第29話
わぁい、そろそろおやつの時間だぁ♪
なんてワケがありません。ちょっと食べすぎです。コアな話に夢中になっている二人のために紅茶とケーキを注文して。
冗談で角砂糖を5~6個放り込んでみました。
他にも、ものすごくカロリーの高そうなケーキとかタルトとか。
それにしても、窓の外に目を向けると騎士の姿が目に付くなぁ。あれが全部コスプレとは思えないし。
普段より巡回の騎士が多いのは、この手のイベントのせいでしょうか。
「冬のイベントの時はこんなにいなかったワねぇ」
「じゃあ今日だけですか」
「そうネ。今日は街の雰囲気もピリピリしてる」
その時三人組の騎士が入って来るのに気付いた。
「先生、騎士団が……」
「今だけハ、あなたハ天城・瑞希じゃなくて、私の姪のフェルナーダ」
「……先生?」
「OK?」
「スィン(はい)」
「じゃあ、いきましょウ」
「その前にトイレ」
「行ってらっしゃイ」
僕は個室に入ると、ポシェットの中身を確認した。
魔晶石が3個と、ヒールタブレット… これはポーション程ではないけど、体力をいくらか回復してくれる。
そしてデリンジャー。
あとは、首から下げたペンダントはマジックアイテムです。魔力を流し込んで行きたいところを念じてやればいい。今回使うのは、このペンダントです。
場所を設定して、魔力を流すタイミングを調整して…… 棚の上に隠して、と。
魔晶石の一つが完全に光を失うと、光の粒になって消え去った。
これでよし。数分後に魔法が発動するはず。
「お急ぎの所を申し訳ないが、そこの娘御よ。そなたはもしや……」
やっぱり来たか。胸につけている赤い鷲の紋章を見た時に嫌な予感がしたんだよね。
案の定、レジの前で騎士に呼び止められました。が……
「……おい!」
「どうした」
どうやら持ち運び型の魔力計か何からしい。
表示を見ていた騎士たちは、ひそひそと何かを話し合っている。転移とか魔力値が高すぎるとか言ってる。
しばらくすると、騎士の一人が、
「呼び止めて申し訳なかった。どうやら拙者の勘違いであったようだ。許されよ」
そう言うと、残りの騎士を引き連れて店の外に出て行った。
……ふう、少しだけ時間を稼げたかな。
とりあえずドゥーラに戻る事にしよう。
まさか、僕が転移先のドゥーラに戻るとは思わないだろうから。
え? 設定した転移先がどこだったのか、ですか?
ドゥーラです。
それも、騎士団司令部の3階にある物置部屋。
建物からは、簡単に出られないし、それなりに人も多い。
ある程度の目くらましには、なってくれるといいな。
空間転移というか、宇宙船の空間跳躍(ワープ?)は、跳躍先の座標の割り出しが出来るそうです。
空間跳躍そのものが理論上のものだから、完全に数学パズルの世界になってしまうらしいですけどね。
それならば、転移魔法だって、転移先の割り出しは…… オッケーだと思います。考えてみれば、魔法ってすごいかも。