第25話
爆発は音というよりも、身体を突き抜けるような衝撃だったと思う。
一瞬で耳がキーンってなって、メイドさんたちが、爆風で吹き飛ばされていった。
僕はというと…… 無事だ。
至近距離での爆発って、慣れないなぁ…… って、いつ爆発に巻き込まれた?
まあいいや。とにかく逃げよう!
僕は緑色の波紋を従えながら、廊下へ飛び出すと、一気に走り出した。
――ソコヲ右! ……左ノ壁ヲ押シテ。
頭の中が真っ白になっていた僕は、ただ言われるままに建物の中を走り回った。
屋敷の中の鬼ごっこの結果は、僕に軍配が上がったようだった。
「ここは…… 僕の部屋か」
クローゼットに片手を突っ込み、最初に手に触った服をハンガーごと引っ張り出す。
机の上に置いておいたデリンジャーと予備の魔法カートリッジを服でくるむと、隣にあったペンダントを首にかける。
「御無事でしたか」
「ひっ!?」
振り返ると、部屋の隅の薄暗がりの中に一人のメイドさんがリュックサックを抱えて立っていた。
人の気配には敏感な方なのに、全然わからなかった……
――安心して。これハ味方ダ。
「ここには簡単な医療キットと魔晶石をいくつか入っています」
「う、うん……」
僕が持っていた服をリュックサックに詰めると、背負わせてくれた。
「夜が明けきる前に、このお屋敷から脱出なさいませ」
「え、え?」
「事情は後からご説明致します。今は、瑞希様が無事でいる事が大切なのです」
壁に見せかけた扉や壁の中の通路を通り抜け、やがて裏庭の一角にたどりつくと。
「ここは?」
「非常用の抜け道の一つです」
大きな石灯籠をずらすと、その下にあった鉄板を持ち上げた。
うっわ、手のひらくらいの厚さがあるよ、コレ……
「はやく中へ!」
「君は?」
「残って時間を稼ぎます…… ご無礼を!」
「をわっ!?」
背中を蹴られたんだと気が付いたのは、石灯籠の下にあった穴の壁をゆっくりと眺めている時だった。
ふわふわと、ゆっくりと下に落ちていく。
身体というか、内臓全体が浮くような感覚は10秒も続かなかったと思う。
そして穴の底に身体が着いた時には、何のショックも感じなかった。
「ここからシオカに抜けられます」
「シオカだって?」
クバツからシオカまでは、4レグア半もあるよ?
「通路の奥にガゼルを用意してあります。 ……ご幸運を」
重い音とともに僕の頭上で、鉄板が下された。
――イソイデ。
促されるままに、ところどころに照明の灯された通路を走り始めた。
一体、何があったっていうんだろう?
というか、僕が何をしたっていうんだ!?
怪力メイドさん登場の巻… でした。
次回で、ストーリー的には一区切りです。
というか、区切りのために幕間を入れていたりして。