第31話
ドクリドクリと心臓を通る血液が冷たく凍って押し出され、全てを鈍らせていく。
「っ…あ、う…あ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
喉の奥から湧き上がる、痛みを伴う絶叫。
エスターが何かを言っているが、聞こえない。いや…聞きたくないのかもしれない。
何で今まで思い出さなかったんだろう…?
忘れていた記憶。
いっそ、ずっと忘れていられたら良かったのに……。
あの日、僕は出逢って、そして話をしたんだ。
…………天空の彼方から来た訪問者…… と。
気が付くと、時間が止まっているような感じになっている。
全ての音が消え、空気の流れは止まっていた。
エスターが僕の方に駆け寄ろうとしたまま、凍りついたように動かない。
周囲にいた護衛の人たちもだ。
「えっ? 何が起きて…?」
森の中の風景は色を失い、そして静止していた。
いや。
僕の正面にある森の一部だけが、普通の色合いを保ったまま……
モノトーンの世界の中で、光の輪に照らし出された部分だけが色を残している。
それが、何かを探すようにゆっくりと動き始めた。
「な… 何なんだ、これ」
きょろきょろと辺りを見回しても光源らしきものは見当たらない。
じゃあ、この光はどこから生まれたんだろう。
心の片隅には、状況を冷静にとらえていた僕がいるけど、実際には頭の中が真っ白になっていた。
ゆっくりと移動した光の輪は、僕の目の高さのあたりでぴたりと止まると、頭の中に声が聞こえてきた。
静かに語りかけてくるそれは男の声のようだが、女性の声にも聞こえる。そして、あらゆる年齢の声が重なりあったような声だ。
――やはりキミは興味深い存在だ。
だだだ誰ですか? 一体何が起こったんだ。まさか捕って喰わr
――そんなに怖がらないで欲しい。ふむ、この場合は……
はじめまして、と言うべきかな。
安心したまえ。私はキミに危害を加えに来たわけではないのだ……
頭の中に声が響いても、別に不快な感じはしなかった。
というか、その頃は半分眠っていたし、寝ぼけていたんだと思ってた。
でも、それは否定の仕様のない現実だった。
――私は君達と同じ生命体だ。君達の種族より僅かに進化した存在に過ぎない。
物資創造の秘密を探り当てた我々は、物質的な制約に縛られないレベルの生物に
進歩した、ただそれだけの事に過ぎない。
それだけの事って……
ようやく、一区切り? です。
ここからは一気にエンディングまで持っていこうかなぁ、と……