第7話
はてさて。
2限目の授業は普通に始まったわけですが、これがまた拷問というか何というか……
本来なら体育の時間なのですが、いきなり校庭に直径10メルトルもの大穴が出来てしまったので、朝一番で開かれた職員会議で当分は中止という事が決まりました。
強力な攻撃魔法が使われた結果、という事で警察が来て現場検証をしています。昼からは王宮魔導士が何人か調査に来る事になっているそうです。
窓から見ていると、王宮騎士団の重装歩兵が穴の周りを固めているばかりか、飛龍も何頭か飛んでいます。
……やっぱり、佐奈のアレはやばかったと思います。
それはいいとして。というか、体育つぶれたよ。きゃっほう!
授業が中止にならなければ、持久走と、ハードな筋トレが待っていた事でしょう。
金髪碧眼のマッチョ… もとい、アンディ・堀井…先生いわく、何をするにも必要なのは強靭な肉体と体力だそうです。
さすがはドワーフ族というところですか。
「……というわけで、イェルドゥを王都にしていた旧王国時代には、一般的には種族間の交流が希薄であったと考えられていたが…」
代わりの授業は歴史学。
これからの1時間半は気を抜く事ができません。
マスィード先生はハーフエルフで、元軍人です。本人いわく『予備役召集に応じて従軍したエツナン戦争から生きて還ってきた』そうですが。
終戦協定が結ばれたのは50年くらい前の話だったと思う…… 教科書の年表を見ると… あ、あったあった。52年前でした。
「はいそこ、赤色戦争の終戦の直接の原因は何だったかな?」
「ペイ・ジルーインの戦いです。太陽爆弾が戦争に使われた最後の戦闘でした」
「うむ、都市を一撃で消滅させるなど、今では存在すら疑われている兵器だ。よく出来たな、座ってよろしい」
ふう、やれやれ……
そこそこ高齢で大きな声が出ないという事もありますけれど、それだけに静かな声で淡々と授業を進められて、眠るなというのは無理というか、拷問というか。
でも、寝るわけにはいきません。
「む…… そことそこの男子っ!」
びすっ! ぶしゃ!
「うぐぁ!」「げふっ!?」
予備動作なしで投擲されたチョークは、隣でうつらうつらしていた男子の眉間のまんなかに命中…… うわあ、今日の威力はすご。二人とも血がにじんでる。
「目が覚めたかね?」
「「はい」」
「二人とも廊下に立っていなさい。……では、授業を続けるとしようかね」
寝たら、こうなります。
ハイエルフとかエルフとかドワーフとか。
人間と一緒に普通に暮らしています。こういう世界もアリじゃないでしょうか。
次々回あたりに獣人が出てくる予定です。