第6話
教室の中が一瞬、静かになったけど、すぐに戻ったようだ。
でも、女子の眼がハートマークなのは気のせいかな?
「ああ、あの二人、今日も絵になるわぁ」
「私にもあの笑顔を向けてくれれば……」
「お持ち帰りしたい」「ねー」
なんか不穏な発言が聞こえたようだけど、ここはスルーだ、スルー!
「それより、どうしたの? すごく疲れているみたいだよ?」
「ちょっと寝不足」
「星を見ていて時間を忘れた、ってところかい?」
「そういう訳じゃないんだけどね」
なんか寝た気がしない、というやつ。別に夜更かしをしたわけじゃないよ。
だって、昨夜は雲が多くて天体観測どころじゃなかったし。
まあ、なんというか、う~ん……
「……いや、なんか夢見が悪くてさ。あと、昨日の午後って何かあったっけ?」
「何かって? 副会長が告白に来たくらいで、あとは普通だったんじゃないかな」
「そうだっけか?」
「やっぱり疲れてるんだよ。明日はハイウインド様の所に行くんで緊張してたとか?」
「いや、それはない。どちらかというと、それはサボりたい」
「なっ、なんて事を言うんだ! だめだよ、それは駄目だと思うよ!」
大地の目がヤバイ!
アレだ、熱病患者というか、アイドルに心酔する熱狂的なファンの目だ。
「いいかい? ハイウインド様のお役にたてるというのは……」
ふぅ、ハイウインド様…か。
彼女の事を生ける半神というか、そんな感じで崇拝している人は結構多いです。そういう意味での世間様同意度はものすごく高いでしょう。
上品でおしとやかで、すごい美人だし、胸もこう、げふんげふん……
たしかに、彼女は魔法全盛の旧王国時代にさえ、超越者とか大魔法使いとして名を遺していますし、政治経済軍事なんでもござれのハイエルフです。
いえ、間違っていませんよ?
ちゃんと記録も残っていますし、時代ごとの証人もバッチリです。
それは置いとくとして。1限は地学だったのですが。
「授業は中止だ。緊急の職員会議が招集されたんでナ、各自自習しておくように」
そう言うと、先生は教室から出て行った。
「なあ、これって校庭の大穴となんか関係あんのかな」
「あの大穴か。何でも底の方は溶岩だったらしいぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。今朝何があったか、みんな… 知らないの?」
「知らねぇよ。いつの間にか出来てるから騒ぎになってるんだろうよ」
「大きな爆発か何かでしょ? でも破片は落ちてないし、」
「えっ…… ?」
何か嫌な予感がするのは気のせいだと思いたいです。
ハイウインド様って、う~ん、どう説明すればいいかな。
熱狂的なファンクラブがあるというか、どちらかというと神格化… かなぁ。
国民の支持率は、ほとんど100%という絶世の美女なんですけどね。




