一番で居たかっただけ
「お兄ちゃん!今日は一緒に帰ろっ」
「わり。今日は・・・」
「有理さん?」
「いや、今日は男友達。」
「ふーん。わかった。」
私はそれだけを確認したかった。
本当は、一緒に帰りたかったけど・・・
あの人と一緒じゃないなら良い。
そう思ってしまう私は悪魔だろうか・・・。
「美香子、お砂糖買ってきてくれない?」
「えー?」
「近くのスーパーでいいから♪」
「わかった。」
ため息を一つ、ついて出かけた。
「優一君、こんなの好きなの?」
「まぁ・・・」
しゃべり声が聞こえて、私は振り返った。
そこには、お兄ちゃんとあの人。
「お兄ちゃん!」
「み、美香子!?」
「美香子ちゃん。こんな真っ暗な中、どうしたの?」
「お砂糖・・・買ってきてくれって言われたから・・・」
「そっか。」
「それより、お兄ちゃん今日は男友達だって言ったじゃない!
なんで、嘘ついたの?」
「嘘じゃねぇよ。
あいつらと別れてから有理と会ったんだ。」
嘘だ。
長年一緒だからわかる。
お兄ちゃんは、私に初めて嘘をついた。
「お兄ちゃんって、バッカみたい。」
「は!?」
「なによなによ!
そんな人のどこがいいの?
ダサダサで、女優さんみたいに可愛いわけでもない。
モデルさんみたいにスタイルがいいわけでもない。
なんの取り柄もなさそうな人の、どこに魅力があるっていうのよ!」
プッツンと私の中で何かが切れた瞬間
口が止まらなかった。
「気が弱そうで、力だってなさそうで。
私のほうが数倍良い女だと思う!
そんな魅力ない人のどこが好きになる要素があるっていうのよ!」
バチンッ
鈍い音。
段々と広がっていく痛み。
「おにい・・・ちゃん?」
お兄ちゃんが、私を始めてぶった。
頬を・・・
「ゆ、優一君!
私なら気にしてないから。そこまでしなくても・・・」
「お前が気にしなくても、俺が気にするんだよ。」
「でも・・・」
「うっ・・・」
涙が出てくる。
「泣くな。」
「たたいといて泣くなってどういうことよっ」
「有理にあれだけ酷いこと言ったんだぞ?
お前には泣く資格なんてないよ。」
「・・・っ」
どうして?
どうして、あの人なんかを庇うのよ。
「だって、全部本当のことじゃない!」
「・・・・美香子。
俺は、あいつを悪く言うやつはお前でも許さない。
二度と俺たちの仲に口をだすな。」
お兄ちゃんの初めての拒絶
初めての喧嘩。
ねぇ、私たちあんなに仲が良かったのに・・・
全部その人がらみだ・・
あの人が現れなかったら、こんなんじゃなかったのに。
「なによ・・・、お兄ちゃんのバカ!」
私はただ、お兄ちゃんの一番でありたかっただけなのに・・・
最終回に向けて、がんばります!