第19話
というわけで、エスターの屋敷にいます。
継ぎ目のない石造りの建物は屋敷というより、お城と言った方がいいかな。地下にも部屋がたくさんあるし。
全体的なイメージは立体的な迷路という感じ。慣れないと、遭難しかねません。
というか、遭難したことがあります。
まあ、それはおいといて。
彼女の転移魔法は母さんのそれと違って、転移酔いもなし。と、いう事で、エスターから借りた資料でレポートを作っている間に彼女は王宮でのお仕事です。
色々な荷物を馬車に積み込んでいる所を見ると、それなりに大仕事なんでしょう。
つか、ここのメイドさん凄すぎ。
あんな大きな荷物を軽々と持って歩いてる……
というわけで。
無事にレポートも完成して、日も暮れて。
夕食の時間です。
豪華なシャンデリアに照らされた食堂には、細長いテーブル。
ふんだんにレースをあしらった絹のテーブルクロスが敷かれている。
その上に鎮座しているのは、見た目も美しく盛り付けられた豪勢な料理。
それは、見ているだけでも空腹を誘うようだった。
……なんて、そんなモノが普段の生活に登場するはずがありません。
もうとっくに日も暮れたというのに、天井の一部が白い光を放っているせいで、部屋の中は真昼の明るさです。
でも、すごいのはそれまでです。
タタミ・マットが10枚ほど敷かれた部屋に背の低いテーブル。このように、椅子を使わない生活というのは、古代からのジャポネ人のライフスタイルだそうです。
正座って、足がしびれてくるから嫌なんですけどね。
それに食事の時に床の上に直接座るというのは、なんか、こう…… 抵抗があります。
「どう? これは最近の私のお気に入りなんだけど」
「すっごく美味しい」
食べているのは、インディラ亜大陸の家庭料理で、香辛料をたっぷりと使った根菜やイモと鶏肉の煮込み料理です。
とろみのついた煮汁ごとご飯にかけて食べるのがヤポネス風です。
「この漬物と一緒に食べると美味しいわよ~」
「シソの実の塩漬けはパスです。食感が変だし」
「うふふ、相変わらずね…………」
でも、ご飯は美味しかったからいいや。
……で、食後は趣味の天体観測をしています。
「どう? 堪能した?」
「はい、すごく」
「それはよかったわね」
南の空にひときわ輝く4つの星を結ぶと春のダイヤモンドと呼ばれる星座になります。
そこのオレンジ色と青白い色の夫婦星と呼ばれているのだけど、僕の興味は、ダイヤモンドの真ん中あたりにある一点です。
そこにある細長い楕円のような形の、ぼんやりとした雲のような感じの星。真ん中のあたりに黄色い星があって……
どちらかというと暗めな星なので、見落とし気味だけど。
今日に限ってはものすごく気になります。
今でも教育現場で真面目に天動説を論じているとか。
もちろん外国のお話だそうですが……
あああああ。
SFとファンタジーの融合って難しいよぉ(笑)