4話
「さて、まずは自己紹介でもしましょうか。」
明の混乱は残っているものの、落ち着きを取り戻した5人は席に着いた。
「じゃあ、メイドから。」
「何で?俺がこいつらのことを知るための提案じゃあなかったのか?」
「それもそうですけど、もともとあなたを紹介するために連れて来たんですから。新入部員ですからね。」
「それもそうだ。俺は土屋明。二年生だが、始業式の日に交通事故に遭って、しばらく意識不明。起きたのが、最近で今日学校に復帰したばかり。基本的にめんどくさがり。以上。」
「じゃあ、次は私だよ。増日えま。享年十六歳。元この学校一の美少女で•••」
「待て。なんか普通でない言葉が聞こえたが。」
「そうだよ。さっきよみが言ったでしょ、私たちは生きている人間じゃないって。私はゾンビってことになるかな。」
「ゾンビ!?」
「君が事故に遭った日に私も死んだの。ストーカーに殺されてね。包丁でグサッと。そしてバラバラにされっちゃった。もうあれは見るに堪えない状態だったね。」
明の顔色は青白くなった。
「大丈夫?えーと、メイド君?」
「あの話を聞いて大丈夫な人がいたら教えてもらいたいね。それと俺は土屋明。メイドってのはあいつが勝手に呼んでるだけだから。」
「次は俺だな。」
「お前も無視か。」
「俺の名前は三河海蔵だ。海蔵って名前ダサいから、三河って呼べよ、メイド。」
「だからメイドってのは•••」
「何か文句あんのか?」
三河はすごんで言った。明はやっぱりこいつあの三河だと内心怯えながら思い出した。三河はそれなりに有名な不良だ。
「増日と同じく享年十六歳で、さっき見た通り体が機械でできているサイボーグ。死んだ理由はお前と同じ日銀行にいて、銀行強盗に巻き込まれて、そいつらに銃で撃たれた。」
「泣いていた子供を撃とうとした犯人から庇うためってのは言わなくていいの?」
まったく怖がる様子を見せずに、隣りに座っているえまがニヤニヤして話しかけた。
「うるせー。余計なこと言うんじゃねーよ。」
「三河、照れてる。かわいい♥」
不良の三河もえまにとってはからかいがいのある相手でしかないようだ。
「はいはい、二人ともいちゃつくのは後にしてください。」
「「いちゃついてなんかない。」」
「次は優麗ですね。」
「•••梅音優麗です。あまり学校来てなくて留年したから、みんなとはちょっと年上の享年十七歳。幽霊です。よろしくね、メイド君。」
「もう、どうでもいいです。何で死んだか聞いてもいいですか?」
優麗は少しためらい、意を決して言った。
「•••自殺。睡眠薬たくさん飲んだ。」
「•••すいません。」
「いいの。弱い私が悪いんだから。」
「いや、優麗のせいじゃないですよ。全ては僕の•••」
「それはもう言いっこなしだよ。ほら、よみちゃんのことも話な。」
「•••では。知っていると思いますが、西郷よみです。僕は死に神です。僕の力で彼らを生き返らせました。」
「まあ、その格好である程度想像はついたが、それでも正直一番驚くところだよな。死に神にそんな能力あるのか?」
「ないこともないですが、彼らを生き返らせたのは色々と研究した成果です。死者の蘇生について調べたもので。」
「で、蘇生したのはわかったが、何でお前ら学校来てるんだよ。この学校の奴ら、お前らが死んだこと知らないのか?」
「いや、知ってますよ。この学校の人が一気に4人が死んだまたは死の危険性にあるって、結構話題になりましたから。」
「そういや、四条が言おうとしたのはこれのことか。」
「はい。それに、彼らがここにいるってことは遺体が現在行方不明ってことですからね。ニュースでたくさん話題になりましたが、メイドは知らないみたいでしたからそのままの方が都合いいかと思い、四条君には黙ってもらいました。」
「人を操る能力を持ってるってことか。」
「はい。」
明は深呼吸して、深刻そうに言った。
「それでお前らの目的は?何で集まっている?」
「普通に学校に通いたいからに決まってるじゃないですか。」
「それだけ?」
「はい。」
「何だよ。そんなことかよ。ってか、学校って死んでまで来るところか?めんどうじゃねーか。」
「勝手なこと言わないで!」
えまは立ち上がった。
「私たちは学校が好きなの。大切なの。死んだからってあきらめられる思いじゃないんだよ。何よ、私たちはあんたのせいで死んだのに。」
「ちょっと、えま。」
よみがえまを抑えた。
「あ、ごめん。」
「おい、俺のせいってどういうことだ?」
「まず、謝れよ。俺だって学校好きだからな。さっきお前の言ったこと俺も怒ってる。」
「私も学校が大切な場所だと思ってる。」
「・・・悪い。」
「私も言い過ぎた。」
よみは静かにつぶやいた。
「メイドのせいって決まったわけではないですからね。ただ、経緯にメイドの存在があったというだけで。」
そのとき、携帯の着信音が鳴り響いた。5人は一斉に携帯の方へ振り向いた。明を除いたLive研究部のメンバーは真剣な表情だった。そして、携帯の持ち主のよみが手に取り、中身を見た。
「来ました。」
4人は机の荷物を片付け、帰り支度をしている。明だけが分からずオロオロしている。
「何なんだ?」
「メイドは初日からか。まあ、見てれば分かる。これが俺たちの部活だ。」
「死に神のお仕事スタートだよ。」