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生きる為に-03(75)

 強者故の孤独。

 良く有る自惚(うぬぼ)れの(たぐい)ではなく、皓の力は確かに他の誰をも寄せ付けぬほど、強い。

 けれど桁違いなまでの神憑(かみかが)り的な強さは、結果として皆の(おそ)れを買い、皓に孤独を強いる要因としかならなかった。

 周囲に溶け込む事が出来ない少年の魂は、いつしか容易に他人を信じられなくなってしまったのだろう。


 


「お前も俺より弱いのか」

 あの日全力で挑んだ青年を、難なく数秒で倒したに告げた皓の言葉は、余りにも淡々とした物言いで。

 「たぶん俺はどこかが、そして何かが、他人とは決定的に違う……」

 勝利を喜ぶまでもなく、無気力な感情を宿したままの瞳に、何より青年の心は痛んだ。


 ――何故そう思ったのか、理由は青年にも良く判らない。

『けれど皓、俺はお前を救いたい。独りではないと教えてやりたい。そして何より、子供らしいお前の笑顔が見てみたい。だから』

「お前達は俺が護る」




 暗い森の中を巧みに疾走しながら、青年は己の武器をそっと横目で確認する。

「空にいるに、黒禽に剣は通用しない。だが黒禽の目か、足をやれれば、あるいは」

 腰に下げ持つ武器は短剣だが、これには猛毒を持つ蛇、伽藍(がらん)の毒が全面に塗り付けて有る。

 これを使って、黒禽に傷の一つでも与える事が出来れば、あるいは勝機が此方側に芽生えるかも、知れない。

 知恵ある黒禽を相手に、短剣一つは(はなは)心許(こころもと)ないが、どのみち機会は一度きりしかない。

 何故なら、至近距離で相対した時点で、黒禽は必ず相手が、大人だと気付く。

 そうなれば、安易に捕獲し易い子供を探して、黒禽は(ただ)ちにその場から移動してしまうからだ。


「絶対にこの一撃は外せない」

 黒禽に人の姿が見え隠れするよう、森の木々の間を縫いながら青年はひた駆ける。

 巧に黒禽を(おび)き寄せ、二人から充分に距離を稼ぐと、青年は開けた場所へと飛び込んだ。


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