第23話
時刻は真夜中というか、月が沈もうとしている時間です。
ふと目を覚ました僕はのどが渇いたので、水を貰いに台所へ。決してお菓子のつまみ食いじゃないからね。
ドアを開けるて、廊下に出ようとして目に入ったものは……
「あれっ?」
廊下の奥の方に淡い緑色に光の幕が見える。反対側にもある。
これって結界だよね?
……閉じ込められた?
「まさか… ね」
何の気なしに近づいて、ちょんと指先で触れてみました。
押し返されるような感覚があるはず…… と、思ったら、何の抵抗もなく光の幕を通り抜ける事が出来ました。
「変なの」
これが本当のエスターの結界なら、今ごろ生命はありません。
緑色の結界の前に張られている反撥結界が、行く手を遮るはずです。
それを突破しても、あの結界があるわけです。
もしもこれに触れれば、昼間の触手のように黒焦げになるわけで。そういえば、いつの間にあんな結界を張れるようになったんでしょうね。深緑色というのも変です。
防御魔法で作った結界はオレンジ色だし。
「むーーーーー 眠いけど眠れないというか」
ぼ~っとしながら廊下を通る間に、いくつかの光の幕がありましたけど、難なく通過。
なんか空の色が変だな。紫っぽいぞ……
「なんで僕はこんな所に?」
「あらあら、とんだ寝坊助さんね」
「エスター?」
背後から声がするのと同時に、廊下の照明が点いた。
「単刀直入に聞くわね…… あなた、何者なの?」
エスターの後ろには武装したメイドさんの集団。エスター自身も鎧を着こんでいる。
「エスター?」
「廊下の高エネルギー重層バリアを突破出来ても、屋敷を包む重層次元バリアまでは突破出来ないでしょう?」
狭められる包囲の環に押されるように、僕は後ずさりを始めた。
「高エネルギー重層バリア?」
「あなたが通り抜けた光の幕… よ」
「あの緑色のやつ?」
「そう。この世界では、まだ実現不可能な高エネルギー・バリアよ」
高エネルギー重層バリア…… 半空間フィールドをコアとして展開するため、5次元ベースで発動する空間転移などの魔法は無効化される。
また、バリア自体を崩壊させるには……
あれれ?
エスターの言ってることが理解できる。
はじめて聞く言葉なのに。それが何なのか意味も分かる。
なんでなんで?
ちょっと、えすえふ… してみました。