第27話
というわけで、お買いもの帰りのファミレスにいます。
「あら、マルシア。早いじゃない。戦果はどうだった?」
「ハツネはどこにいたの? やっぱり今回は大漁ネ」
「西壁を中心にね。マルシアは?」
「今回は強力な助っ人がいるから、いろいろ回ったわよ~」
ファミレスに入ってきたのは大地のお母さんだ。そう言えば親戚がこっちにいるって聞いたことがあるな。会ったら、間違いなく僕だという事がばれてしまう。
やばいかな…… って、西壁を中心、って?
ぺこりとお辞儀をするとおぼろ卵に手を伸ばした。
「うっわ~、可愛い娘ねぇ」
「親戚の子なの。貸さないカラね。どのみちヤポネス語は習ってないし」
「あらぁ残念ねぇ。まるでお人形さんみたいに可愛いのに……」
明らかに残念無念という表情を作ったけど、時おり教室で女子がまとっているような色のオーラが出ています。
冗談抜きでマズイ。
「ここいい? 私もおなかがぺっこぺこよぉ」
「夜行で来タの?」
「ううん、旦那と一緒。任務とか言ってたけどね」
ぱんぱんに膨らんだ手さげ袋をずしっと床におろすと(本当にずしっ! って音がしたんだよぅ…)向かい側の席を陣取ると、片手をあげて店員に合図した。
午前中に連れて行かれた公民館でのイベントから、まあ、その……
先生がそういう趣味の持ち主だって事はわかっちゃいましたけど、ね。
まさか大地のお母さんまでそうだったとは……
「あ、特製黒酢の酢豚をお願いAセットつけてね。それからドリンクバイキングも」
「かしこまりましたぁ」
店員が席を離れると、くつろいだ表情で先生に話しかけた。
「そういえば、うちの愚息の事なんだけど、最近なんだか変というか……」
「昨日の補習授業でハ、変わった所はなかったケど? 何かあったの?」
「いえね、ガールフレンドでも出来たのかしら、って思ったから」
「どうしテ思うの?」
「強いて言うなら、母親の感!」
びしっと言い切ちゃったよ。
たしかに大地は女子に人気はあるけど、それだけは無いと思う。
「無理がアルわねぇ」
「どこに?」
「たとエば、登校の時の服装とか」
「学生服に決まってるじゃない。いつも襟のホック止めてるのは私なんだから」
「金曜日はセーラー服着てたケど?」
「なあっ?」
やっぱり、ビックリするでしょ?
でもすごく似合ってたというか、服の着こなしが上手なんだよね。
「堂々と言ってくれれば、着せてあげるのに。ちゃんと用意してあるのに」
やっぱり、そっちでしたか……
ふ、ふふふ腐腐腐……
だっ、大丈夫!
まだ大丈夫です。
……たぶん。