第2話
女の子から解放された僕はベッドから飛び出した。
「よく母さんの特製結界を抜けられたね? 昨日の夕方改良したばかりだよ」
「お義母さまが私専用に、バックドアを作ってくれたに決まってるじゃない」
「母さんが? ……余計なことを」
「仕事で帰れないから世話をしてあげてね、って言われてるし」
忘れてた。
父さんも母さんも、昨日は王宮に泊まり込みだって、言って…… いた?
そうだったかな。
……まあ、いいか。それよりも、問題はこの事実だ。
淡い桜色のパジャマをだらしなく着込んで、寝癖でばさぼさ髪の女の子だ。
「……だからって、コレはないでしょ?」
「いいじゃない、両方の親公認のお付き合いよっ」
こう言い切ったのは、赤来・佐奈……あかぎ・さな。
新王国暦1296年3月30日生まれ。
家が隣同士の幼馴染というやつで、お互いの両親が子供の頃からの大親友だという事もあって、今でも家族ぐるみの付き合いが続いている。
佐奈は僕の通う中学校の2年生で、入学以来、主席をキープし続けているとか…
人となりを紹介するなら、性格は誰に対してもやさしいし、勉強もできる。
僕に言わせれば、猫をかぶっているというか、着ぐるみを着てるというか。
実際のところ、家族にも見せた事の無い本性というか、その中身は……
まあ、今朝のような事はよくある事です。
いつもは僕の方が早く目が覚めるので、どうにかなっていたけどね。
他にもまあ、色々あるけど……
かくいう僕は、天城・瑞希……あまぎ・みずき。
新王国暦1296年4月2日生まれ。
つまり、齢14にして中学1年生なんだけど……
身長は140ちょいだし、昔から女の子みたいと言われ続けてきた。
着ている学生服も一番小さなサイズなのに、少し大きめだし、何よりも似合っているようには見えない。
でも、成長期が来るのが遅れているだけだから。
何とかなるといいな……
何とかなるさ。
……きっと。
きっと神様はいると思う……
「……瑞希ったら! ぼ~っとしてないで、時計見て!」
「んんん?」
よかった、佐奈が元に戻ったようだ。
「なにボーっとしてるの!? 時間ないわよっ」
「えええっ?」
時計を見ると、朝の7時… ひちじぃ!?
「朝ごはんの準備しておくから早く着替えを済ませてねっ」
「いや、そんなに慌てなくても遅刻はしないから。それより佐奈は家に…」
「私はお義母さまの部屋で着替えてくるから。じゃっ、まったねぇ~」
いや、ここは家に帰る場面でしょ。
ようやく主人公の名前が出てきました。
中学校に入学したばかり、なんですけど……
さあ、どういじりましょうか(笑)