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幕間~執事の見たもの

 石造りの武骨な部屋の真ん中にあるベッドには、ひとりのメイドが無残な姿になって横たわっている。もしも皮膚を突き破って飛び出しているのが、金属的な光沢を放つ人工骨格やマッスルシリンダーではなければ、人間だと思う事でございましょう。

 これはハイウインド家で人間に混ざり、仕事をするメイドロイドA4系列7号機。

 ずいぶん古くから仕えてくれている機体ですな。

 その枕元にいる私は、セバストゥール。当家の執事でございます。


「どう?」


 メイドロイドの身体にシーツをかぶせると、声の主の方へ振り返った。


「どうやらポジトロン脳は無事と見てよろしいかと」

「再起動は出来る? とりあえず、何があったのかが知りたいわ」


 ちらりと検査機器のディスプレイを見ると、相反する命令によってフリーズしただけのようです。コミニュケーション機器に接続すれば会話は可能でしょう。


「たぶん可能でございます」

「どのくらい?」

「1時間ほど頂戴いたしとうございます」

「わかったわ。なるだけ急いでね」


 メイドロイドの身体は、そう簡単に壊れるものでは御座いません。そもそも彼らはドワーフとの肉弾戦を想定して設計されているのですから。

 さすがに単体では無理がありますが、それなりの強度と筋力が与えられております。

 人間と変わらぬ動きと、相応の筋力を兼ね備えたマッスルシリンダーを、中学校に進学したばかりの少年が過負荷に陥らせるとは。

 何があったのか皆目見当もつきません。


 作業を続ける私の後ろでは、主がお客様をと作業を見守っておられます。


「ハイウインド様……」

「秘密通路の入り口を見つけ、鋼鉄製の扉を破壊出来るとは思わなかったわ。最大の誤算はメイドロイドを破壊された事よ」

「私もこの目で見るまでは…… 今でも信じられません」

「あの通路の出口はモズマの村にあるの。すでに封鎖済みだし、装甲騎兵を送り込む手筈も整ってる」


 あとは、あの時に何があったのかを知るだけ。

 そうひとりごちたエスターは、急に話題を変えた。


「そういえばカズマの容体はどう?」

「半月もすれば退院できるそうです」

「それだけでも運が良かったと言うべきね。ゆっくり養生するように伝えてくれる?」

「勿体ないお言葉でございます」


 ハイウインド様の隣におられるご婦人の名は天城 希……あまぎ・のぞみ。

 28歳という若さでドゥーラ王宮主席魔導士を務める瑞希様の御母堂でございます。


 鎮守の森に張られた結界を突破出来たのは、彼女の卓越した能力のおかげと聞き及んでおります。結界魔法のスペシャリストであるあの方が、結界に穴をあけるだけで、まる1日を費やされたとは、そうとうなモノでございますな。


 ちなみに、当家の重層次元バリアに構造通路を作り、それを安定させるのに費やした時間は、半日ほどであったかと記憶しております。

 それが縁となり、王宮にご紹介申し上げたわけでございますが……

 話がそれましたな。

 まずは、A47からの事情聴取が必要…… あの場にいたのは彼女だけで、秘密通路を死守しようとしたのでしょうけれど、詳しい事は分かりません。

 ふと時計を見ると、おお、いけない。もう10時ではありませんか。


「……そろそろお茶のお時間でございます。早摘みの玉露が届きましたので、それをお楽しみいただこうかと……」

「そう。それじゃ、あとはお願いね?」

「かしこまりました」


 私は一礼して主人を見送ると、ベッドに向き直った。

 交換部品のリストアップは済ませてある。


 さあ、A47には蘇ってもらう事に致しましょうか。


メイドさんは、アンドロイドでした。

ちょっとだけ裏話をば。

このメイドさんは、11番目に開発され、改良を4回加えられたタイプの7号機という意味です。

え? 裏話でもなんでもない?

ごもっとも。


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