを生じさせていた。
――いつか。 ……いつか自分より強い人間に出逢えれば、この疎外感からも解放されるのだろうか?――
『こんなにも広い世界だから、必ずどこかに俺よりも強い人間はいる。そして俺を倒せる相手なら、きっとこの感情が理解出来るはずだ』
救いを求める精神は飢え、孤独に蝕まれた魂は、緩やかに、けれど確実に皓を追い詰め、その背中に消えようのない、
深い傷痕を刻み続けていた。
血を吐く魂の叫びは、最早限界に近く。 天に向って差し出した掌は、どんなに願っても、空しか掴まない。
「ねぇ、黒禽を斃したのが両親に知れたら、また俺の家族は、居場所を変えなければいけないのかな?」
本来ならば皓やこの少年は、魔物から町を救った英雄として、皆から讃えられるべき立場なのだろう。
だが小さく掠れそうな声で呟いた少年の言葉は、こんなにも重い――