3話
「はあはあ、疲れた。」
明とよみは部室棟の部室の前に来ていた。
「まったく、こんな程度で疲れるなんて。毎日自堕落な生活を送ってたせいですね。少しは運動すれば良かったのに。」
「俺だって家から学校までの長い距離を自転車で行ってたんだ。」
「この学校の人ならみんなしてるでしょう。自転車登校の人が多いんですから。」
「まあ、俺を甘く見るな。体育の成績はいい方なんだぜ。去年の体育祭ではほとんど2位だった。1位もあったな。」
「でも、結局今は体力ないですよ。」
「うっ。しょーがねーだろ。ほぼ1ヶ月運動してなかったんだから。今日だって家から学校まで登校した後、の一番遠いクラスにななったことを知って、マジでつらかったからな。」
「それはそれはご苦労様でした。」
「第一、ここまで連れて来たのはお前じゃねーか。」
「さて、みんな待ってます。早く入りましょうか。」
「俺のことは無視ですか。」
よみはドアを開けた。
ドアを開けると、見えたのは、真ん中に長机があり、右側にはパソコン、左側には本棚、窓側にはソファーがある、一見どこにでもある部室の光景だった。そして、長机には2人の女子と1人の男子がいた。
「••••••••」
黙っている1人の女子はショートカットの黒髪だった。前髪は目にかかるほど長い。暗そうにうつむいて本を読んでいた。
「おい、西郷、遅ーぞ。ったく、何、やってんだよ。」
よみに文句を言ってる男子は学ランをだらしなく羽織っていた。目つきは鋭く、髪を真っ赤に染めている不良のようだ。
「まあまあ、よみにだって、色々用事があるんだから。」
不良男子をなだめている女子は茶色のウェーブがかったロングヘアー。目がぱっちりして、肌も白い。よみには叶わないものの相当な美少女だ。そして、明は彼女の名前を知っていた。
「増日えま!?」
「あ、知ってくれてるんだ。そういや、この子誰?新入り?」
「はい。話したでしょ。もう1人必要で、先生に頼んで入ってもらった人がいるって。」
「ふーん、こいつがねー。」
不良男子は明をじろじろと見ている。
「こいつ、使えるの?見た感じ、対して強くもなさそうだけど。」
「まあ、パシり要因でいいかなと思って、連れて来たんですけど。」
「っていうか、この子、ここにいて、大丈夫なの?」
「それは大丈夫ですよ。彼もあなたたちと同じ経験してますから。」
「じゃあ、この間の事故にあって、生き延びた子?」
「はい。そうですよ。」
「っていうか、俺無視では話進んでいるけど。何、この部活そんなにハードなの?」
「いや、実質そんなことはないですよ。基本、この部室でのんびり過ごしているだけですし。」
「おいおい、こいつに何もさせない気かよ。俺たちは巻き込んだくせに。」
「別に僕はやってって頼んだわけじゃないですよ。」
「それでも、お前が困ってたら、手伝うしかないじゃないか。お前に助けられたんだから。こいつだってそうだろ。」
「おい、それ、どういうことだ?」
「お前もさ、覚悟きめろよ。こいつと深く関わった時点で、もう、普通じゃないんだから。」
「だから、何のことだよ?」
「もしかして、よみ、何も話してないの?この部活のことも、私たちのことも、•••あなたのことも。」
えまがそう言ったとき、本を読んでいた女子が立ち上がった。
「あ、ごめん。優麗。話し込んでて。」
「•••••いいの。次の本を読もうと思っただけだから。」
優麗は本棚に向かった。自分の目の前の棚に本を仕舞うと、その二段上の棚を見上げた。手を伸ばすが、届かない。優麗は肩の力を抜き、息を吐くと、
宙に浮かんだ。
「ちょっと、優麗。」
戸惑ってえまが言う。不良男子はニヤニヤと笑っている。よみはもうダメだとつぶやいて、落ち込んでいる。当の優麗はお目当ての本を取り、降りて、満足そうだ。そして、明はその光景に呆気にとられ、
「どういうことだ?これは。」
と、大声で叫んだ。
優麗はビクッとして、明を見ると、目を丸くして、驚いた。
「人、いたの?」
「え、気づいてなかったの?」
えまの言葉でしばらく沈黙が流れたが、明は再び興奮を取り戻した。
「梅音、やるー。これでもう隠せないようだな。」
「三河あんた、楽しんでいるでしょ。」
「当たり前。人生は楽しまなきゃな。まあ、今は’人‘生じゃないけど。」
その言葉を聞いた明はつっかかる相手を三河に変えた。
「何で、また、意味深なこと言うかな。」
「おい、何だ、それ。どういうことだ?」
「確かに、これ以上は無理みたいですね。皆さん、見せてもらえませんか。」
「よみが言うなら。」
「やっぱ、そうこなくっちゃな。」
「•••••」
優麗はコクンと頷いた。
優麗は長机に手を突っ込んだ。えまは腕をまくり、縫合の跡を見せた。三河は腕を折り、銃口のようなものを見せた。明はますます混乱したようだ。よみが明の肩を叩き、明が振り返ると、
全身をフードつきの黒いマントで覆い、大きな鎌を持ったよみがいた。
「メイド、あなたに全てを受け入れてもらいます。僕たちは生きている人間ではありません。」